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One Hour One Lifeってゲーム

インディーズゲーム『One Hour One Life』から人間の行動心理を観察していこうとおもう。
(以後OHOLと略する。)
いたってシンプルなもので、他のプレイヤーと協力して資材を集めクラフトをして子孫繁栄させましょうというよくある普通のゲームである。

原作はsteamにあるが、とある中国人が作者に無断でテクスチャやシステムを丸パクりし、日本向けへ有料販売したため後に問題発展となる。
一時期はmax250人まで入れる7つのサーバーが全て満員になる程の人気だった。
原作(パソコン版)は2000円前後、原作者無関係のスマホアプリは610円とどちらも手の出しやすい価格帯である。
先ほどの問題発展の逃げとしてスマホアプリはOHOLからYou are Hopeに改名し、未だに購入可能ではある。
steamにある原作ではまだまだ新アイテムやレシピのアップデートが豊富なため、私の文を読んでみて気になった方もしくはアプリはすでに持っていてパクリ問題も知らなかったよという方は
ちょろっと原作の方を覗くだけでもしてみてほしいと思う。ゲーム性自体は最高と断言していい。

1、システム的なおはなし
プレイヤー同士で協力して資材を集めたりクラフトをしてより良い住処を作るPVEのゲームだ。
ゲームタイトルの通り一つの人生は一時間、一分で一歳年を取り60歳になったら寿命で死ぬ。

その寿命はどんなに文明が発達しても伸びることはないし裏技も存在しない為、寿命の概念が覆ることはない。
食料ゲージも存在し空腹のまま時間が経過するとそのまま餓死するし、満腹になっていようと野生動物に襲われれば否応なしに死ぬ。
死んだ場所とすぐに同じ村に産まれることはシステム上まずない。
生を受けてから死ぬまで自分がどれだけ村に貢献できるかとクラフトに励む者や、同じ村に産まれた者同士で楽しくコミュニケーションを取りたいなど楽しみ方は様々だ。


男性と女性、様々な人種、見た目、これらは全て一つの人生で毎度ランダムに決定される。
プレイヤーは始めに一人の14歳の女性として世界に産まれる。女性は14歳から子供を産むことが可能になり、40歳でその役目は終わる。
大抵のプレイヤーはまず個性豊かな苗字を考え、自らをイブと名乗り、村の発展を夢見てアイテム採取を始める。
苗字は子供に遺伝し、代々受け継ぐことが繁栄の象徴である。
イブとして造り上げた村が20,30世代と長く続く時、イブがその村の子孫として生まれることがある。
自分が亡き後、村がどのように成長し発展して行ったのかを見ることが出来るのはゲームならではの楽しみではないだろうか。

暑すぎたり寒すぎたりすると食料ゲージの減少量は増えるが、かといって適温の場所に留まっていると採取やクラフトが滞る。

人間にAIやBOTなどは一切存在せず、人間から生まれてくる人間もまたプレイヤーで意思を持ち、行動を共にするのはMMOやマインクラフトに似たところがあるだろう。
プレイヤーから生まれた子供は0歳の赤ちゃんで、3歳まではアイテムを持つことは出来ないしチャットも片手で数えられる文字数しか打てない。
アイテムを持たないと食料を食べられないし、食料ゲージの最大値が低いため母親からの手厚い補助がなければ必要になる。
母親が赤ちゃんを持ち上げることで赤ちゃんの食料ゲージは満腹となり、母親の食料ゲージが1減る。

このゲームでの男女の違いは明確で、知らない他のプレイヤーを同じ村に呼ぶことの出来る出産をする女性とその機能のない男性。
もっとも食糧不足で呼びたくない状況であっても勝手にプレイヤーは生まれてしまうし、アイテムを村の遠くから採取して帰る途中だったとしてもお構いなしに生まれる。
そのため女性は出産適齢期に村から遠く離れることはリスキーであり、男性が近くにいないと女性が妊娠しないというシステムは存在しないため、
基本的に男性が探索・採集、女性が村の中で畑・動物の世話を担当することが多かった。

2、人間の行動のおはなし
子供が生まれてから最低3分間のディレイが存在するため連続で生まれることはないものの、出生待機のプレイヤーが多ければやはり3分に一回はほぼ確実に子供が生まれる。
そんな中で複数人の女性の作業の手が止まると村の発展の速度に影響が出る為、託児所なる制度を作り出すことになる。
食料ゲージの減りにくい適温の場所をうまく見つけ、乳母と呼ばれる女性が複数の子供を餓死させないように定期的に持ち上げる作業がある。
村が出来立ての頃は食料のほとんどが託児所に集められる為、村人がよく集まり情報交換が盛んになる。
鉄の採掘位置を教えあったり不審な行動の人間の情報伝達、新たに生まれてくる子供にその情報を伝えるのも乳母の仕事であった。

運が悪いと子供が生める=育てられる期間14-40歳の間およそ26分間、自分はゲームを楽しむことも移動することも出来ず無駄な時間を過ごすことになる。
そのため大抵の人間は乳母をやりたがらず、託児所に乳母がいるかどうかの確認もせずに置き去りにし子供が大勢餓死することになったり、
食料ゲージ的に効率の悪くなるが大人の食料を分け与えることで生きながらえさせたり、乳母をお願いしますと言われた瞬間切断する等様々な問題が積み重なる事になる。
効率について文句を言うのは大抵育てられてる子供自身であるし、乳母の抱き上げる速度が遅い、怠惰だなんていうのは子供側だったりする。
託児所の制度に疑問を感じたプレイヤーが自分が産んだ子供は自分で育てようとするも、子供側がそれを良しとせず一目散に託児所へと走りだす光景もよく目にした。

出産や乳母をやりたくないがために女の子に生まれた瞬間歩いて乳母の手から逃げ出し餓死・野生動物に突撃する自殺、リセマラが多発する。
女がリセマラばかりするため子孫が繁栄せず村が絶滅、廃村になることも多かった。

この特徴的な乳母制度が暗黙のルールとして存在するのは実は日本サーバーだけで、北アメリカサーバーでは自分で産んだ子は自分で育てましょうという風潮がある。
日本と違い食料ゲージの効率が悪い大人の食料を食わせるなという圧力もないため、ニートの男が育てているなんてこともある。
現実世界との差異は気になるが割愛する。

またこの親子という関係はシステム上存在するものの、現実には赤の他人のプレイヤーなので親子の絆が存在しない。
しかし、この生まれてから自立できる3歳までのたった3分の間、世話をされたという事実だけで寿命で死ぬ60歳まで盲信し続ける者も少なくない。

荒らし自身が生まれてすぐ乳母を立候補し、他の誰もがやりたがらない仕事を請け負うため反対意見も出ることなく歓迎される。

3、繁栄と衰退のおはなし
人間が集まればそれだけ争いが起きやすくなる。自分は勤勉に資材を採取しているのにアイツはチャットばかりして食料を消費するだけだと。
実際は狭い画面の中で村人全員の行動が常に把握出来ているわけではないので、本当にただのニートなのかもしれないしたまたま採取から帰ってきたタイミングだったかもしれない。
決め付けや偏見、あるいは憂さ晴らし

襲ってくる野生動物を殺して平和とさらなる繁栄を得ましょうという弓矢で人を殺し、
死んだ野生動物の肉をさばいて食料にしさらなる繁栄を目指しましょうというナイフで人を殺す。
ニートを粛清するのに単独ではただの殺人鬼の荒らしだが周囲の人間と情報を交換しあい連携すればまた別だ。
ごく一部の人間以外はニートの粛清に大賛成であるしなんなら衆人には自身が罪に問われない殺人イベントを楽しみにしているかのような雰囲気がある。

殺人で村中がてんやわんやになる様子が楽しくて仕方がない人間が自ら罪のない人を殺す荒らしが多発し、
アイツに刺されそうになった、アイツがクラフトアイテムを隠してたんだと濡れ衣を着せ一生の間に何度も殺人を成功させた人間もいた。
(ちょうどこの辺りの時期に某人気ゲーム実況者がOHOLをプレイしたために一気に年齢層の低いプレイヤーが増えここからさらにこの風潮が悪化することになる。)

弓矢やナイフで人を攻撃すると返り血を浴び5分間鈍足になりチャット画面が真っ赤に染まる。
非常に目立つ返り血を周囲の人間に見られることになるので殺してさっさと逃げ果せる事も出来なく、後に出てくる正義感の強い警察を名乗る村人が殺人鬼を粛清しに来る。
警察の役目は村内の巡回と託児所にいる乳母との情報交換だ。すぐに悪者を粛清出来るようにナイフを持っているし、荒らしが村に野生動物を放った時にすぐに対処してくれた人もいた。
しかしこの頃になるとごく普通のクラフトをする人間がナイフを持っただけで荒らし疑惑が浮上し拡散されるため、
毎回乳母の許可が無いとナイフが使えずトサツや料理の進行が遅れ食糧難が起こったり、また警察を自称した人間がナイフを振りまわし疑心暗鬼が起こり警察を自称する人間への不信感が募るようになる。
そして乳母を自ら進んで立候補し、情報網の中心となる立場で撹乱させ村を壊滅(廃村)させる行為も横行した。

またツイッター等で荒らし協同組合を募り、荒らし行為を複数人でするためにリセマラをしまくる、生まれた瞬間に特別な暗号を言い合い意思疎通を図る。
集合が出来たらアイテム隠しや食料の無駄食い、他者に濡れ衣を着せたり家畜を全て殺す、殺人行為を同時多発させ混乱へと導く等やり放題の迷惑な者もいた。
人生と人生には区切りがあり、前世の行動は何者にも知られることはない。
今現在真面目にクラフトをしている者も前世では荒らし行為をしていたかもしれないし、その逆もあるだろう。
荒らし行為は好きではないが殺人する側をロールプレイングとして体験してみたくて人を刺したという人も少なくない。

あまりにも荒らし行為の数が増えすぎたため、運営が呪いシステムを実装した。
3人のプレイヤーから呪いを受けた人間は即死するというもので、武器を

実況者によるブームもしばらくすると落ち着いてくる。ゲームのクラフトは覚える事自体は多いものの単調ではあり、新アイテムのアップデートも少ない。またあまりの荒らしの多さに辟易した人が辞め、
プレイヤー減少のためリセマラ者がいなくても廃村になるケースも増え、さらにプレイヤー減少が加速し7サーバーで10人いるかどうかまで落ち込んでいく。
この状態が一年以上は続いたがまた最近は新規参入が増え、現在では1サーバー70人と増加傾向にあるのでこれからまた様々な人間模様を見ていくことができるだろう。

話の流れに重きを置いたため書くことが出来なかったが、日本サーバーとアメリカサーバーでのプレイヤーの考え方は大きく違く、日本では羊飼いや料理人、鍛冶屋等は各一人と決まっており他者から手出しをされることを
激しく嫌う事が目立つが、村全体の完成度、植物の植え方がアメリカは辺り一面同じ植物だらけなのに対し日本サーバーは3×3マスの畑、綺麗に舗装された道、アイテム整頓の美しさ等他のサーバーにはない良いと思う特徴も多くある。
また完全なる分担業のため不人気な作業を渋々とはいえ行ってくれるような責任感が強い側面もあるためその点では発展が滞ることが少ない。

一遍現実世界とは無関係のバーチャルな世界でありながら、リアルな人間同士の理解しあえない価値観の違いに直面する。

「村にアイテムが散らばっていて汚いとよく文句が出るが、実際に完璧に整備された村を用意するとすることが無いと言って餓死していく奇妙な現象」

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