ほんとうは怖い耳鼻咽喉科の病気ーノド編ー
冗談抜きで、今は「かぜかな?」と思ったら「コロナ!」の状態です。
(当院では、様々な事情を考慮してコロナの対応は行っていないため、ご迷惑をおかけします。)
さて、最近のコロナは「発熱+ノドの痛み」がトレンドになっているようです。
コロナかどうかはさておき、「ノドの痛み」は注意が必要で、時には命にかかわる重大な病気が隠れていることが少なくありません。
「ノドの痛み」で耳鼻科を受診すべき理由の全てをここに置いてきました。
「ノドの痛み」で耳鼻咽喉科を受診すべき理由
「ノド」は「咽頭」と「喉頭」に分かれており、ノドの痛みで受診したときに「喉頭」を診ることができるのは耳鼻咽喉科だけです。喉頭は気道=空気の通り道であり、ここに強い炎症が起こった時には窒息してしまう危険性があります。
特に耳鼻咽喉科を受診すべきキーワード
ノドの痛みに加え、以下の症状があるときは強い炎症がある可能性があり、要注意です。是非、迷わず耳鼻咽喉科を受診すべきです。
1)ごはんが食べられない。
2)声が出ない、枯れる。
3)息苦しい。
ほんとうは怖いノドの病気
1)扁桃周囲膿瘍
扁桃周囲膿瘍は扁桃炎の悪い方向への進化型です。症状として、ご飯が食べられないほどの強い痛みや、口が開けられない、などが挙げられます。
扁桃周囲膿瘍は扁桃のそばに「膿瘍」という、細菌の巣を作ってしまいます。膿瘍は抗菌薬が効きづらく、メスによる切開排膿術が必要になります。
また、膿瘍の位置によっては入院が必要になることも少なくありません。更に、進行してしまうと頸部膿瘍→縦隔膿瘍と悪化し、致死率が50%を超えてしまいます。
扁桃炎を繰り返している方に起こりやすく、扁桃周囲膿瘍を一度でも発症した際には炎症が落ち着いた段階で扁桃を取り除く手術を受けることをお勧めします。
2)咽後膿瘍
咽後膿瘍も膿瘍を作る病気です。その場所は「咽頭の後ろ側=咽後」になります。
症状としてはノドの強い痛みが挙げられます。
こちらの治療も切開排膿を必要とし、入院することが多い病気です。
3)急性喉頭蓋炎
急性喉頭蓋炎は喉頭蓋と呼ばれる箇所に急激で強い炎症が起こり、短時間で窒息してしまう危険性のあるとても恐ろしい病気です。
状況によっては気管切開をして、緊急的に気道を確保する必要が出ることが少なくありません。酸素が足りずみるみる青くなっていく患者を目の前にして、一分一秒を争う迅速な手術(気管切開術)が求められるため、全集中で手術に臨みます。(もう経験したくねぇ…)
かのアメリカ合衆国初代大統領ワシントンは急性喉頭蓋炎を発症し、24時間足らずで亡くなったと記録されています。残念ながら現代においても窒息死する例はあるのが実情です。
あなたのカゼはどこから?ノド?ねぇノドなの??
いかがでしたでしょうか。あんまり大きな声では言えませんが、端的に。
「ノド症状で耳鼻咽喉科以外受診するのは悪手です。」
診療中に患者から「かぜですか?」と尋ねられることがあります。これって実は耳鼻咽喉科医泣かせなのです。なぜなら、「かぜ」は上気道炎=気道のうち鼻~ノドまでの炎症のをざっくり表現したものであって、「上気道のうち、どこに炎症が起こっているか」を診る耳鼻咽喉科医にとっては”Yes or No”で答えられるものではないからです。
ではでは。
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