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morimoto naoki 『presage』セルフライナーノーツ

morimoto naokiです。2023年2月18日にmukmuk recordsから新しいEP「presage」をリリースしました。
実はこのEP、ほとんどが次回のアルバムに入りきらなかった曲たちで構成されていて、EPのために作った曲は1曲目の「presage」だけという作品となっています。
そんな背景もあって、この『presage 』という作品についての解釈が自分の中で完全にできているとはいいづらく、なんとなく個人的にすっきりしていない面もあったりします。
そこで、ここでセルフライナーノーツを示すことで、僕自身もこのEPをもっと深く理解していきたいと思います。
それではいってみましょう。

1. presage

この曲は上にも書いたように、唯一このEPに向けて作った曲で、去年の11月あたりに着手していました。前半はナイロン弦とスチール弦のからみ、後半はピアノを追加する音場を展開しています。「presage」はフランス語で「前兆」という意味で、このEPはそういった位置付けになる予感がして、この曲を作りました。後半の方に近所にある海の音もフィーレコして加えました。
僕はもう十数年、海が広く面している今の街に住んでいて、海が身近にある環境が長い間続いています。それにも関わらず、これまであまり海をフォーカスした作品を作ってきませんでした。自分の中で身近すぎて逆に遠く感じてたのと、定番のサウンドスケープに遠慮した感がありました。
でも去年リリースしたEP『5:00 a.m.』の「blend」という曲で早朝の海を取り入れたとき、これまでにないしっくり感があって、そこから、ちょいちょい海へ出向くことが増えました。この曲はそんなちょっとした影響が出ています。

東京湾をレコーディング

2. grd

この曲に関してはあまり記憶がありません。。確かリバーブを再認識することをテーマにしていたと思います。2020年にリリースしたアルバム『hibi』以降はリバーブ全般の空間系エフェクトの使用は控え目にして、加工しないそのままの素材から構築していくことが多かったのですが、この曲は出来る限りリバーブを深くする音作りをしました。
曲としては様々な色が徐々に入れ替わるようなイメージしていたように思います。

3. msd

2曲目のgrdと同じく、リバーブの再認識を進めていた曲です。リバーブの残響からリフを作り、そこから全体を広げていきました。デモ段階で作り上げた状態から、時間が経って聞き返した時に、少しなにか足りない気がして、後日ピアノをサンプリングして追加しています。
そもそも僕の作品は、後からサンプリングピアノを追加する曲は結構多いです。ピアノの録音はこれまた近所にある音楽ホールにあるスタジオで行っています。

いつも使っているスタジオでピアノレコーディング

4. left

ある一定の周期でシンセをメインに広げていきたいと思う曲があるのですが、この曲はまさにその周期にあった曲です。僕の所有しているシンセの中で1番キレのある音がでるLYRA-8を最初に録音して 、そこからエレキギター、逆再生したカリンバ等を追加しています。

5. innocent

去年の9月ごろに制作していた、他とは違いコード進行と明確なメロディがある曲で、そのためかアルバムでの配置が難しく、最終的にこのEPに収録されることになりました。流れの煌びやかさだったり、爽やかな空気感だったりを意識して、ピアノのハイ側を少し強調して、周辺の雑多な音を取り込みました。完成してみて、限りなく白に近い音のイメージがあったため、タイトルを「innocent=無垢」としました。

まとめ

こうして振り返って解説してみると、このEPは、確かに次のアルバムに向けた「presage」ではあるのだけれど、それとは別にアルバムに対する違う視点みたいなものを持たせられたように思いました。
それは僕にとってもすごくポジティブなことであり、こういったパッケージングのやり方も悪くないと今では思っています。
この記事を見てもらった上で、そういったことも感じてもらえたり、そうでなかったりしながら、たくさん聴いてくれたら嬉しいです。

morimoto naoki
エレクトロニカ/トイトロニカ/アンビエントアーティスト。
2013年から活動を開始。これまでに国内、海外のレーベルより数多くの作品をリリースしている。
人々の生活や何気ない日常の瞬間から着想を得た穏やかで温もりのあるサウンドを展開する。


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