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リハ専門職の直接的介入は、間接的介入に置き換えられるのか?

私たち、全国病院経営管理学会リハ専門委員会では、「リハ専門職の包括化を見据えた効果的・効率的な介入のあり方を創造し具現化する」ことをビジョンとして活動してきました。
 本noteでは、2024年10月4日に開催した「全国病院経営管理学会リハ専門委員会報告会」における小生の講演「直接的介入は間接的介入に置き換えられるのか-リハ専門職が介入すべき直接的介入を明確化する-」の要旨を記します。

まず、私たちが間接的介入を考えるに至った要因を説明します。下の図は、2023年度の報告会で用いた資料をSWOT分析のフレームに集約したものです。

全国病院経営管理学会リハ専門委員会報告会(2024.10.4)

内部環境におけるプラス要因は、活動と参加への需要と、リハ専門職の職域の拡大です。一方、内部環境におけるマイナス要因は、新卒レベルの低下への危惧と、リハ専門職の間接的介入の経験不足があります。
 他方、外部環境におけるプラス要因は、介護領域と福祉領域に従事するリハ専門職が少ない点です。一方、外部環境におけるマイナス要因は、リハにおける診療報酬に包括化の兆しがあることと、リハ専門職のなり手が不足していることです。

これをクロスSWOT分析のフレームに当てはめると、『低頻度・短時間の介入でも成果が得られる「間接的介入」が可能なリハ専門職の育成と、それによる経済的効果の検証』が必要と考えることができます。

全国病院経営管理学会リハ専門委員会報告会(2024.10.4)

私たちの過去の調査から、間接的介入の実施割合は病期の後半に多いことが分かりました。しかし、医療療養病棟では、間接的介入が行われている割合は最も低い結果でした。これは、間接的介入が困難な介護度の高い対象者の割合が多いためと考えることができます。
 また、間接的介入にはマネジメント能力が必要となることも明らかとなりました。たとえば、習慣的な離床の支援や体位変換、自主練習のモニタリングには、マネジメント能力が必要になるためです。一方、間接的介入は、チーム医療の隙間を埋める可能性がある一方、経営的視点には一得一失と考えられていることも分かりました。これは、間接的介入に診療報酬が認められていないためと考えることができます。

全国病院経営管理学会リハ専門委員会報告会(2024.10.4)

間接的介入の実施には、スタッフの対応力と他職種の協力が必要であり、リハ専門職の熟達度も高水準である必要性が示唆されました。間接的介入のスキルを高めるための具体的な教育プログラムの検討も、各施設で求められるのではないかと考えます。

全国病院経営管理学会リハ専門委員会報告会(2024.10.4)

ところで、間接的介入を実現するには、現在のハンズオンの内容を可視化し、何をいつから、どのようにハンズオフしていくかをデザインする必要があると考えます。
 ハンズオンの内容を可視化する手段としては、藤田医科大学のリハビリテーション部門で活用されているELFが参考になります。これは、5分おきの訓練内容をlogとして残すシステムで、訓練内容の経時的変化を可視化することができます。
 また、間接的介入の有効性を計るための評価指標や、その有効性の検証も必要になると考えます。当委員会による2024年度の調査では、間接的介入として実施している施設が多いにもかかわらず、その有効性を感じていないという介入も散見されました。

全国病院経営管理学会リハ専門委員会報告会(2024.10.4)

一方、間接的介入を行わない理由としては、収益が得られないことや、間接的介入を行うための人員や時間の不足が挙げられました。
 時間を捻出するにはDXや運用の工夫が有効と考えられますが、そのターゲットは「診療録の記録や情報収集」ではないかと考えます。筆者がタイムスタディの結果を基にデザインした業務割合をみると、インパクトが大きい短縮可能な業務は診療録の記録と情報収集のみであったためです。

全国病院経営管理学会リハ専門委員会報告会(2024.10.4)

複雑化した医療現場の運営には、前述のようにDXや運用の改革が必要です。
 しかし、ダクラス・アダムスの経験則によると、35歳以降に出てきたような新しいものに対しては、人は違和感や嫌悪感を自覚する可能性があるといいます。つまり、中年以降の管理監督者が新しい技術や運用を取り入れるのは、それなりの覚悟が必要になるのです。

全国病院経営管理学会リハ専門委員会報告会(2024.10.4)

以上より、間接的介入を実現するには、3つの壁を越える必要があると考えます。
 つまり、「リハ専門職の価値観の壁」、「経営層の理解の壁」、「他職種の協力の壁」です。今回の報告会では、これらの壁を越えるヒントとなる実践を報告いただきました。

全国病院経営管理学会リハ専門委員会報告会(2024.10.4)

全国病院経営管理学会リハ専門委員会は、リハ専門職という限られた資源の最大化や現場の課題解決に対して今後も向き合ってまいります。
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