平沢進INTERACTIVE LIVE SHOW 2022 「ZCON」

もし、「好きなアーティスト一人と会わせてあげます!」と言われたとして、

平沢進を選ぶことはありません。

僕でしたら、たまの知久さん石川さん滝本さんとか、イエモンの吉井さんとか筋少のオーケンとか、会ってみたい話してみたい人はたくさんいますが、まぁ平沢さんとは会いたくないですね。偏屈そうだし。何話していいか分かんないしw

一方で、「今後1つのアーティストのライブしか行くことができない」なんて縛りが発生してしまったとしたら、

悩みどころではありますが、平沢進のライブに行く、と答えることでしょう。


そんな、平沢さんの人となりは敬遠しつつも、ライブ自体は大好きな僕ですw


ところで、今回のインタラの直前に、平沢さんがネットで炎上してるという話を聞きました。


実はこれに関しての詳しいことは、この記事を書いているたった今調べました。

当初僕は、平沢さんがマスクを揶揄して「奴隷タグ」と言ってたことが問題になってたのかと思ってたんですが(これは投稿された時に読みました)、ライブ期間中ファンの友達と話してる中で、彼が暗にウクライナへの募金をネオナチにお金を落としている、と綴ったことが大きな問題になったらしいと聞きました。それに関しては今調べて読みました。

難しいところで、今僕は「平沢らしいし別に俺は気にしない」と思ってます。

ただ、実際にリアルタイムでこの書き込みに遭遇したとしたら、少なからずショックを受けたんじゃないかなぁ、なんて思ったりもします。

僕はサッカーが好きだったり日本のロックバンドが好きだったりしますが、平沢はサッカーのことを…なんだっけ、二項対立玉蹴り?みたく腹の立つ言い方してたし、邦楽に関しては脳死JPOPとか揶揄してましたよね。ムカつきますねw しかしまぁ、そういう人なんだな、と諦めてますし、慣れてもいます。

とは言え、愉快なわけでは当然無いですし、特にサッカーや音楽の趣味を小ばかにされたのと違い、ネオナチ云々の件は人の生死が掛かっている問題であり、一般的に明確に「ロシアが悪」と言う流れの中で、「悪を利する」と捉えかねられない発言でもあると受け取れてしまうのも事実ですよね。

また、僕と同じ、発言に関しては諦めてたり慣れてたりする人でも、「堪忍袋の緒が切れた」「我慢の限界」「愛想が尽きた」となってしまっても何も悪いとは言えません。僕はあくまで、知ってて読んだ、覚悟して読んだからショックが少なかっただけかもしれませんから。


とまぁ詳しいことは今知ったものの、炎上中であると言うことだけはライブ前から知ってて、どうもそれが陰謀論に根差したものらしいという認識は持ってました。


そして、インタラの内容を確認するわけです。


この記事目にしてくれてる人は皆さん分かってるとは思いますが、一応説明しておくと、インタラこと、「INTERACTIVE LIVE」というのは、平沢さんがアルバムの新譜を発売する度に行っているイベントで、観客の反応によってライブの内容が変わっていくというシステムで行われるライブです。

観客の行えるライブへの干渉方法は、幾つかありますが基本は「声を出す」になります。ライブがストーリー仕立てになっていて、話が進むと選択肢が生じ、その選択肢の何を選ぶかを声をあげて決めます。まぁ多数決、みたいなものになりますがw


そう、ストーリーがあるのです。


粗筋は公式サイトから見れますが、ま、何を言っているのか良く分かりません。平沢さんの綴る文章は基本的に言い回しが独特かつ回りくどく抽象的で暗喩に満ちていてそうそう理解できるものではありません。Twitterもそうです。

そんな平沢さんが作る物語は、とにかく良く分からないんです。

ただ、なんというか、「陰謀論にはまってる平沢さんが、それを前面に出した来た物語」に見えなくもないんですね、今回のインタラの粗筋。

上記の通りの理解しづらい、言い方を変えれば「色んな捉え方も出来てしまう」文章であるもんですから、昨今の炎上騒ぎの渦中においては余計、「あ、平沢変にファンを”導こう”としてるんじゃないか??」と身構えてしまいまいました。

ライブは楽しいです。間違いなく。彼の作る音楽は大好きだし、ステージ上のパフォーマンスも他に類を見ないオリジナリティ溢れるもので、カッコいいし面白いし唯一無二のものです。全部のライブを漏らさず見たいと思うくらい。

でも、彼の思想をダイレクトでぶつけられるかもしれないと思うと、とても嫌です。僕の好きなものを彼が嫌っていようと馬鹿にしていようと、僕の正義と思うものを彼が悪だと思っていようと、それは彼の自由で、その発言は見た瞬間に「けっ」と思えばいいし、なるべく見ないようにすればいいし、「平沢のバーカ」とSNSで書いちゃえばいいだけの話なんですが、

楽しみにしてたライブで、その思想のデッドボールを食らうのは正直とても苦痛です。


それが来るんじゃないか、と言う不安が、今回は大きかったんですよね。それは僕だけでなく、と言うか炎上の件を遠巻きに見てた僕がそうなんですから彼の発言に直に接していた人たちは余計そうだったんじゃないでしょうか。

実際SNS上で、不安を吐露する書き込みや、それがきっかけでライブのチケットを手放そうとしている人の呟きなんかを目にすることがありました。


そんな、ある種「不穏」な空気が漂う中、3月25日金曜日に1公演、26日に昼夜2公演、計3公演が行われ、僕はその全てに会場で参加しました。

※会場で、と断ったのは、インタラクティブライブはネットでの参加も可能なライブであるからです。配信映像を見ながら(今回は有料でしたが、過去はほとんど無料で配信してました)、公式が出題する問題をネット上のファンが力を合わせて解き、会場で参加するファンを助けると言う楽しみ方ができます。


会場に向かった僕は、その「不穏」な空気をまざまざと感じる事になります。


ショッピングモール内に平沢さんの新譜がループで流れるの、異質すぎだろwwwww


今回のライブ会場は有明の東京ガーデンシアター。

ショッピングモール有明ガーデンの中に作られた施設なんですが、この有明ガーデン、館内BGMに、その日ガーデンシアターで公演を行うアーティストの曲を流すんです(モール内の各店舗ではそれぞれ独自のBGMを流しているけど、廊下やトイレや喫煙所といった場所では館内共通の音楽が流れる)。

以前B’zがライブをやったそうですが、その時は当然B’zが流れていたそうで、平沢が2Days終えた翌日は、HEY-SMITHという邦ロックバンドがライブをしたんですが、ライブを見た知り合いが言うには勿論1日HEY-SMITHが流れていたそうです。


平沢さんの音楽は「宗教っぽい」なんて言われることがありますが、そのっぽい曲が一日中、楽しい楽しい、子供や親子連れで溢れる、ショッピングモール内で流れるシュールな様ときたら…w

世界一不穏なショッピングモールでしたねww


話が横道にそれました。


軽くストーリーを書いておくと、


だめだ、軽く書けないw

詳しくは平沢進公式サイトを見てください。


俗っぽく要約すると、

「優れた人間」(これを平沢は「アヨカヨ」と呼称)を自称する支配層が作った世界の中、「劣った人間」(「アンバニ」と呼称)として教育され飼いならされた被支配層が搾取し抑圧されと生きていたが、その不自然な世の中は自然な世界の自浄作用によって自称「優れた人間」が滅びる結果になり、残された「劣った人間」として育てられてきた人たちは、押し付けられた負の感情に苦しんでいた。

その負の感情は、「優れた人間」が「劣った人間」を自分たちの下に置くために作ったものだった。

負の感情は、「劣った人間」たちの頭の中に”概念的な石”(ZCONITEと呼称)として存在し、それをする発生させる為の装置として「ZCON」という機械を作ったのだが、「優れた人間」が滅びZCONが停止した後も”概念的な石”は消えなかったため、「劣った人間」たちが混乱し、滅びかねない状態だった。

異なるタイムライン(別の時間軸みたいなものと理解してるけどどうかわからない)からその様子を見ていたnGIAPという男は、ZCONの操作に必要な「天候技師」(ネット上でライブを見てストーリーを動かすオーディエンスたち)と「改定評議会」(ライブ会場でルートを決めるオーディエンスたち)を編成することができ、彼らを使って「劣った人間」たちを助けるために、タイムラインをより正常な世界に繋げようとしていた。


こんなところでしょうか。

短くしようとしても全く短くなりません。


これにさらに、森の中でZCONを見つけた「テンプレ」と呼ばれる姉妹、ルビィとシトリンという登場人物がおり、彼女らが飛行機の墜落や列車の転落、炎上水没などの危機に瀕する度に選択肢が現れ、彼女らを助けるために(その危機も作られたものであって実際は無いもの)「優れた人間」が作った「常識」を書き換えていく、という作業が現れ、会場の客たちはその作業を2択から選んでいきます(設問が3つあります)。

その選択肢も「AかB」レベルモノではなく、現状「ポテトチップスを食べると太る」となっているものを、「ポテトチップスを食べると痩せることはけどまぁ別に太らないこともあったりなかったり」と、「抹茶豆乳ラテを飲むとハッピーだよね」みたいな常識に書き換えます!みたいな「いや、ちょっと何言ってるか分かんないっす」的な選択肢になっていて、てか実際はもっとシリアスで難解でクドクドしてて、後発の選択肢の説明されてる段階で前の選択肢の文章忘れちゃうんだけど、みたいなポッカーンっていうものでして。


そういうライブです。

分かりますか?

分かりませんね。


参加してても分からなかったですw

文章で説明される部分も、登場人物が語る部分も、一事が万事こんな感じであり、日本語だし単語の一つ一つは理解できなわけじゃないのに、なんだか実態が掴みづらく、上記カッコ内の独自の名称珍妙な名称も相まって、兎に角奇妙な世界でした。


ただ、それでいてやりたいことやらせたいことは何となく分かり、脳内の人を負の感情に陥れる「石」を消すための作業に従事する、という我々の役割は明白で、選択肢によって「石」が消えるたびに喜び、「石」が消えなかったらガッカリする、というライブの流れはハッキリしていて結果を見るのはドキドキして楽しかったです。


危惧していた、平沢さんのファンを”導こう”という意図があるかも?という不安に関しては、完全に杞憂でした。


実際作中で、平沢さんは「この世の真実を教える」といった様な意味の事をファンに対して言っていたりはしました。

ただそれは”導く”的なものではなく、「あなたの思考や行動に制限を与える自己犠牲の精神やら勤勉を是とする常識は嘘っぱちなんだよ」「あなたは完全な状態で生まれてきたのだし、特別なものを持っているのだから、何も卑下する必要はなくあなた自身でありなさい」みたいな、どちらかと言えば背中を押す、といった趣な言葉だと受け取りました。僕は。

結果から言えば、物語の語り部として指示を出していたのは平沢さんでしたが、脳内の「石」に囚われ、様々な「与えられた困難」に苦しんでいた登場人物も平沢さんでしたし、少なくともこの物語上は、平沢さんは、「上位の存在」として自分を規定していなかったし、自身の負の感情を消すためにオーディエンスの力を借りていた事になったし、何か押し付けられたこともなく、しかし沢山勇気づけられ、インタラクティブライブは一つのインタラクティブライブとして完結し、我々ファンたちは、初回と2回目の「バッドエンド」時にはガッカリし、ゲームのなぞ解きに頭を悩ませ、その場にいた仲間たちで相談し、SNS上で情報交換しつつ、3回目の最終公演で無事GOODエンドに到達し、皆で歓喜の拍手をして、終演後はみんな満足そうな足取りで会場を後にすることが出来ました。


平沢さんは、陰謀論者です。

怪しげな商品を買って愛用してたり、変な薬品に傾倒して喜んでいたり、好きなものに偏執的な愛情を注ぐ一方で自分の気に入らないものは悪しざまに罵倒して、逆張りの主張を繰り返し、多数派の人間を愚かなものと馬鹿にしたりします。

でもそれは平沢さんの善良性を否定するものでは全くありません。

彼は非常にやさしい人で、ファン想いで、サービス精神旺盛です。

ちょっとめんどくさいだけですw

我々と同じ思考回路で同じ感性の人が、あの、彼以外誰も創造しえない孤高の音楽を作り出すことは出来ないし、先日の東京ガーデンシアターの中に存在した2つとない物語を綴ることは不可能でありましょう。

僕らはそれらを存分に堪能しているのですから、多少のめんどくささは受け入れるべきだと、僕個人は考えてます。受け入れなくてもいいですね、受け流すべきかとw


おそらく、平沢さんからみて我々ファンは、大衆に流され、盲目的に右へ倣えの日々を送り、奴隷のように過ごして時間を浪費しているように見えて、とても苛々しているのでしょう。

しかしそれでも、彼は我々に怒りをもって「言葉を下す」事はなく、信じて「背中を押して」くれているのだと思います。今回のライブにメッセージ性があったとすれば、その一点でしょう。


ひょっとして、平沢さんは、言葉の強さや毒性はともかくとしても、この世でも稀にみる、「ファンに寄り添って言葉を発する」機会の多いアーティストの一人なのかもしれませんねw


そんな、会いたくはなくてもライブには行きたい大好きなアーティスト、平沢進、その最新ライブ『INTERACTIVE LIVE SHOW 2022 「ZCON」』。

とても楽しかったです。

ライブなのに、ただ音楽を楽しむだけでなく、その内容の成否に緊張し、不正解に無念と頭を抱え、クタクタになり、最終公演の結果に安堵し、喜び、感情を揺り動かされる、素晴らしいイベントでした。


ただ、

点呼する惑星のほうが面白かったし、ノモノスとイミュームの方が笑えたし、ワールドセル2015の方が好きだったかなw

あと、

アンコールやれや!!!!!!!ww

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