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磯野宏夫遺作展 生命の森へ

昨日、晩御飯をもそもそと食べながらダイレクトメールの山を何気なくあさってみたら大変なものを見つけた。
イラストレーターの磯野宏夫さんの遺作展の案内が埋まっていたのである。

開催は今週末まで。
危ないところだった。
我が家はダイレクトメールがちょいちょい届くのでみんな放置しており、時々大事なものが届いていないかとちらっと見るのだが、うっかりして見落とすところだった。

磯野宏夫さんは、世界各地の森や自然の絵を描いたイラストレーターである。
私がはじめてこの方の名を知ったのは「聖剣伝説2」というゲームだった。
オープニングの静かで荘厳な音楽とともに映し出される大樹の絵。
その絵を描いた方である。
その緻密な点描を見ているといったいどれくらいの労力をかけて描いているのだろうと気が遠くなってしまう。

磯野宏夫氏は2013年5月28日に心不全で急逝したという。
そのため遺作展が昨年大阪や東京で行われたが(生前に磯野さんが個展を開く準備をしていたが、急逝したために遺作展として行われることになってしまった)、故郷である愛知県でも遺作展を行うことにしたのだろう。
磯野さんは生前に個展を精力的に開いていたが、ご本人が亡くなってしまったので今後いつ原画を見る機会があるかわからない。
(後でインターネットで調べたところ、やはり遺作展のあとは個展を開く予定はないという)
そのため急きょ出かけることにした。
予定がない週末で本当によかった。
以前、公式サイトで画集を通販したことがあるのと、名古屋の栄で開かれた個展に行ったときに芳名帳に名前を残してきたので、どちらかから住所と名前を拾ってダイレクトメールを送ってくれたのだと思う。
チラシの協力にスクエアエニックスの名前があったので、東京の遺作展と同じく聖剣伝説で使われた絵が展示されているに違いない。
磯野さんの名前を知るきっかけになったあの絵が見れるのならば行くしかない。

場所は名古屋市の古川美術館分館の爲三郎記念館
初めて行ったけれど、立派な日本家屋のなかに絵が飾られていていい雰囲気だった。

残念ながら建物内部と展示された絵の写真撮影は禁止だった。
東京での遺作展は写真撮影OKだったから、ちょっと期待していたのだけど。
美術館の分館だからそういうものなのかもしれない。
そんなわけで、外からちらっと撮った写真を載せておく。
ツイッターで同じような写真を載せていた方がいたので、これぐらいなら許容範囲で許してもらえるのかなと思って。
床の間や飾り棚に置かれた絵はやはり素晴らしかった。
輪切りにされた大木で作られた机には感想ノートがあって、常に誰かが書き込んでいた。
なので私はノートには書き込みはしなかったけれど、
ただ、やはりここに絵を描いた磯野宏夫さんがいないのが残念だった。
以前に個展に行ったとき、「どこから来たの?」「若い人は聖剣伝説で知った人が多いんだけど、あなたもそう?」と気さくに話しかけてくださった。
またいつでも個展に行けるだろう、そのうちまた名古屋でもやってくれるだろうとのんきに考えていたのだが、結局お会いできたのは1回だけだった。

今回の最大の目的である聖剣伝説のパッケージに使われたイラストは、浮観の間という一室に置いてあった。
子供のころに夢中になって遊んだゲームの象徴でもある絵の原画が目の前にある。
まさか実物を自分の目で見れると思ってもいなかったので、うれしいといえばうれしいが、遺作展という特別な企画だからスクエアエニックスも貸し出しを許可したのだろうと思うと少し複雑だった。
「実物見れたらすごいだろうねー」と言いつつ叶いっこないと思っていたことが実現したのだから、こうやって見る機会に恵まれたのは素直に感謝したほうがいいんだろう。
磯野さんは森林破壊に胸を痛めていたという。
あふれる緑と動物たちの絵を描くことで、訴えていこうとしたのだと思う。
一通り見て、最後にまたパッケージに使われた絵を見て帰ってきた。
磯野さんは亡くなっても絵は残っている。


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