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人生に遭難したとき役に立つ経営理論

【本記事はPodcastで配信した音声の原稿です】

こんにちは、むねおです。この番組ハンドプレスFMは、私むねおが生活や本から学んだことを、7分くらいに圧縮して 話す番組です。

これを聴いてくださっている方の中で、最近人生に迷っているよーっていう方は、いますか?あー、けっこうおられるみたいですね。でもね、安心してください。僕も迷っています。

今日はですね、人生迷っている方にとっておきの耳寄り情報があるんですよ。この情報さえあれば、迷いの中でも人生を切り開いていけるっていう、究極の理論がありまして・・・。いや、わかりますよ。すごくうさんくさいなと思ったでしょう。たしかに僕もうさんくさいと思われるだろうなと思って喋ってますよ。

しかしですね、今回話す内容は、きちんとした学術機関で研究されてきた、確かで、科学的な理論ですのでご安心ください。

もしかすると聞いたことがある人も多いかもしれませんが、その理論は、経営学という学問領域ではこう呼ばれています。「センスメイキング理論」と。

センスメイキング理論はカール・ワイクという世界的な組織心理学者が提唱した理論です。ざっくりどんな内容か説明すると、「人間は心の底から腹落ちしてると、未来を切り開ける」ということを言っている理論なんです。「ん?つまりはどういうことなの?」という話をここから順を追って説明しますね。

まず、僕がこれを知ったのは、「世界標準の経営理論」っていうベストセラー本を読んで知りました。これはめちゃくちゃおもしろい本なのでおすすめです。

この本は、経営学、そして経済学、心理学、社会学の領域で、「これは間違いないぞ」というマジで間違いない経営理論だけを32個に選びぬき、すごくわかりやすく説明した本です。

経営って言うと、自分はあまり関係ないと思う方もおられると思うのですが、意外とそうでもないんです。皆さんも仕事とか趣味とかで、何人かのチームで行動したり、何かのコミュニティの運営に関わったりすることがあると思いますが、そういう状況、つまり組織で動くということに少しでも関わる状況では、経営理論の知識はわりと活用できます。

そして、この本に書かれている32個の厳選された経営理論の中でも、僕的に特に面白かったのが、センスメイキング理論です。つまり、皆さんは、数百、数千ある経営理論を32個に圧縮した本を、さらに1個に圧縮したPodcastを聞いているというわけです。

さて、センスメイキング理論の説明にもどるんですが、この本に紹介されている実際にあった事例を使うとわかりやすいので、まずはこれをかいつまんで説明させてください。

ある時、ハンガリー軍の偵察部隊がアルプス山脈の雪山で吹雪にあって遭難しました。彼らはテントの中で「まじやべえ、どうしよう」と死を覚悟していました。

そのとき、偶然隊員の一人が、ポケットの中から山の地図を見つけるんです。そしてみんな「よっしゃ、この地図通りに下山すれば帰れるぞ!!」という感じで、テントを出て下山することを決断するんですね。

そして、猛吹雪で死にそうになりながら、地図を頼りに進んで、なんとか下山できたんです。そして、上官に「地図があったんで、助かりましたわ・・・」と報告したら、上官がその地図を見てこう言ったんです。「これ、アルプス山脈じゃなくて、ピレネー山脈の地図やで・・・」と。

これがセンスメイキング理論の内容を象徴する事例なんです。重要なことは、2つあります。隊員たちが、この地図を使って下山すれば助かると心から信じたこと。そして、地図が間違っていたことです。

つまりどういうことかというと、隊員たちは地図を見つけた時点で、「この地図を使えば帰れるぞ」と全員が下山することに心から腹落ちしたんですね。それにより、全員が力を合わせて、ものすごい力を発揮して、目的を達成することができました。

そして、ここで重要なのは、腹落ちした内容とか前提条件が間違っていても、めちゃくちゃ腹落ちしてると、なんとかなるっていうことなんです。

もし、地図がないまま下山することにした場合を考えてみましょう。下っている途中、すごくつらい状況になったとき、誰かが絶対に「あれ、テントで救助を待ってたほうがよかったんじゃね?」と言うでしょう。「だから俺は吹雪がおさまるまでテントにいようって言ったんだよ!」みたいなことを言うやつがいるはずです。

自分たちが歩いている道が正しくないかもしれない、という不安があるから、皆の心に迷いが生じるわけですね。こうなると、厳しい局面を乗り切れません。

地図が間違っていたのに、なぜ降りれたかと言うと、状況に応じてみんなが心を一つにして、危機的な状況を乗り越えようと足並みを揃えて、必死で行動したからなんです。ここを乗り切れば絶対下山できると、全員が完全に信じていたからなんですね。

そもそも状況っていうのはどんどん変化してしまいますよね。プロジェクトとかで最初に立てた計画とか、最後の方には原型をとどめていないのはあるあるだと思います。

最初に立てた計画が間違っているとか、前提条件が違うとか、そんなに重要じゃなくて、全員がある一つの目的に、完全に足並み揃えて真剣に考え、行動しているほうが重要だっていうことなんです。

そういう統一感のある感じになっていたら、何か変なことになってるなと気づいた瞬間に、全員で素早く軌道修正できるんです。いわばたくさんの魚が集まって大きい魚のように見せることで助かった、スイミーみたいな感じです。

全員が目的と手段を腹落ちして、自分たちの方向性が正しいと信じることで、客観的にはありえないようなことを起こせる、そんな「未来を切り開ける力」が、人間や組織には備わっているんだと、これがセンスメイキング理論のざっくりとした説明になります。

じゃあ、ですよ。じゃあ、どうすれば心の迷いを打ち払って、センスメイキングできるのか、ということなんですが、この本に書かれているのはストーリテリングが大事だということなんです。

さっき話した事例でいうと、誰かが「この地図を使って下山すれば助かる」というストーリーを、全員に信じ込ませたから降りれたということでした。この信じ込ませる能力、皆が納得できるよう、説明できる能力が、「ストーリーテリング」と呼ばれる能力です。組織を束ねるリーダーには、これが求められるということなんですね。

しかもこれが面白いのは、さっき言ったようにストーリーが最悪間違ってても、ぜんぜんいいっていうことなんです。大事なのは自分や皆が足並み揃えて、腹落ちして進むことなので、ストーリーが仮に間違ってても、説得力さえあれば価値があるんです。

例えばYoutube。色んな解説動画がありますよね。「この家電が一番いい」とか、「こういう投資方法がいい」、みたいなやつです。でも、それをもしめちゃくちゃプロが見たら「ぜんぜんちげーよ」みたいになる動画もいっぱいあると思うんです。

オリラジあっちゃんとか、ひろゆきとか、メンタリストダイゴとか、すごく説明がうまくて説得力があるけど、その分野のプロってわけじゃないので、コメントとかで詳しい人が指摘とかして炎上しているのをたまに見かけますよね。

でもセンスメイキング理論によれば、内容がもし間違ってても、すごい説得力があれば価値があるはずなんですよ。動画の言うとおりにして失敗しても、最初の一歩を踏み出させたなら、そのあと色々頑張って成功するかもしれませんから。最初の一歩を踏み出さなかったら、失敗することも成功することもできません。

しかも、この情報過多の時代、何を信じたらいいか皆が迷う時代では、センスメイキングの重要性はもっと上がるはずです。

昔は情報が少なくて、「テレビで誰々が言ってた」とか「偉い人の本に書いてあった」とか、すぐ何かを信じられました。でも、今はステルスマーケティングとか広告とかプロモーションとかもたくさんあって、何を信じたらいいかわかりにくい時代になっています。だから多くの人が、誰か信用できる人に導いてほしいと思っています。

そして、そういうニーズに答えているのはその道に詳しい専門家よりも、ストーリーテリング力の高いインフルエンサーみたいな人たちなんですね。なんせストーリテリング力が高くないと、誰も見てくれない、誰も聞いてくれないわけです。

じゃあ、どうしたら、ストーリーテリング力を高めて、組織をまとめたり、沢山の人にはじめの一歩踏み出してもらえるのか、という話なんですが、これ、まずは自分に対してセンスメイキングできる力を身に着けないと、他の人を腹落ちさせるなんで不可能だと思うんですよ。だからまずは自分。自分を信じ込ませる、自分を腹落ちさせることを練習するのがいいと思うんですね。

ここで突然ですが、僕の昔話をさせてください。6年くらい前、僕は前の会社に退職届を出し、有給休暇を消化している間、毎日ベッドの上でゴロゴロしてたんですね。スーパーで特売の寿司パックとビールを買ってきて、アニメを見ながらそれを流し込む毎日でした。

でもある日、「せっかく長い休みなんだから、何かにチャレンジしてえ」と思いました。そこで、当時兵庫県の西宮市に住んでたんですが、そこから大阪まで歩こうと思ったんです。何時間かかるかわからないけど、とりあえず、大阪まで歩こう、と。

そして、即座にセンスメイキングして、最初の一歩を踏み出したんです。家を出て、いつもの景色を置き去りにして、見慣れぬ道にわけいっていきました。大阪待ってろよと。

一時間くらい歩いて、尼崎につきまして。まだまだ大阪は遠いわけなんです。足もすごい疲れてる。そして、大阪に行く目的も全く決まってない。

ここで引き返すか、そのまま行くか、僕は瞬時に決断しました。尼崎からJRに乗って西宮に帰ったんです。そして、寮の部屋で寿司パックとビールを流し込んで、泥のように眠った、まあそういうお話なんです。

これはセンスメイキングできてないのか、家に帰るということをセンスメイキングできたのか、どちらだと思いますか? 

今日はこのへんで終わります。ありがとうございました。

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