イギリス転職体験記① ~ ビザ取得と求人応募~

初っ端から夢のない発言ですが、イギリスで職を見つけることは正直努力だけではどうにもならない部分も多く、運に恵まれるかどうかが大きな岐路になります。コロナ禍とブレギジットに見舞われて企業を取り巻く市場環境が厳しくなってからは尚更だと思います。

ただ、そんな中でもどうにかイギリスで職にありつくことができた自分の体験記を綴ることで、イギリスで働くことを夢見ている人達の役に立てたらと思い、筆をとっています。

ビザの必要性

まず最初に立ちはだかる高い壁がビザです。イギリスに限らずどこの国で就労する場合でも同様ですが、海外の国に移住して働くためには相応のビザが必要になります。

イギリスで働くために一般的に利用されているビザは、Tier2ビザと呼ばれる雇用先企業のスポンサーシップを受けて発給されるビザ、もしくはYMSビザと呼ばれるイギリス版ワーキングホリデービザに当選して発給されるビザです。

間口が広く敷居が低いのはYMSビザですが、いかんせん抽選形式のため、自分の力ではどうにもならず応募したらあとはひたすら幸運を祈るのみです。

Tier2ビザは、どちらかといえば実力主義で、スキル・経験があれば自分の力で可能性を広げることが可能です。ただし、受け取る給与額が一定水準を超えていなければならないことに加え、スポンサーシップを発行できる企業・組織は限られているため、険しい道のりであることに変わりはありません。短期間でどうこうできる問題ではなく、企業が相応のリスクを背負ってでも雇いたいと思えるような実績を積むことが必須条件です。

ちなみに私は幸運なことにYMSビザに当選し、イギリスで就労する権利を手に入れました。ただし、それは長く厳しい就職への道のりの始まりに過ぎませんでした。

求人への応募

YMSビザを取得、もしくはTier2ビザに値する実績を積んだら次は実際に求人案件に応募するステージに移ります。求人案件の見つけ方は、大きく以下の3つに分けられるかと思います。

  1. 日本人向け求人サイト

  2. 現地求人サイト

  3. LinkedIn

まず日本人向け求人サイトは、邦人用コミュニティMixB、邦人向け求人サイトのCentre of People、People First、現地JAC recruitmentなどが代表的です。ただし、日本企業の現地法人の案件が多く、せっかくイギリスに来たのだから現地企業で働きたいと願っている人にとっては魅力的な案件を見つけるのは難しいかと思います。現地企業であっても主に日本人や日系企業相手にビジネスを行う案件であることが多い印象です。とりわけ日本人を雇いたいと思って日本人向けサイトに掲載するわけですから、当然といえば当然の結果ですが…

私が就職活動をした時期は、コロナショックの影響がまだ色濃く残っている時期だったので、私の希望職種で採用活動を行なっている日系企業はなく、もしかしたら募集があるかもしれなから応募してみようと言われた企業も両手に収まるくらいしかありませんでした。また、取り扱い企業も似たり寄ったりのため、正直担当者の質を除いては各社で差異はないように思えました。

現地求人サイトでは5万ポンド以上の案件を見かけることも少なくありませんでしたが、日本人向け求人サイトでは2万~3万ポンドの案件が多いように見受けられました。足元を見て低く見積もられてるのかなと感じることもありましたが、イギリスで足場を築くために踏むキャリアの第一歩としては十分ありだと思います。

次に現地求人サイトですが、これは実際にやってみて思った以上に敷居が高かったです。日本人ということが有利ではなくなり、現地人や他国の人達と対等な土俵で闘うことになるからより厳しい闘いになるのは容易に想像がつくかと思いますが、実はその前段階で門前払いにされるケースがほとんどです。

なぜなら多くの求人が、そもそもヨーロッパ圏外からの応募がそもそもできなかったり、就労ビザの発行ができないことを明記していたりするので、スキル・経験とは無関係にふるい落とされてしまうのです。イギリスに移り、居住地による足切りを逃れてから本格的に利用し始めましたが、希望職種にあてはまる案件には手当たり次第応募したものの、電話やメールで反応があった企業は片手で数えられるぐらい、面接に進んだ企業は一つもありませんでした。

最後にLinkedInです。他がカテゴリなのにLinkedInだけ固有名詞なのは論理構造的には多分アウトですが、他の2つに比肩するほどの影響力と存在感があるのであえて同列に並べました。現地求人サイトと変わらず、就労ビザや現在の居住地による足切りはありますが、募集元企業が直接求人を出すだけでなく、各種求人サイトが求人案件を公開する場にもなっているため、求人数は断然多いです。

そして何より大きな違いは、アピールできるチャンスが豊富なことです。プロフィール写真や経歴の書き方、保有スキルのタグ付け、LinkedIn内の簡易テストによるスキル証明などを利用して、工夫や頑張り次第で他の候補者と目に見える分かりやすい差別化を図ることが可能な他、リクルーターに友達リクエストを送ったり、求人に関する投稿に返信することで関心を得ることも可能です。

さらにPremium memberになれば、リクルーターや希望企業に所属している社員に直接メッセージを送ったり、LinkedIn learningという学習サイトを利用することができるようになったり、求人案件応募者の居住地域やスキルなどの内訳や応募者内で自身のざっくりとしたランキングを閲覧することも可能になります。

ランキングがあるのならリクルーターは上位順に確認していくことは自明なので、リクルーターの目に留まるために、私はPremium memberになってからこのランキングをあげることを目標に努力を重ねた結果、プロフィールを閲覧してくれる人が着実に増え続け、結果として累計10社近くから電話をもらい、その内4社と面接まで漕ぎ着けました。

ランキングを上げた方法論としては、プロフィールを最大限に拡充させて、友達申請をたくさん送ってコネクションを増やしたことに加えて、LinkedIn learningを積極的に受講・修了して学習実績に加えていきました。LinkedIn Learningでの受講は、受講履歴が応募者内でのランキングを上げるためのアルゴリズムに強い影響を及ぼすのではと考えての行動でしたが、実際にランキングが上昇したことを考えるとおそらくその予想は外れていなかったと思います。また、リクルーターが自身のプロフィールを訪れた際にも、学習実績欄を見て向上心や学習意欲を確認できるため、コンタクトしてもらえる確率も高まっていたはずです。

ランキングやコンタクト率を引き上げるために、学歴や職歴は追加することは一朝一夕ではどうにもならないですが、LinkedIn内でのアクティブ度や学習意欲は頑張り次第でどうにかなります。もちろんリクルーターとの電話面談や求人元企業との面接では真価が試されるため、そこからは英語力や積み上げてきたスキルがものをいう世界のため、付け焼き刃の実力では通用しないことがほとんどだと思います。

ただ、有象無象の応募者の中から、リクルーターに注目してもらい、そこからコンタクトに繋げるためには、自分自身をプロモーションする力が大きな差を生むように感じます。日本での転職活動のように求人サイトでひたすら応募ボタンを押したり、エージェントに登録してマッチングしてくれるのをただ漫然と待っているだけでは、十分な実力を備えていてもおそらく候補者として検討リスト入りさえできないことがほとんどです。逆にいえば、LinkedInではスキルや英語力、国籍などで不利な部分があるとしても、工夫をして他の人より目立つことで面接までたどり着ける可能性もあるということです。

ちなみに私はLinkedInを介して知った求人案件に応募して、現在の会社に就職を果たしましたが、その詳細については次回お話ししたいと思います。

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