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アレルギー性鼻炎の子どもをもつ親たちへ

スギ・ヒノキ科花粉症(以下、花粉症)シーズンも終わり、この記事を書き始めたころに梅雨入りしました。これから耳鼻咽喉科医院は閑散期かんさんきに入ります。(暇なはずです。)

今年2023年のスギ・ヒノキ科花粉の飛散数ひさんすうは、例年の1.5倍となり、私が当院を継承けいしょうしてから最も忙しい花粉症シーズンとなりました。

さて、忙しさも一段落いちだんらくしたところ(暇なはず)で、アレルギー性鼻炎の子どもをもつ親御さんたちへのメッセージとして一読いただければと思います。

尚、この記事を書き終える頃に梅雨明けしました。


私の経歴(興味ない方スキップ)

数多あまたある耳鼻咽喉科の専門領域のうち、私の専門の1つはアレルギーです。

前職ではアレルギー外来の担当を不本意ふほんいながら10年近く務め、主にアレルゲン免疫療法の管理と気管支喘息きかんしぜんそくなどを合併するような重症なアレルギー性鼻炎の治療に携わってきました。

決して大きな声では言いませんが、東海地区のTVに4回出演しています。(((超小声)))

その経験をどう地域診療に還元かんげんするか、模索しながらこの4年間を過ごしてきました。

NHK東海さらさらサラダにて。当時30歳。

アレルギー性鼻炎は治る?

残念ながら治りません。

ほとんどの治療がアレルギー反応を抑えることで症状を和らげることを目的としています。アレルギー性鼻炎の治療はクスリが主体となりますが、重症度じゅうしょうどやクスリへの反応も人それぞれです。

1つのクスリで落ち着く方もいれば、クスリを限界まで使っても症状が変わらない方もいます。はっきり言って不公平ですが、それが現実です。

アレルギー性鼻炎の診療しんりょうの流れ

まずは正しい診断と重症度じゅうしょうどを知りましょう。

1)診断を受けましょう。

どんな病気もそうですが、まずは正しい診断を受けるところがスタートです。採血検査で「何に対するアレルギーか」まで調べることが理想ですが、必須ひっすではありません。

採血では「何に対するアレルギーか」を調べます。結果次第では、鼻の状態が悪くなる時期の目安がわかりますので、必要以上にクスリを使うことがなくなります。但し、採血で反応があっても症状があるかどうかは別の話ですし、また逆に反応がなくてもアレルギーの存在を完全に否定することはできません

2)重症度じゅうしょうどを知りましょう。

お子さんのアレルギー性鼻炎が軽いのか、ひどいのか、どの程度なのか知っておきましょう。重症度じゅうしょうどは主に本人の症状と、医師が診た鼻の中の状況で判断されます。

医師の視線。右の方は"最重症"です。

いよいよ治療が始まります。

1)薬による治療がスタンダードです。

医師は主に重症度に基づいて使うクスリを選びます。1つなのか、複数なのか、飲み薬なのか、スプレーなのか・・・。

まずはクスリをしっかり使いましょう!

次回の診察で、果たしてクスリがどれくらい効くのかを確認します。不十分であればクスリを追加し、十分であればクスリを続けます。クスリへの反応を確かめながら薬を組み合わせて最適な治療法を探るのです。

しかし、以下のような落とし穴があるので注意が必要です。

2)落とし穴

①クスリを子ども任せにしていませんか?

決して子ども任せにしてはいけません。

子どもは、クスリを、飲みません。

クスリは親が管理
して、目の前で使用するようにしましょう。クスリを飲むことを習慣づけることはアレルギー性鼻炎の治療において最も重要です。子どもの成熟度は個人差が大きいですが、少なくとも中学校を卒業するまでは親が管理することが理想でしょう。

「気が付いたらクスリが減っていない!」=「実は内服をできていない」ということです。病院ではクスリの効果を診ることがメインとなります。特に、クスリの種類によっては内服を続けることで効果を発揮できるものもあります。こういうことを防ぐためにも、クスリはお母さん&お父さんが管理しましょう!

語り継がれる名シーン

②治ったかな、と思いました?

症状が落ち着いていると「治った」と勘違いしてしまう親御さんが多いです。しかし、多くの場合でクスリを止めると症状はまた悪くなってしまいます。クスリを続けて良い状態を維持することが最も大事で、また大変です。

おそらく多くの親御さんが「???いつまで続けるの???」と思っていることでしょう。その思念、私にも伝わっています。

先述した通りアレルギー性鼻炎は治りません。アレルギー性鼻炎との戦いは続くのです・・・

「症状ないのにいつまで薬を続けるんですか?」そういうプレッシャーを感じることがよくあります。また薬を続けることに不安を感じる親御さんも多いでしょう。このあたりの考え方に温度差が生まれるのは仕方ありません。最終的にどうするかは患者側に決定権があると考えていますし、私としてもご家族の考えはは尊重します。

3)クスリで抑えられなかった場合の選択肢は?

さて、クスリをしっかり飲みましたか?それでも状態が変わらない、良くなってはいるけど十分ではない・・・そういうことは少なくありません。

せっかく通院しているのに、効果が得られないと当院の悪い口コミが記載されそうですね。。

実際には、ここが1つの分岐点ぶんきてんになり、以下のような選択肢があります。

①現状のまま、耐える。

クスリを続けたまま、様子をみます。しかし、多くの場合でこれ以上良くなることはありません。

②治療を止める。

変わらないなら、治療そのものを止めてしまう。それも選択肢の1つです。力になれず申し訳ないと思う反面、潔い判断だとも思います。

③舌下免疫アレルゲン療法(おすすめ)

スギ、またはダニアレルギーを対象にアレルギーの根治を目指す治療です。但し、即効性はなく時間を要します。
https://note.com/muracent/n/nc0ed28c16d2c

④最終兵器ゾレア(当院採用なし)

重症の花粉症患者を対象にした特殊な治療です。適応には条件があります。以下のサイトをご確認ください。
https://www.okusuri.novartis.co.jp/xolair/pollinosis

「ゴールはどこなのか?」

先日、保護者からこう聞かれました。はっきり言って難しい質問です。

もちろん、「症状がないこと」が1つのゴールではあるのですが、今度はその状態を維持いじする必要があります。この維持が最も大変で、親御さんが通院に疑問を感じるのも無理ないと思います。

ただ、私は個人的に、小さいころからクスリをしっかり内服するように教育することが大事だと考えています。しっかり内服し、アレルギー性鼻炎と向き合うことが、なにか他の重大な病気になった時の姿勢形成に役立つのではないか。大げさかもしれませんが、私はこのように考えられずにはいられません。

ご存知ですか、ポガチャル選手

治療をやめることも選択肢の1つです。

ことアレルギーの診療にかかわる者が言うべきことではないとは重々承知していますが、治療をやめることも選択肢の1つです。

長期間の通院も決して楽ではないでしょうし、そもそも病院なんて好きで来る人なんていませんよね。

これをずっと続けるの…?

私が患者の立場なら同じように疑問に感じることでしょう。そんなときは勇気をふりしぼって申し出ましょう。

アレルギー性鼻炎で命にかかわることは極めて稀なので、お互い肩の力を抜けると良いですね。

こちらから診療終了を告げることもあります。

病院に通院する意義を考えましょう。処方した薬を使用しないのに通院を続ける意味はあるでしょうか。通院を続ければよくなるわけではありません。お互い時間の浪費になるのは避けましょう。一方的に治療を押し付けても仕方ないので、その時点で診療を終了させていただきます。


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