愉快な隣人

深夜2時、丑三つ時になると毎日隣の部屋から何やら愉快な音が聞こえてくる。まずは何かが開幕したのか?と思わせるようなホラ貝を吹く音がしたかと思うと、ぴょろぴょろぴ―、ぼよよよよよーん等という馬鹿げた音に交じり、時折笑い声や奇声が聞こえてくる。とにかく愉快である。私はこの時間が待ち遠しくてたまらない。
隣人の名前は、ヘボピーナッツさんという。表札にそう書いてあるのだからおそらく本名なのであろう。ヘボピーナッツさんとは、たまに朝や昼間にすれ違う事があるが、その時は意外にも陽気という訳ではなく、大人しい。私と目が合うと、無言で会釈をし、家の中に入る。よく分からん人だ。
そしてある日、徹夜明けと人間関係のいざこざのストレスか何かで気が狂ってしまった私は、深夜2時に音が聞こえてきたタイミングで猛烈にそんな楽しそうなら私も混ぜてよという感情が沸き起こり、突然隣人を尋ねることにしたのである。
私がチャイムを鳴らすと、出迎えたのは全身ピンクのボディコンスーツを身に纏いうさ耳カチューシャとサングラスを付けたヘボピーナッツさんの姿であった。ヘボピーナッツさんはその辺に落ちていた腐ったみかんような物体を拾うと、「ハッピーフード」と言って私にくれた。私はハッピーフードを食べた。腐ったみかんだった。その後、一時間ほどヘボピーナッツさんと私は踊っていたのだが、突然ヘボピーナッツさんが「スリーピングタイム」と言うと、サンタの帽子みたいなのを被った瞬間寝たので私も寝た。
起きたら、まだ夜中の4時だった。私はゴリラの吐息で目をさました。なんと部屋の中にゴリラがいたのである。と思ったらへぼぴーさんが扮しているだけであった。
外はすっかり明るくなり、私はヘボピーさんの家を出た。
また来ようと思った。

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