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2024/03/17【エ】

小学4年生くらいのこと。
通っていた絵の教室で、チラシを貰った。
「名古屋で展示があるから行ってみてね。」
背が高くてソバージュで美人な先生が言った。

チラシには、奇妙な絵とタイトル「白紙委任状」と書いてあった。
馬に乗った女性が木を隠したり、木に隠れたりしている絵だ。
小学生の私は「ははーん、だまし絵を描く人だな?」と思った。
シュルレアリスムなんて聞いたことはないが、エッシャーを知っていた私は得意げに「これを観たい。」と言った。親はきっと「なんて熱心なんでしょう!」と思ったことでしょうが、何も知らずに観に行った。

会場へ着いた私は、想像していた内容との乖離にびっくり。
だまし絵じゃなかった。夢で見たことがそのまま目の前に現れたようだった。

会場は薄暗くて、奇妙なサーカスを見るように怖い。
燕尾服の男はドアをすり抜け、男たちがバットで空飛ぶ亀を追い回している。
断片的で散り散りの記憶のに、想像した通りの大きさになるグラス。
女性ものの寝巻からは直接乳房が生えている。
考えた事がそのまま出力されていた。

今までそんなものは見たことがなかったし、こんなものを描いていいの?と思った。絵は景色を描くもの、啓蒙のポスターとして作成されるもの。
田舎の学校では、そんなものだった。
(絵の先生はそれは違うよ、と教えてくれる人だという事は補足しておきたい。)

それからしばらく、家に帰ってからもずっと画集を眺め続けた。

こんなものを描いても(作っても)いいの?
の第一体験だった。

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