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レブロンが保有する会社「現代版エア・ジョーダン」と、そこから読み解くスポーツビジネストレンド

誰しもが知っているNBAのキング、レブロン・ジェームズ
通算得点記録歴代一位など、数多くの記録を持つ生きる伝説であり、間違いなくアメリカ史上最も偉大なアスリートの一人でしょう。

日本人でも名前を聞いたことがない人はいないと思います。

では皆さん、彼の”事業家”としての側面をご存知でしょうか?
実は彼、アスリートとして活躍するばかりではなく、 Spring Hillという会社を設立しています。

レブロンと共同創業者のMaverick Carter
https://www.bloomberg.com/news/features/2020-06-25/lebron-james-maverick-carter-s-springhill-to-be-a-media-empire?embedded-checkout=true


この会社は、2021年にナイキから$725Mの評価額で投資を受けています。

バスケ界のレジェンドとナイキの事業コラボレーションは、マイケルジョーダンの”エア・ジョーダン”を彷彿とさせます。

https://www.arabnews.com/node/2283731/offbeat


それもあり、一部ではこの会社は「現代版エア・ジョーダン」と言われています。

ジョーダンはナイキと組んで靴(エアジョーダン)を売った。
じゃあ、レブロンの会社は何を売ろうとしているのか?




現代版「エアジョーダン」 その概要


https://makespringhill.com/pages/terms-conditions

彼は売ろうとしているのは「アスリートのストーリー」。

彼の会社スプリングヒルは、メディア会社です。
主にアスリートに焦点を当てた動画コンテンツやPodcastを制作する会社です。

スポーツ選手が、メディア会社??
バスケットボールシューズを売ったジョーダンと比較すると、聞き馴染みがなく、何か突拍子もなく聞こえます。

しかし 実は”アスリート主導のメディア”は、アメリカスポーツ界でのトレンドの一つなのです。

ではなぜ、このようなトレンドが起こっているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

アスリートとファンの繋がり方の変化


これまでアスリートは、グッズやアパレルを通してファンと繋がってきました。ファンは少しでも憧れの選手に近づけるため、彼らのシグネチャーシューズを買う。これらの動きの先駆けとなったのが、エア・ジョーダンです。

https://www.sportskeeda.com/basketball/the-man-convinced-michael-jordan-stay-nike-exploring-legacy-tinker-hatfield

これらの手法は今でも有効な手段です。

しかし、アスリートがファンと交流し、消費者を引き付ける方法には、新しいアプローチが登場しています。

それが、アスリート主導メディアなのです。

ソーシャルメディアの隆盛


https://www.moxeemarketing.com/social-media-squatters/

以前は、アスリートがファンとつながりを持つためには、地方テレビ局、もしくはナイキのようなメーカーを通じるしかありませんでした。これらの企業がアスリートとファンの間の橋渡し役をしていたのです。

しかし、ソーシャルメディアの登場により状況が一変しました。
ソーシャルメディアにより、アスリートは大企業を介すことなくファンと繋がることができるようになったのです。

ソーシャルメディアが成熟してく中で、アスリート達は、自分たちのメディアやコンテンツ制作会社を設立し、ファンが求める質の高いコンテンツを作り、投稿するようになりました。

この動きはアスリートの都合だけでなく、ファンにとっても歓迎されるものです。

自らコンテンツを制作することで、ファンはアスリートのより本物の姿を見ることができます。テレビでは、アスリートがどことなくぎこちなく振る舞う場合があります。放送コードもあるため、普段とは違う言葉遣いを強いられる場合もしばしばです(特にアメリカはf* wordがあるのでそれが特に顕著な気がします)。

自分たちでコントロールするコンテンツでは、放送規制の束縛がなく、彼らはより自然体でいられます。

このようにして、アスリートのニーズとファンの期待が一致し、このトレンドが生まれました。

The Player Empowerment Era


https://www.forbes.com/lists/athletes/?sh=3263847e5b7e

ソーシャルメディアの登場により、選手は既存のメディアや既存のブランドと手を組まずとも、自分自身の手でファンと直接つながることができるようになりました。

アスリートが仲介者を廃し、自身のメディアやブランドを持つ一連のムーブメントは The Player Empowerment Era * と呼ばれます。

現在

  • カリーはUnanimous Mediaという長編コンテンツ制作会社を

  • デュラントはBOARDROOMというメディア、

  • レブロンは前述のSpringHill

をそれぞれ保有しています。


ジョーダンはNikeと手を組み、自身のシグネチャーグッズを販売することで、ファンとの新しいつながり方を作り上げました。
そしてレブロンは、自身のメディアを通して、ファンとのつながりを再構築しようとしています。
このような点で、レブロンとその会社はまさに「現代版エア・ジョーダン」と言えるのです。

終わりに

いかがだったでしょうか。
個人的には、日本でもアスリートがムーブメントは起こると考えています。
なぜなら
・ファンは直接アスリートと繋がりたい
・SNSを通してアスリートはファンと直接つながることができる
という状況は同じだからです。

少し違う形ですが、例えばこのようにゲーム実況を通してファンと直接交流を深める選手も現れています(こちらは切り抜きになります)。

アメリカ、日本ともに、今後の展開が楽しみです。


※The Player Empowerment Eraは文脈によって違うニュアンスを持ち、例えばNBAとセットで使われる際は選手の力がチームを超え、選手がチームにトレード要求をするようになったという現象のことを指します。


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