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自分よりも親切なナイスガイ!「もうひとりの自分」と鉢合わせした日/石原まこちんの怪奇体験

世間的には『THE 3名様』シリーズの作者として、「ムー」では4コマ漫画「オカルとおさん」を連載する都市伝説ウォッチャーとして知られる漫画家・石原まこちんさん。
ウェブマガジン「ムーCLUB」での「ムー散歩」連載開始を記念して、少年時代から続く不思議な体験を振り返る。
(ムー2013年10月号に掲載した記事です)

文=いわたみどり

もうひとりの自分がいた!

 ”あいつ”が初めて現れたのは、小学校の2年生くらいのときです。友だちの住んでいるマンションで鬼ごっこをして遊んでいたときに突如出現しました。
 そこは「ロ」の字形をしていて、建物の周囲をぐるりと廊下が囲んでいるという、少し変わったマンションでした。この廊下をグルグル回りながら階段を使って上や下へと逃げるという遊びをしていたんです。
 グルグルまわっているだけなので、鬼とバッタリ出くわしてしまうことも。そこで僕は反対に、鬼の背中をコッソリついていけば捕まらない、という作戦でいくことにしました。
 鬼役の友だちが走っていく後ろを追いかける。ただ、角に来たときは勢いで曲がらずに一応立ち止まって、鬼が振り返っても対処できるように、そっと柱越しに様子を伺うようにはしていました。

 息を凝らして両手を壁につき、慎重に、そーっと角から顔だけを出して覗いてみたら……なんと目の前に”もうひとりの僕”がいて、こちらを覗いていたんです!! まるで眼前に鏡があって、それに向かって顔を出してしまったかのように!

 そいつは間違いなく自分です。ただ、その顔は異様なくらい無表情でした。

 背中に冷たいものが走りました。あまりのことにどうしていいかわかりません。というか、そこからの記憶がありません。次に気がついたときには、そのマンションの友だちの部屋にいたので、多分、無意識のうちに逃げ込んでいたんでしょうね……。
 その家にはおばあさんがいて、僕が興奮気味に今見たことを話すと「それは、いかん……まずい……」と呟いて、僕を仏壇の前に連れていき、お念仏を唱えてくれました。
 当時の僕にはドッペルゲンガーの知識はありませんでしたが、「もうひとりの自分を目撃すると死ぬ」という噂は聞いていたので、とにかく恐ろしくて必死になって手を合わせましたね。

こっそり善行を積む”あいつ”

 そんな出来事も忘れかけていた15歳の夏です。
 今度は”あいつ”が、僕自身のところではなく、親戚の叔母さんのところに現れたんです。

 ある日、叔母から電話がかかってきて、こういわれました。
「昨日は本当にありがとうね」
 なんでも、昨日、近所でやっていたお祭りで僕とバッタリ会ったそうなんです。そのときに僕がカルメ焼きを袋で買って叔母に手渡したとか……。

 意味がわかりません。叔母さんには会っていないし、カルメ焼きも買ってないし、そもそも昨日、お祭りに行ってないし!
 叔母さんがボケてしまったんじゃないかと訝ったほど、僕には見当もつきませんでした。

 ただ、また”あいつ”が出てきたのかと漠然と思いました。

 そして3度目は、4年ほど前のことです。家で仕事をしていると、買い物から帰ってきた妻がいうんです。
「さっき、カードを届けてくれてありがとう」
 聞けば、ポイントカードを忘れていったよと、買い物中の妻に届けにいったらしいんですよ。僕が。
 でも、そんなはずはないんです!
 その時間、僕はまったく家から出ていなかったのですから。
 でもポイントカードはちゃんと「石原」と名前の入った本物で、実際に家に置いてあったものを、だれかが届けているわけです。しかも、僕が当時いつも使っていた黄色い帽子をかぶっていたというんですね。でも、何度も言いますが、本当に僕自身はそんなことをしていないんですよ。

 単に、僕を目撃したというだけなら、他人の空似の勘違いですみますが、カルメ焼きやポイントカードという、間に物が介在しているのって、どういうことなんでしょうか。物を介在させてるってことは、幽体でなく実体があるってことですよね。

 この話をすると、それはドッペルゲンガーじゃなくて、実体化できる幽体離脱だとか、異星人に誘拐されてクローンを作られたんだとか、ほんとは双子だとか、いろんな説が出てくるんですが……僕としては、もうひとりの自分が同じように育って、近場に存在していると思いたいですね。
 なにしろ、もうひとりの僕はプレゼントをしたり忘れものを届けたりと、なかなか気の利いたヤツみたいなんで(笑)。

石原まこちん

石原まこちん 1976年生まれ。東京都出身。代表作に『THE 3名様』、『THE 超人様』、『THE 銀鉄様』など。「ムー」にて4コマ漫画「オカルとおさん」連載中。



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