ヤクザと僕

工事現場で働いてると、そりゃあガラの悪い人と絡むことが多いです。

日常生活の中で普通にすれ違ったら絶対に目を合わせないし何だったら道を譲るくらいの怖い人たち相手に、仕事中は文句を言うこともあるし何だったら喧嘩腰で相対する事もありますね。
と言うのも、それこそ日常生活では胸倉掴んで脅してくるような人たちも、工事現場でやりとりする時は意外にこっちの話を聞いてくれるし、なんだったら腰低めで僕に接してくれたりするからですね。僕みたいなヒョロガリ眼鏡…嘘つきました、デブのオタクですけどw、そういう人間が相手だって別に差別も区別もせず、共に仕事を回す現場作業員として認識してくれております。

で、そういう人は他所の会社にばかり居るわけでは無く、自分のところにも居たりします。

僕がやっている会社の下請けさんのところに、YさんとHさんっておじさんがいます。
Yさんは昔ウチに居た職人さんですが、ウチの元社長、親父と揉めまして、クビにしました。
Hさんはずっと仕事に来てくれていたんですが、ある日突然現場に来なくなったと思ったら、飲み屋で暴れた上に飲酒運転…どころか無免許運転だったようで、そのまま捕まりました。

・・・なんですが、Yさんは僕が良く応援を頼む下請けさんのところに再就職し、Hさんはほとぼりが冷めてから僕がお金を貸して免許を取得し、再びウチに出入りするようになりました。

Yさんは財布の中に「○○会系 ○○組」と書かれた名刺を持ってる元ヤクザ。
Hさんは、乗ってる車に明らかな「代紋」のシールを張っている、現ヤクザ。

そんな人たちと、おっかなびっくり付き合ってるかと言えば、最初に書いた通り別に普通に接してもらってます。Yさんは当たりは強いんですが面倒見が良く、くだらない日常会話も割とできるし、そもそも僕に仕事のいろはを叩きこんでくれた師匠のような人だったりします。

Hさんは面白い人で、いつもニコニコ、僕がちょっと軽口叩いても怒ったりすることなど絶対になく、ノッてくれて凄く楽しくお話が出来る人です。


それでも話の端々で、Yさんは高級車を盗んでは売りさばいてたり、喧嘩に明け暮れて人を半殺しにした事もあるなんて話をしますし、Hさんは知人が飲み屋で本職のヤクザに絡んでしまって組まで連行されてしまった時に、身一つで乗り込んで話をつけて解放してもらった、なんて武勇伝を持つ、それこそ肩書だけではない本物のヤクザだったりするんですね。


今の仕事が忙しく、下請けさんに協力を依頼したところ、YさんとHさんを派遣してくれました。

僕にしてみればクビにしたYさんと久しぶりにガッツリ仕事を一緒にすることになるわけで、大丈夫かいな、と思ってましたが、今のところ真面目に、細やかに仕事をしてくれていて助かってます。
Hさんはどうやらまた暴れて、折角僕が金を貸したうえで取った免許がまた停止になってるらしく、色々面倒くさくは有るんですが仕事には来てくれて、現場を明るく賑やかにしてくれた上で一切手を抜く事無くちゃんと仕事をしてくれています。


と言うか。


僕は、いい加減な人間で、結構仕事で手を抜きがちです。
勿論作業の完遂に向けて全力で仕事をしてるつもりなんですが、元々手先も不器用で要領も悪く、なかなか仕事が上手く進められない中、夢中で仕事をしているとつい出したゴミを綺麗に片づけないまま他の事を始めてしまったり、整理整頓がちゃんとできないまま使った材料とかをごちゃっと方々に置いてきてしまったりして、まぁみっともない事甚だしいんですが。

YさんやHさんは、これがまた綺麗にゴミを拾うし、掃除も完璧、「片付けまで仕事の一環」と言うのを実にしっかり守って、仕事をちゃんとしてくれるんですよね。僕が手ぶらで帰ろうとするところ、二人はちゃんとゴミ袋に出したゴミをパンパンに詰めて、キチンとゴミの分別をして捨ててから帰途に就きます。

つまり、「ヤクザだ!」と思ってる相手の方が、ずっとずっと良い仕事をしますし綺麗に作業をするんですよねぇ。

僕は昔から「優等生」的な人生を送って来てて、悪い事なんかしないし酒もタバコもやらず、反社の連中なんてクズ!と思って生きてきましたけど。

仕事をしてると、僕みたいな「元優等生」的な人間ほど、融通も聞かず余裕なくイライラを周りに発散しながら威張り散らしてたりしますかね。
一方で、YさんやHさんのような「反社あがり」の人ほど、仕事の上でちゃんとやってたりするし、他の職種の人に対して敬意を持って接してくれたり、「現場を円滑に進めるために」我を消して気を配ってくれたりするのも目立つかもしれません。


昨日だったかな、久しぶりにYさんと揉めて脅しつけられて流石にビビりましたがw、それでもその後は普通にバカ話しながら仲良く帰宅しましたし、仕事もサポートしてもらいました。
日常生活においてはやっぱりヤクザとは一切絡みたくありませんが、仕事をする上では、そういう人の方が一緒にやっていくには有難い存在かもしれません。

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