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とんびに箸

今月頭だったかしら
薄晴れの週末

思い立って若い連れと若狭湾に一泊キャンプ。まだ浅い午後、白砂青松の野営場チェックイン前に、海沿いスーパーでお買い物。波音と星空、貝を炭火で焼いてワインがぶ飲みの無上の喜び、のその前に、設営前の腹拵えのお弁当をば。ちくと甘めのソースカツ丼、およそ半分を胃の腑に納めたその時、連れの黒髪セミロングの頭部がガクリと揺れた。

瞬間、口元から糸一条の鮮血。
見えたのは茶色の尾羽。

あ、とんび。

連れがまさに口中に運ばんとしたカツ切れを強奪すべく、音もなく背後より飛来した肉食鳥の爪が唇を掠めたのだと認識するのに、20秒あまりを要しました。かの猛禽類は、割り箸だけを握りしめて飛び去る大失態。幸い、傷は浅かった。

やい、鳥。なんぴとたりとも、女子の唇傷つけること無かれ。狙うなら、するり鮮やかにカツ盗れや。我より遥かに華奢な連れを狙ったらしいが、彼女の食い付きの早さを見誤ったな。

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