文字起こし:「桜を見る会」質疑を支えたもの 山本豊彦(しんぶん赤旗日曜版編集長)・上西充子(国会パブリックビューイング代表) 国会パブリックビューイング 2020年1月6日

文字起こし:「桜を見る会」質疑を支えたもの 山本豊彦(しんぶん赤旗日曜版編集長)・上西充子(国会パブリックビューイング代表) 国会パブリックビューイング 2020年1月6日
https://www.youtube.com/watch?v=sELCx38tiOY&t=908s
※完全な文字起こしではなく、若干の言いかえ・省略があります。


※ここで取り上げた田村智子議員の質疑については、2019年12月24日に田村智子議員をゲストに迎えて実施した国会パブリックビューイングの下記の映像を参照。
字幕【田村智子議員ゲスト出演・緊急街頭上映】「#桜を見る会」ビフォー・アフター 国会パブリックビューイング 2019年12月24日(街頭上映用)


●上西充子(国会パブリックビューイング代表)
国会パブリックビューイングです。今日は室内からのライブ配信ということで、11月8日の桜を見る会に関する田村智子議員の質疑がどういうふうに準備をされたかということをお伺いするので、しんぶん赤旗の日曜版の編集長の山本豊彦さんに来ていただきました。よろしくお願い致します。

●山本豊彦(しんぶん赤旗日曜版編集長)
よろしくお願いします。

●上西
今日はパワポの代わりに紙芝居を作ってきたんですけれども、こちらですね。
「しんぶん赤旗」の日曜版。10月13日に、「桜を見る会」について安倍晋三後援会御一行様ご招待、安倍事務所が募集をして、「『桜を見る会』に行きたい人?」というので募っていたということをスクープとして特集で書いたわけですね。
これをもとに11月8日の田村智子議員の質疑が行われたということで、じゃあこういう情報ってどういうふうに集めたんだろうと。どういう問題意識で、誰が具体的にどう集めたんだろうということを、お伺いしていきたいと思うんですけれども。
まずその前に、そもそも日曜版って何っていうのがありまして、「しんぶん赤旗」って日曜版と平日、毎日出ている…

●山本 そうです。日刊紙。

●上西 日刊紙と、二つあるわけですね。日曜版のほうの記者さんは日刊紙の記者さんと別なんですか。

●山本 そうですね。日曜版は日曜版独自の編集部っていうのを持ってまして、だいたい40名おります。政治から社会から、うちは結構、芸能なんかにも力を入れてまして、芸能の記者を含めて全部40数人。毎週36ページ、作っております。

●上西 編集長でいらっしゃるというのは、全体の紙面の責任者?

●山本 そうですね。

●上西 で、共産党の機関紙なんですよね。

●山本 はい、そうです。

●上西 そうすると、普通の、例えば朝日新聞、毎日新聞なんかと比べて、取り上げるテーマっていうのも、ある程度絞られているというふうに考えたらよろしいですか。

●山本 共産党の機関紙なんで、当然いろんな、共産党はどう考えているかとか、共産党はどう見るかっていうのは当然あるんですけど、同時に、ある意味でいうと、うちは広告、要するに企業の広告なんかに頼らずに、読者の購読料でやってるんです。
そういう意味で言うと、あまりそういう、いわゆる大企業なんかに気にすることなく、いろいろ書くことはできるっていうことで、前はブラック企業問題を実名でやったっていうことで JCJ(日本ジャーナリスト会議)の賞をいただいたりとか、そういう意味で言うと、マスコミ、メディアの大きな役割っていうのは権力監視なんですけど、やっぱりそこを、かなり力を入れてやってると思ってます。

●上西 なるほど。日曜版と日刊紙はそれぞれ料金が別なんですよね。

●山本 はい。

●上西 それぞれおいくらですか。

●山本 日曜版が(月に)930円で、日刊紙が3497円。

●上西 なるほど。で 、この10月13日の「しんぶん赤旗」日曜版が11月(8日)の(田村智子議員の)質疑になったわけですけれども、この話って実はそこでいきなり出てきたことではなくて、今、名簿の問題が野党合同ヒアリングとかでもやってますけど、名簿は5月に破棄をされたというふうに言われていて、前段があって、昨年の5月の宮本徹議員の質疑のために資料請求をした時に、名簿が破棄されたという事情があるわけですよね。
なので、今日はその5月の質疑ってどういうものだったのかっていうのを見て、それと今回の(11月8日の)田村智子議員の質疑っていうのは、どういうふうに違うのかを確認をしていきたいと思っています。
今日の主な内容はこういう感じで、最初に(田村智子議員の質疑の)反響を見て、そこからこう、さかのぼっていくというような感じでやっていこうと思います。

【Part 1】 「桜を見る会」11月8日・田村智子議員質疑の反響
【Part 2】 11月8日質疑に至る経緯
【Part 3】 ブログをもとに後援会関係者の招待を追及
【Part 4】 安倍事務所による参加案内をもとに首相の関与を追及
【Part 5】 ジャパンライフへの招待状問題
【Part 6】 国会議員の質疑を支える調査・情報収集

●上西 で、反響ですけれども、Part1、11月8日の翌日ですね、翌日に立憲民主党・枝野代表が、これは日本共産党が用意したYouTube映像ですよね、だと思うんですけどね、YouTubeで田村議員の質疑を切りとったものを参照しながら、「党派を超えて、数年に一度の素晴らしい質疑だったと思います。少し長いかもしれませんが、やり取りに引き込まれて、あっという間に感じます。多くの方にごらんいただきたいとお願いします」というようなアナウンスがあったと。


●上西 で、これがただ、すぐには大手新聞では取り上げられなかったと。

●山本 そうですね。

●上西 ここに経緯をざっと書きましたけれども、当日に「news23」が、これはそんなに大きくではなかった?

「桜を見る会」問題の広がりはどのように?
11月8日(金)  日本共産党が田村議員の質疑をYouTubeで公開
         TBSテレビ「news23」が報じる
11月9日(土)  立憲・枝野代表がツイートで評価
         毎日新聞デジタル記事が詳報
           (統合デジタル取材センターの記事)
11月11日(月) 「総理主催『桜を見る会』追及チーム」発足
11月12日(火) ワイドショーで話題に
11月13日(水) 大手紙が大きく報じ始める

●山本 一応、国会質疑っていうのは、新聞でいうと各党がまあ平等にこんなのをやりましたよっていうのをやるんですけれど、まぁ、NHKなんかもその範囲だったんですけど、「news23」は、比較的、それよりはちょっと多めに出したんですけど、まぁ、だからと言って、めちゃくちゃ大きいわけでもなかった。

●上西 なるほど。で、翌日に先ほどの枝野代表のツイートがあって、その翌日の9日に毎日新聞のデジタル記事、統合デジタル取材センターの記事(※1)が、これが詳しかったですよね。9日の毎日新聞の朝刊にも記事は出てるんですけれども(※2)、それは政治部の記者さんが書いた記事で、むしろ「安倍首相は否定した」っていうのが前面に出てて、なんか、疑惑を投げかけたけど否定したっていうふうに読める記事だったんだけれども、このデジタルのほうの記事は、やりとりの論点を詳しく書いてあるので、それを見ると、「あ、否定したって言ってるけど、これ全然、根拠をもって否定してないな」と。「根拠がある質疑に対して反論できてないな」っていうのが分かるような内容だった。
で、この写真がすごいインパクトがあって、そこからこう、広く認知されてきたのかなという気がするんですけれども。

※1 「『税金の私物化では』と批判あふれる『桜を見る会』 何が問題か 国会質疑で分かったこと」(2019年11月8日、毎日新聞デジタル)



※2 「桜を見る会「後援会優遇」指摘 各界功労者を招待 首相「関与していない」」(2019年11月8日、毎日新聞朝刊)

●上西 山本さんの印象としては、ツイッターでまず盛り上がった

●山本 そうですね。そもそも、もともとウチが10月13日に(スクープを)やった時も、全然、どこも追っかけず、大手紙は追っかけてくれず、田村議員が(11月8日の質疑を)やって、これはかなり話題になるかなと思うと、あまりならず…。

●上西 予算委員会だしね。テレビも入っていて安倍首相も答弁をするという…。

●山本 ええ。ただ、今、言われたように、毎日のデジタルは、ツイッターで非常に盛り上がっているということで、どうも記事にした、と。先日、毎日新聞の記事にも載ってましたね(※3)。

※3「開かれた新聞委員会2020 座談会(その2止) 政権の緩み、「桜」が象徴」(毎日新聞2019年1月4日朝刊)

●山本 どちらかというとツイッターという市民の声が後押しをして、(毎日新聞の)デジタルが書いて、それで、今、表にあるように、やっぱりツイッターが話題になったということで、ワードショーがやり、その間には野党が共同でやるという下支えがあって、そのうえで、やっと大手紙が動くと。
今までの報道のやり方と、かなり違う展開をしていった。

●上西 でもこれ、国会審議を見れば、枝野代表と同じように「これはすごい」と。すごく緻密に質疑が積み重ねられているし、非常に重要な問題を指摘してるっていうのは分かるはずなんだけども、それが、なぜ大手紙が、まぁ、見てるんですよね、国会なんか、予算委員会なんか、ばーっとこう、各社のカメラが並んで、政治部の記者も常にいるはずなんだけれども、それが、「あ、これは報じなきゃいけないものだ」っていうふうに光があたらなかったっていうのは、なぜでしょうね。

●山本 ひとつは、今回の問題って言うのは、税金を使った「桜を見る会」という公的行事を、安倍首相が私物化してるっていう問題なんですけど、この私物化っていうことは、まあある意味じゃあこの間も、森友・加計なんかでも「行政の私物化」という形で出てきてる。で、ある意味じゃ、その安倍政権の一つの特徴なんですね。私物化は
そういう意味で我々は、非常に重要な問題提起をしたんだけど、一つはそこがこう、なかなか理解されなかったのかなと思うんですよね。
もう一つは、そういう中でも、安倍氏はそういうのを次々にやってきたことで、ちょっと慣れっこになっているところもあったのかなと。
まあ、どうせまた言っても、まあ「自分が首相でやってんだから、なんか文句あるんなら野党が政権取れよ」という話かなというふうに見ちゃったのかなっていう感じがしてるんですけど。

●上西 なるほど。私が「ご飯論法」(論点ずらしの答弁)の話を広めたときなんかも、「こういうやりとりの食い違いこそを、ちゃんと光を当てなきゃいけないんだ」って話をした時に、「なんかもう慣れちゃってるから、普段もう、それが当たり前になっちゃってるから、特に問題意識が持てなかったのかもしれないですね」みたいなことを(記者から)言われたことがあるんですけどね。
で、私たちはですね、8日にその質疑があったことは知ってたんですけれども9日にじゃあ字幕を入れて(映像を)作ろうという話になって、9日からこの田村智子議員の(8日の質疑の)字幕入りのものを出して、で、4回の質疑全部の字幕を付けたり、あと吉川(沙織)議員、大門(実紀史)議員、という形でやってきまして、石垣のりこ議員とのライブをやって、田村議員に来ていただいてというようなことをやってきました。

 <国会パブリックビューイングの「桜を見る会」への注目>
• 字幕つき映像公開(11月9日~)
   田村智子議員:11月8日、11月14日、11月21日、11月25日
   吉川沙織議員:11月25日
   大門実紀史議員:11月29日、12月4日
・街頭上映(解説なし):12月1日・12月8日
・街頭上映+石垣のりこ議員とのライブトーク:12月17日
・解説つき街頭上映+田村智子議員とのライブトーク:12月24日

●上西 で、Part 2へいきます。
この11月8日の質疑に至る経緯として、これですね、宮本議員の質疑っていうのが5月にあって、実はその前に東京新聞の「こちら特報部」が予算(正しくは支出額)と参加者が増えてるという話を、「こちら特報部」っていうのは新聞の、こう二面にわたるですところでやってるんですね(正しくは4月16日の該当記事は、27面のみ)。で、それを見て宮本議員が関心を持って取り上げようと思った

「桜を見る会」追及の経緯(2019年)
・4月16日:東京新聞「こちら特報部」が支出額と参加者の増加を報じる
・5月9日:宮本徹議員が内閣府に資料要求
         → 直後に内閣府は招待者名簿をシュレッダーで廃棄
・5月13日および21日:宮本徹議員が国会で質疑
・10月13日:しんぶん赤旗日曜版1面が後援会関係者の招待を報じる
・11月8日:田村智子議員が参議院予算委員会で安倍首相に質疑
・11月11日:野党合同の「桜を見る会」追及チーム発足

●上西 で、内閣府に資料請求をすると、直後に名簿がシュレーターで廃棄をされたと。で、「廃棄されているので」っていうので、「特にお答えができません」っていうような形の質疑が(2019年5月の)13日と21日にあるわけです。
で、まぁそこであきらめないで、田村議員の11月の質疑につながったというふうに考えていいと思うんですけれども、じゃあその5月の質疑がどういう感じだったかというのを見ていこうと思うんですけれども、(5月)13日と21日とあるんですけど21日のほうが長いので、こちらの方で、招待者数はなんでこんなに増えたのかというふうに聞いている場面があります。そこの映像を見ていただこうと思います。

*************
2019年5月21日 衆議院財務金融委員会

●宮本徹議員 どんどんどんどん、安倍政権のもとで、計上予算は変わらない中で、招待状を出す数がふえているわけですよね。これは一体全体、何でこんなにふえていったんですか、招待する数が。
●井野靖久内閣府大臣官房長 お答えいたします。桜を見る会には、外交団、国会議員、都道府県知事、議長を始め、各界において功績、功労のあった方々を、各府省庁からの意見等を踏まえ幅広く招待しておりますが、内閣官房及び内閣府において最終的に取りまとめているところであり、結果的に招待者及び参加者がふえたものでございます。
●宮本議員 いやいや、結果的にふえたというんじゃ全然説明にならないでしょう。大体、開催要項は毎年1万人目安というふうに書いているわけでしょう、一番初めの答弁では。だったら、その1万人にふさわしいように各省庁に配分をして推薦してもらうというやり方を普通はやるものだと思うんですが、なぜそれが結果的にふえたんですか。そのからくりを教えていただけますか。
●井野内閣府大臣官房長 からくりというものがあるわけではございませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、各省庁からの意見等を踏まえまして、内閣官房及び内閣府におきまして最終的に取りまとめているところでございまして、結果的に招待者及び参加者がふえたものでございます。
●宮本議員 確認しますけれども、各省庁に対して、これぐらいの規模でというものというのは、1万人という目安があるわけですから、当然出していると思うんですけれども、そういうものはないんですか。
●井野内閣府大臣官房長 各省庁に対しまして、一律の基準はお示ししておりません。
*************

●上西 なんで増えたのかっていうと結果的に増えたんだというふうな、まぁ答えにならない答えをして、で、からくりというものがあるわけではございませんけどと言って、で、「いやそれでも1万人に収めるためにはなんだかこう、配分してるはずじゃないか」というような質問をしたら、「各省庁に対しまして一律の基準はお示ししておりません」って、これ、すごくずるい言い方で、「一律」に2000人とかそんなのではありませんっていう、まあそりゃそうですよねっていう。結局、内閣府の枠が非常に大きかったってことですよね。

●山本 そうですね。

●上西 で、内閣府の枠のところに、議員の枠だったり首相の枠だったりというのが入っていたというのが実情なわけなんですけれども、「いやでも、それは、ちゃんと答えてくれ」ともうちょっと食い下がっていくと、「ご回答を差し控えさせていただきたいと思います」とようなことを言い出して、「いや、差し控えるっていうのはないだろう」っていうので、改めて宮本議員が答えさせて、その中で麻生大臣が答える場面も入ってますので、そこの部分もご覧いただこうと思います。

*************
2019年5月21日 衆議院財務金融委員会

●井野内閣府大臣官房長 各省庁からの数というものは、資料が残ってございません。
●宮本議員 各省庁からの資料は残っていない、それはあえて破棄をしたということなんでしょうかね。
一体全体、予算計上額とも違うお金をどんどんどんどんふやし続けているわけですよ。開催要項では一万人と。だけれども、招待状はどんどんふえていて、その資料も残っていない。こんな説明、国民に対して通るはずがないと思いますよ。  
大臣、ちょっと、こんな説明はとても納得できないと思いますが、麻生大臣、いかがですか、予算の執行のあり方として。
●麻生太郎財務大臣 これは、財務省の話というより、執行されている役所はどこですか。内閣府ですか。(宮本委員「内閣府です」と呼ぶ)では、内閣府に聞かれた方がいいんじゃないですか。
●宮本議員 いや、予算をつけているのは。財務省がつけた予算以上のものを内閣府が出しているわけですよ。財務省の査定がなめられているという話じゃないですか。財務省が認めた予算と全然違う使われ方をしている。これは内閣府に聞いてくれという話じゃないと私は思いますよ。
大臣もそこはアンタッチャブルにしなきゃいけないのかな、そういう話なのかというふうに私も思ってしまいますけれども、私、ことしのリストは少なくともあるはずだと思いますよ。どの省庁から推薦が何人あったのかというのは残っているはずだと思いますよ。それももう破棄しちゃったんですか。
●井野内閣府大臣官房長 桜を見る会に関しますこうした資料につきましては、一年未満の文書というふうに整理させていただいておりまして、ことしの資料につきましても、もう既に開催が終わりましたので破棄させていただいております。
●宮本議員 とんでもない話ですよ。これはちょっと、私、きょうは会計検査院を呼んでいないですけれども、会計検査院にもお願いしなきゃいけないような話じゃないですか。予算と全く違う支出を行って、その書類は、メディアに取り上げられたからかどうか知らないですけれども、恐らく、過去にさかのぼって全部破棄したことにしよう、そういうふうにしているとしか私はとても思えないですよ。
*************

●上西 はい、ということで 、資料は残っておりませんということをこの(2019年5月)21日に答えているわけですけれども、実は5月の9日に資料を廃棄していたと。「開催が終わったので廃棄させていただいております」と言うんだけども、来年のがやらない段階でこれを廃棄してるっていうのは、本来ありえない話ですよね

●山本 そうですね。

●上西 で、こう麻生大臣がね、「いや、そんなのは内閣府に聞きゃいいんじゃないでしょうか」みたいな話をして、で隣の人(上野賢一郎財務副大臣)がなんかちょっとあざ笑うような笑い方をしてましたけども、ああいうふうな、わざと笑う感じってよくありますよね。麻生大臣とかね。あれは野党の議員に対する嫌がらせみたいなもんですかね。

●山本 まあ、それはなんで笑うのか、ちょっとわからないんですが、やっぱりなんていうのかな、この質疑をわたしも見てて、やっぱ非常におかしいなと思ってて、やっぱり財務省っていうのは予算っていうのは非常に厳しいんですよね。でそれが、この間、予算の3番の支出をして、で、それを宮本議員に指摘されて、本来ならば財務省がそれはおかしいって言うべきなのを、いやそれは内閣府に聞いてくれと。で、アンタッチャブルなんですかっていう。で、そこで何も言わないと。で、やっぱりそこは、アンタッチャブルだったんですよね。
だから、やっぱりそういうのを見て、「何かこれはあるな」と言って、まあ取材を始めようかなという気になったんですね。

●上西 この(5月の)段階では宮本議員は、「ことしは例年と異なりネット番組「虎ノ門ニュース」の出演者全員でお招きだったため、虎ノ門ファミリーの皆さんとともに参加した」と。まあ、安倍首相に近い文化人たちの方々が参加したと。
「これは極めて不透明な基準でやられていると思いますよ」というふうに言っていて、まぁ確かにそうなんだけれども、ただ文化人の方々って、じゃあ「功績・功労で…」っていうのは、なかなかこう、言いにくいところですよね。
だからこの段階では、まあ疑惑というか、「いいんですかこれは」みたいな感じだったのが、後援会の方々を呼んだっていうような11月の(質疑の)段階になると、かなり様相も違うことになるし、そこでこう、証拠をそろえてっ、ていうふうになるわけですよね。
で、Part3です。いよいよ11月8日の質疑に行きます。
11月8日の質疑は、順々に田村議員が、節目趣味で、「これはこういう問題だ」「次はこういう問題いきます」というふうに、説明も入っているので、聞くだけでもよくわかるんですけれども、前半の方では、まず最初には(支出と)予算が増えているという話がありますよね。で、その上で、後援会の方々を招待してますね、という話がまず、きます。
で、これ私、すごい面白いなあと思ったのは、ここ(「しんぶん赤旗」日曜版)で集めたすべてのネタを、いきなり出さないんですね。

●山本 そうですね。

●上西 「安倍事務所が申し込み、募集してたじゃないですか」って話は、とりあえず手持ちのカードとして置いといて、「後援会の方々がいらっしゃってますけれども、ご招待されてますけど、どのような理由で?」というようなところからまず入っていくと。
で、そこから前夜祭の話とか、開門前に後援会の方も入ってましたねとか、全体(の質疑)としてはそうなんですけれども、順番としてはまず、ブログ(の紹介)から行きます。

2019年11月8日 参議院予算委員会
●田村智子議員(日本共産党)
・自民党関係者や後援会関係者のブログから、後援会関係者の大量招待を裏付け
・安倍事務所が前日の前夜祭とセットでの参加申し込みをとりまとめていた
・開門前に後援会関係者がバスで新宿御苑に入り、安倍首相夫妻と記念撮影(手荷物検査なし)
国会議員のブログから後援会関係者の大量招待を指摘
・稲田朋美「日々の活動記録」(2014年)
・「世耕弘成 後援会ニュース」(2016年)
・松本純衆院議員「国会奮闘記」(2013年)
・「はぎうだ光一の永田町見聞録」(2014年)
【萩生田大臣ブログ】
「今年は平素ご面倒をかけている常任幹事会の皆様をご夫婦でお招きしました」

●上西 で、ブログで、自民党の方々ですね、こういうのがありますねというので萩生田文部科学大臣が予算委員会の答弁のところに控えていたので、萩生田大臣に聞くという場面があります。
萩生田大臣のブログで、「今年は平素ご面倒をかけている常任幹事会の皆様をご夫婦でお招きしました」と。
これにどういうふうに答えていたかというのを、確認をしていきましょう。

*************
2019年11月8日 参議院予算委員会

●田村智子議員 各省庁から推薦をいただいて、功労、功績が認められる方ということなんですね、等を含めて。
開催要領には、計約1万人なんですよ、招待範囲。当然各府省はこれを念頭に入れて功労、功績のある方を推薦しているはずで、事実、安倍総理より前は大体1万人前後なんですよ。なぜ1.8万人にもなるのかということです。
桜を見る会に参加した皆さんはインターネットでその模様をたくさん発信していただいているので、見てみました。
稲田朋美、日々の活動報告、平成26年4月12日、桜を見る会。地元福井の後援会の、地元福井の後援会の皆様も多数お越しくださり、大変思い出深い会になりました。これ、当時、規制改革担当大臣。
世耕弘成後援会ニュース、2016年新年号。桜を見る会にて、地元女性支援グループの皆さんとと、これ写真が載っています。当時、官房副長官
2016年に初入閣された松本純衆院議員の国会奮戦記、なかなか興味深いものがありました。2013年4月20日、内閣総理大臣主催桜を見る会。役職ごとに案内状が割り当てられます。今回は限られた少数の案内しか入手できず、残念ながら後援会の皆様に御案内することができず、やむなく我が陣営は不参加。その後、2015年4月18日。選挙のウグイス嬢の皆様を始め後援会の皆様と参加いたしました。
もう一人御紹介します。「はぎうだ光一の永田町見聞録」、2014年4月18日。総理主催の桜を見る会が催され、今年は平素御面倒を掛けている常任幹事会の皆様をお招きしました、夫婦でね。
萩生田大臣、当時は自民党総裁特別補佐ですけれども、常任幹事会の皆様というのはどういう方で、どの府省が推薦してくださったんでしょうね。
●萩生田光一文部科学大臣 桜を見る会については、各界において功績、功労のある方々を各省庁からの意見等を踏まえ幅広く招待しているものと承知しており、最終的な取りまとめは内閣官房及び内閣府において行われていると承知しております。実際に参加された方は手続にのっとり招待された方であると承知をしております。(発言する者あり)
●萩生田大臣 自分の知り合いの方をのべつ幕なし呼べるという仕組みになっておりません。
その方たちが例えば各種業界団体の東京都単位の役員になっている、そういうような方について……(発言する者あり)それは何年のでしょうか。常任幹事の中にそういう各種団体の長の方がいらっしゃって、その方たちがお招きをされたと承知をしております。まあ私が主催者じゃないのに何かお招きしたというのはちょっと僣越な言い回しだなと思います。
*************

●上西 はい。で、最初のうちは答弁の側が各界の功績・功労のある方々をお招きしてるんだっていうような論理で押し通していて、この萩生田大臣も、まあ、たまたまその人がPTA とか、いろんなことをやってる人が、たまたま後援会の幹事の方だったんだっていうような形の答弁をしているわけですけれども、この後、「安倍事務所から招いてましたよね」っていう話になると、もう「功績・功労」っていう答弁をしなくなるんですよね。「個人情報」っていうふうに言い換えて、何も答えなくなる。
それは、それだけ追い込まれてるなっていうことがわかるですけれども、そうやって少しずつ外堀を埋めていくような、こういう質疑の組み立てってなかなり緻密に組み立てられたものなんでしょうか。

●山本 そうですね。やっぱり国会質問っていうのは、国民の前で、特に今回なんかテレビの中継をやっていましたから、きちんと今の安倍政権の実態を示すっていう非常に重要な国会議員の場なんで、特に国会質問っていうのは非常に準備して
私たちもいろんな情報は提供しましたし、その上でじゃあどう、それを組み立てるのかっていうのは、田村さんだとか秘書、あと国対(※4)なんかがよく議論をして、最初から安倍さんにぶつけるのではなく、萩生田さんとか周りの人で、外堀をきっちり埋めた上で、「安倍さん、そこで笑ってる場合じゃないですよ」と。「あなた自身の問題なんですよ」と詰めていくという、非常によく準備された質問だと思いますね。

※4 のちに山本編集長に確認したところによれば、ここで「国対」と表現したものは、より正確に言えば「事務局」だということだった。

●上西 そうですね。この30分の質疑の中で、それが全部やられるっていうのがまたこう、だんだんこう局面が変わっていく面白さっていうのがあって、この時点では萩生田大臣は「のべつ幕なし呼べる仕組みになっておりません」というような、あたかも否定しているようでいて、誰でも呼べるわけじゃないう、そういうのは当たり前だっていうような言い方をしていて、かつ、「お招きしたというのはちょっと僣越な」と、自分が招いたわけじゃないみたいな言い方をしているわけだけれども、それに対する反証として、「いや、安倍事務所が招いてましたよね」っていう話に、ここからいくわけですね。
で、今度、安倍事務所の話に行きます。安倍事務所が後援会の方々を、えっと、ごめんなさい、その前かな。

●山本 自民党なんかが、(招待枠を)割り振っているんじゃないかと。

●上西 そうですね。後援会の方々に割り振っているんじゃないかっていうことを問うた場面。安倍首相が、まず答える場面ですね。まずそこを、ご覧ください。

*************
2019年11月8日 参議院予算委員会

●田村智子議員 その常任幹事会って何ですか。常任幹事会って何の団体の常任幹事なんですか。
●萩生田光一文部科学大臣 2014年の常任幹事会というのは、後援会の中の常任幹事の方ということだと思います。
●田村議員 そうなんですよ、後援会なんですよ。
総理、つまり、自民党の閣僚や議員の皆さんは、後援会、支援者の招待枠、これ自民党の中で割り振っているということじゃないんですか。これ、総理でなきゃ答えられない。総理、お答えください。総理でなきゃ答えられない、総理でなきゃ答えられないですよ。
●安倍晋三首相 いや、今説明しますから。
桜を見る会については、各界において功績、功労のあった方々を各省庁からの意見等を踏まえ幅広く招待をしております。招待者については、内閣官房及び内閣府において最終的に取りまとめをしているものと承知をしております。私は、主催者としての挨拶や招待者の接遇は行うのでありますが、招待者の取りまとめ等には関与していないわけであります。  
その上で、個々の招待者については、招待されたかどうかを含めて個人に関する情報であるため従来から回答を差し控えさせているものと承知をしておりますが、詳細についてはですね、詳細については政府参考人に答弁させます。
*************

●上西 今のところで、割り振ってんじゃないかっていうふうに言われた時に、安倍首相は、「招待者の取りまとめ等には関与していない」んだというふうに言ったと。これが、その直後に、反証が出てくるということですよね。
だから、反証になるものを出す前に、そういう答弁を、言質を取ったと

●山本 そうですね。

●上西 言質をとったうえで、反証を示していくという形になります
で、じゃあここで、山本編集長に詳しくお話を聞こうかなと思うんですけれども、まあこの5月の段階で、虎ノ門ニュースの方々とかっていうので、選考基準が不明だというところから、後援会に注目をしたっていうのはすごくいい着眼点だったと思うんですけれども、なぜ国会議員が招いているとか、後援会関係者の方のブログに注目されたんですか

●山本 宮本議員の質問の時に、要するに参加者だとか予算の3倍に経費が増えてという問題が出たんですけどその答えが「結果的に増えた」というだけで、中身がわかんないんですよね。

●上西 「お答えを差し控える」と。

●山本 それで、財務大臣もそれについて苦笑いするんだけで何も言わないと。で、「これおかしいぞ」と思ってたら、9月末に、今年ですよね、2020年度の概算要求が出たんですけど、それが予算の3倍使ったって言われたんで、概算要求で予算を3倍にあげたんですよね

●上西 実態に合わせた。

●山本 実態に合わせたで、「ますますこれはおかしいな」ということで、この問題をちょっと本格的に調べようと
で、なんで結果としてこんなに増えたのかって言って、いろいろ自民党の関係者とかに聞いたら、どうも自民党議員の枠があるというのがわかってきまして、それでその中で、「あ、本当に枠があるのか」と。まぁ、何人か取材したら、どうも枠があると。
それで、私なんかは古典的な記者なんで、自民党関係者に聞いてるんですけれど、チームも結構、若い記者で、インターネットなんかに強い記者がいて、「どうも自民党、枠があるようだよ」と言ったら、ただちにブログとかフェイスブックとかを調べはじめるんです
そうすると、皆さんが、「行ったよ」とか、萩生田さんみたいに「僭越ながら」と言いながら「お招きした」とか。要するにみんな、どうもこれは、悪いことじゃないと思っているのか、結構、正直に書いているんです。それが、若い記者なんかが調べたので、どんどん集まってきて、「あ、これはどうも自民党が、組織的に枠を作ってやってるんだ」ということがわかったんですよね。
だから、そこから見えてきたのは、どうも自民党が、税金でやっている公的行事のはずの「桜を見る会」を、どうも後援会員を行かせるという、私物化をしているという実態が見えてきました
で、こういう私物化ってのは、森友とか加計と同じような構図なんですけど、違うのは、要するに森友とか加計っていうのはやっぱり、秘密を知ってる人っていうのはごく少数なんですよ。でも「桜を見る会」は、結構みんな行ってるから、それでみんな、ブログとかに書いている。だから、関係者が多数いるっていうのが、圧倒的に森友・加計と違う点なのかなというふうに思ってます。

●上西 関係者が多数いるのと、悪いと思っていない。

●山本 そうですね。

●上西 やっぱり森友・加計なんかだと、もともと関係者は隠さなきゃいけないと思っているだろうし、だから証拠が表に出てこないけれども、この場合はブログという形で、探せば出てくるものだったということですよね。

●山本 そうなんですよ。

●上西 で、今、自民党の関係の方にお伺いしたとか、ネットで調べたという話があって、やっぱりそれができる部隊があったというか、人手があったというか。
国会の中で、あるいは国会の前に、議員(に対する)レク、議員が省庁の人に説明を求めるレクとかだと、当然、向こうは隠しますよね。
だから国会議員として資料請求をしても出てこないものが、記者が取材をする中で掘り起こしてきたと。

●山本 そうですね。ある意味じゃ、ウチは、記者クラブに加盟してないというか、入れててもらってないこともあって、もう取材は、自分達でやるしかないんですね。
だからこういうのがあっても当然、内閣府とかにも聞きますけど、基本的には、外に向かって取材をしていくしかないんですね。
そういう意味で、まあ、いつもそうなんですけど、今回の場合も「じゃあちょっと調べてみよう」っていうんで、自民党関係者…。

●上西 自民党の人も答えてくれるんですか?

●山本 自民党の人も、まあ、いろんな繋がりなんかで、まあまあ話してくれる方もいますよね。

●上西 なるほど。で、ネットをちゃんと発掘できる若い人たちがいたっていうのも強みですよね。

●山本 そうですね。そこはもう、ちょっと私なんか、なかなか難しいんですけど、やっぱりそういう、なんていうのかな、ある意味じゃ、いろんなこういう取材の手法っていうのが、今はやっぱり、使わなくちゃいけないなぁと思って。
そういうブログだとかフェイスブックで、そういうのを発見して、しかも、また後で出てくるかもしれないですけど、安倍昭恵さんの枠みたいなのもあったんです。これなんかも、フェイスブックをたどってやるとか、本当にそれはもう、ちょっと私は、なかなか説明はできないんですけど、そういう手法で積み重ねをやっていってますね。

●上西 で、取材はいつ頃の時期にそういうことをされたんですか。

●山本 それはだいたい、10月のこれが、だいたい(概算要求のあった)9月末の、2週間ぐらいやってきたんですけれど。
実ある自民党の議員のところに取材に行きましたら、「たしかに自分とこもね、行ってるよ」と。ただ、「自分のところなんか、まあ何人かだ」と。「安倍さんなんかは、前夜祭までやってんだよ。知ってんだろ?」って言われて、こっちは全然知らないわけですよ。
「えっ? そんなことやってんですか」と
。「いやいや、すごいよ」と。「何百人って呼んでやってんだよ」と言うんで、「えっ、そうなんですか」っていうんで、「あ、そうか」と。「安倍さんは、そんなに呼んでるのか」っていうのに気付いて
それで「いや、そんなことは誰でも知ってるよ」って言うんです。確かに…。

●上西 大手紙の記者なんかはね、当然、知っているわけですよね

●山本 そうです。知ってるし、なんでかっていうと、首相動静っていうのがあるじゃないですか。毎日、安倍首相がどうしましたかと。そうすると今年についても、安倍晋三後援会主催の「桜を見る会」前夜祭がありましたよ、と。で、首相が出ましたよ、とか、あるいは「桜を見る会」の当日に首相が行って…。

●上西 後援会の方々とね。

●山本 ええ。写真を撮って。そういうのは、きちんと載ってるわけですよ。
で、私たちは残念ながら招待されてないんで、知らなかったんですが、「あ、こんなこと、やってんだ」と。で、過去のものを見たら、全部、載ってるんですよ
それで、「あ、どうも、自民党枠もあるんだけど、安倍首相がそもそもなんだと。自分が私物化してんじゃないか」ということで安倍首相の私物化として、これは取材をやろうというふうに決めて、取材をやり始めたんですね。

●上西 その辺の経緯もすごい面白いなと思って。大手記者の方々は、前夜祭も知ってたし、後援会の方がもう、大挙してやってきて、その方々が「桜を見る会」で記念撮影をしてるってのも知ってたんだけれども、そこに問題意識がなかった

●山本 そうですね。まぁ問題意識はあった方も当然いると思うんですけど、なかなかそれをこう、きちんと文字にして発表するというところまで、まあ多分それは、上の方とかが、「まぁ、こんな安倍首相なんだから当たり前じゃないか」と言われたのかもしれないし、やっぱりそこが安倍さんの一つの私物化っていうね、手法に関わる重大問題だというところの見方とか、まあ感覚だと思うんですよね。

●上西 「しんぶん赤旗」としては、そういうことを知らなかったからこそ、「え? そんなことやってるの?」っていう問題意識がそこに立ったっていうことかなと思いますね。

●山本 だと思いますね。

●上西 で、いよいよ Part4ですね。
安倍首相が、「私は取りまとめには関与していない」というふうに言ったんですけれども、「いや、安倍事務所が参加案内、出してますよね」っていう話が11月8日の質疑の後半の方に行きます。
で、田村智子議員ですね。後援会の、これですね、安倍晋三事務所から、「桜を見る会」のご案内というのが、2月に来ていると。内閣府からの案内は3月に届くんですよね。それより前の2月の段階で、「桜を見る会」が開催されますのでご出席を希望される方は2月20日までに別紙申込書に、と。
で、その別紙申込書が、希望者が多い場合はコピーをしてご利用くださいなんてことも書いてあるので、いやこれはもう、功績・功労っていうんじゃないっていうのが、まあ物証として明らかになる。これをもとに田村議員が質疑をする場面というのが…。

●山本 この時にはまだ、そこまで入手できてなくて、私たちが後援会員なんかを取材して、証言ベースで(質疑に臨んだ)。で、そのあとに、それは入手できたんですけれども。

●上西 じゃあ、証言ベースで、でも安倍事務所所から招待の案内が来てますよね、という話のところを、じゃあ見ていただきます。

*************
2019年11月8日 参議院予算委員会

●田村智子議員 いや、本当に検証ができない状態なんですよね。私も、友田県議とか下関の後援会の人が何で招待されるんだろうかと。だって、内閣府が発送しているので。  
我が党のしんぶん赤旗、現地取材をしました。下関市の後援会員の男性は、今年の桜を見る会についてこうお話ししているんです。2月頃、下関市の安倍事務所から、桜を見る会に行きませんかと案内が来た、名前や住所などの必要事項を紙に書いて安倍事務所に送り返すと、内閣府から桜を見る会の招待状が届いた、安倍政権になってから毎年参加している、下関からは毎年数百人が上京すると。  
案内状というのは、発送は内閣府が一括して行い、必ず招待者一人一人に宛てて送付をする。これ以外の発送ルートはありません。総理、安倍事務所が取りまとめをしなければ、下関市の後援会員の名前や住所がどうして分かるんでしょうか。これ、もし内閣府が独自に知っていたということになると、これ更に大問題だと思うんですけれども、総理、いかがですか。
●大塚幸寛内閣府大臣官房長 お尋ねの招待状につきましては、まさしくその各府省等を通じて元々御推薦をいただいておりますし、その各府省等を通じて発送いただくなど、できるだけ最も効率的と考えられる方法で招待者のお手元に届くように毎回しているところでございます。
●田村議員 そんなことを聞いているんじゃないんですよ。その下関市の後援会の人たちの名前を、それじゃ、内閣府もうお答えいただくというんだったら、それどうやって確認したんですか。どうして分かったんですか。各府省の取りまとめなんでしょう。どの府省が下関の安倍さん関係の後援会の人の名前と住所を押さえることができるということなんですか。
●大塚内閣府大臣官房長 その具体的な各推薦者の最終的な取りまとめの検討に、過程に係る情報につきましては、これを明らかにすることは内閣官房、内閣府におけます円滑な取りまとめに支障を及ぼすおそれがあると考えてございまして、ただいまのお尋ねにつきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと考えております。
●田村議員 これ、私たちは、総理、お答えくださいよ、安倍事務所に申し込んだら内閣府から招待状が来たという証言をこれ複数の方から得ているんですよ、得ているんですよ。それ以外に発送するすべはないんですよ。  
そうじゃないというんだったら、これ、ちゃんと安倍事務所に確認してくださいよ、地元事務所に、総理。
●安倍晋三首相 これは、先ほど赤旗の取材に私の後援者が答えたということは、私も寡聞にして存じ上げないんですが。  
そこで、今、もう既に申し上げておりますように、個別の方については、招待されたかを含め個人に関する情報であるため回答を差し控えさせているというのが従来からの政府の立場でございます。
*************

●上西 ということで、安倍事務所に申し込んでるから招待状が来るんだと。功績・功労で各府省が推薦してるんじゃない人たちが来てるってことを、ここで問うたわけなんですけれども、「赤旗の取材に私の後援者が答えたということは私も寡聞にしてして存じ上げないんですが」と。
でも、実際、聞いて取材したわけですよね。

●山本 そうですね。

●上西 それは、向こうは、警戒心を持ったりとかしないんでしょうか。

●山本 まあ、安倍後援会の方も自民党のほかの先生と同じように、ブログなんか行ったっていうことを書いていて、まあ基本的には「あー、なるほど」という確証ができたんですけど、やっぱり同時に、まあやっぱり一国の総理を、疑惑を追及するには、証言も取らないとダメなんで、だいたい複数、延べ4、5人の記者で2週間くらい、地元に入りまして、やっぱりなかなか、総理の地元なんで、赤旗の記者が行って、すぐに「そうですよ」というふうに答えるわけでもなく、なかなか最初は大変でした。
ただ、やっぱり、地元山口にも共産党の市議さんだとか県議さんとかいう方もおられまして、やっぱりそういう方っていうのは、安倍さんの後援会なんかにも、いろんな繋がりなんかもあったんですよね。

●上西 地域のなかでの、ね。

●山本 そうですね。そういう方の力もありまして、重い口がなかなかいままで、我々だけじゃ難しかったのが、じゃべる方も出てくるようになって、同時に、記事にも書いたんですけど、皆さん、後援会行事だって思っている人も、いっぱいいたんです。

●上西 お金も払っているしね。旅行代金を払っているので。

●山本 でまあ、最初の関門がちょっと取れると、「いやいや、行ったわよ」「毎年、私、行ってるわよ」「ちゃんとお金も払ってるし、後援会の行事で楽しいわよ」というふうに、結構、話してくれるような方も出てきまして。
そういう意味でいうと、前も言いましたけれど、関係者が圧倒的に、安倍さんとこで言うと、800人近くが、毎年行っているわけだから、行ったことある人は、山ほどいるんですね。
あとやっぱり、それぞれが、悪いと思ってないんで、結構、しゃべってくれるという中で、いろんな証言が取れて、それが田村さんの質疑に結び付いた

●上西 で、そうやって証言が取れているっているのがわかってくると、もう功績・功労ということは言えなくなって、「個人に関する状況であるため」っていうふうになってくる。
で、それが証言と照らし合わせてみると、無理な答弁だなぁ、と。もう、説明できなくなってきてるから、そういう言い方をしてるんだなっていうことが、まあわかってくるわけです。
で、先ほどのこの案内状ですね、これはまだその時には、手に入ってなかったという話でしたけれども。

●山本 証言の中で、安倍事務所から参加の問い合わせがあって、それで、安倍事務所に申し込むことによって、後から内閣が送られてくるというのを、最初、聞いた時はですね、「えっ、そんなことがあるのか」と
一応、内閣府主催の行事じゃないですか。その参加申し込みの窓口が安倍事務所になっているっていうのは、にわかにちょっと信じられなくて、「いやいや、もうちょとそれは、取材して、一人だけじゃダメだ」と言って、何人も取材をしていって、それが、異口同音に皆さん、そう言うんですね。で、それは絶対にペーパーが残っているはずだからと、それも探したんですけれど、残念ながら、皆さん、ファックスとかで事務所に送るんですよね。だから「自分の手元にはない」というふうに言われていて、それで、ペーパーまでは手に入らなかったんだけれど、どうも間違いなく窓口は安倍事務所になっている。
ということで、「あ、これはちょっと、すごいことになってきたぞ」ということがわかってきて。
しかもそれが、後援会旅行っていうことで、例えば、行くのは宇部の空港から、飛行機でみんなで行って、降りると貸し切りバスで、それで都内のいろんなツアーをやって、で、その 夜は前夜祭と。次の日は、ホテル前からバスで10何台で行く、という全体の構造がわかってきたんで、「なんだ」と、これは。後援会旅行の目玉が、「桜を見る会」だという

●上西 そうですね。田村議員も言ってましたね。

●山本 そのへんがわかってきました。まあ、非常に驚きましたよね、実際は。

●上西 で、先ほどもみましたこの申込書の中には、「ご出席を希望される方は、2月20日までに別紙申込書に必要事項をご記入の上、安倍事務所または担当秘書までご連絡くださいますよう」と。
だから窓口が安倍事務所だと明記されていて、参加される方がご家族等々の場合は別途用紙で、と。「コピーしてご利用ください」というような形で、まあ、幅広く招待がされていたということが、ここで資料として、わかるわけです。
で、それで、今、ある程度、こうお話を聞きましたけれども、だんだんこう物証が出てくると、ブログがどんどん削除されたり、予算委員会でね、田村議員の質疑があって、ブログが削除されたり、現地の人に「何も言うな」と緘口令が敷かれたりというようなことがあったというふうに聞きますけれども。

●山本 そうなんですけれども、実はそれはですね、ウチの新聞が出てすぐは、あんまり官邸だとかいうのは、危機感を持ってなかったんですね

●上西 10月13日の段階では。

●山本 そうです。なんでかってというと、そのあと、いろんな人に、「ぜひ一緒にやろうよ」って私も言ったんですけれど、なかなか大手紙も乗ってこなくて、どこも取り上げない

●上西 ほかの新聞が。だから、そのへんが不思議というか、ある社が取り上げたものを、他の社が後追いをするのってなんか、やっちゃいけないっていうか。やるもんじゃないっていうような雰囲気がありますよね。

●山本 まあでも、そんなこともなくて、今は結構、非常に大事な問題だったら、私たちもやるし、他の新聞もやるんですけれども、今回はね、私たちはそれなりにこう、苦労して、それなりに渾身のスクープとして出したんですけれど、全く相手にされず、非常にがっくりきましてですね
だから官邸なんかも、あんまり各紙もやんないからと、あんまり危機感がなかったんですよね

●上西 なるほど。

●山本 それで、田村議員がやって、緊張感はちょっと出たんですけど、その時でも多分、官邸はそんなに緊張感はなくて
それを見た、ツイッターなんかで、いろんな市民の方たちが、声を出して、そこで大手紙が動いていって、そっから本格的な緊張感があって、そこからいろんな、緘口令が敷かれたりとかいうふうに、ちょっと変わってきて、そういう意味では、ちょっと今までとは違う流れでしたね

●上西 なるほどね。先ほどの経緯を見ると、田村議員の質疑が、金曜日だったんですね。

「桜を見る会」問題の広がりはどのように?
11月8日(金)  日本共産党が田村議員の質疑をYouTubeで公開
         TBSテレビ「news23」が報じる
11月9日(土)  立憲・枝野代表がツイートで評価
         毎日新聞デジタル記事が詳報
           (統合デジタル取材センターの記事)
11月11日(月) 「総理主催『桜を見る会』追及チーム」発足
11月12日(火) ワイドショーで話題に
11月13日(水) 大手紙が大きく報じ始める

●山本 そうですね。

●上西 金曜日に質疑があって、土曜日に毎日新聞の(デジタルの)記事があって、で、月曜日に追及チーム、これ、野党の合同の追及チームが発足をして、ここから野党合同のヒアリングが始まる。

●山本 そうですね。そのあとから。

●上西 で、野党合同ヒアリングが始まっていくと「あ、これは野党全体として本格的に追及するテーマなんだな」ってことが、記者の方にも認知をされて、で、ワードショーとか、大手紙が追随をしていったと

●山本 そうですね。そういう流れですね。

●上西 なるほど。

●山本 だから、そこになって初めて、官邸も危機感を持って、安倍さんが(11月15日の)囲み取材(※5)を受けて話したりとか、そのあとは、官邸(記者)クラブの記者(キャップ)を呼んで、食事会(11月20日)を急にやろうと言い出したり(※6)とか、そこで初めて、いろんな危機感が出てくるんです

※5 「安倍首相、異例の「ぶら下がり」記者対応、2回目は質疑30問超す 内閣改造時でも4問程度」(2019年11月15日、毎日新聞デジタル)

※6「首相動静(11月20日)」(2019年11月20日、時事ドットコムニュース)
マスコミ幹部、首相と会食 政治私物化報道のさなか」(2019年11月23日、しんぶん赤旗電子版)
なお、この内閣記者会加盟報道各社のキャップとの懇談(会食)に、毎日新聞は参加しなかった。

●上西 なるほど。今日(1月6日)の(安倍首相の)記者会見(※7)も、「桜を見る会」の話が出たら、いきなりなんか、表情が硬くなってましたよね、安倍首相がね。

※7 「令和2年1月6日 安倍内閣総理大臣年頭記者会見」(首相官邸ホームページ)

●上西 で、大手新聞がすぐには乗ってこなかったという話ですけれども、田村議員の質疑の後で、他の野党は乗ってきたんですか

●山本 そうですね。一番最初にご紹介していただいた枝野さんなんかを含めて、野党の議員は、「非常にこれは重大だ」っていうんで、すぐに、「じゃあ野党で共同で(追及チームを)作ろう」となってきまして
たぶん、例えば昔だと、ロッキード事件とかあったんですけど、そういう野党が共同でチームを作って追及するっていうのは、たぶん(これが)初めてじゃないかと。

●上西 そうか、野党合同ヒアリングでこれまでもやってるけど、そういうのと今回の追及チームては、違う?

●山本 違いますね。

●上西 一段、レベルアップして?

●山本 そうですね。きちんと追及チーム作って、で、今は本部に格上げになってますけど、例えば、それぞれ、ホテル担当だとか…。

●上西 名簿班とか、前夜祭班とか。

●山本 そうですね。それぞれ、(チームを)作って。しかも、そこでは、情報は基本的には全部共有をしたりして

●上西 他党とも、ね

●山本 ええ。だから、例えば日曜版なんかも、資料として皆に配布をして、私たちの取材の結果で必要なものは、問い合わせればきちんと答えるということで、結構、情報も共有してるんですよね。

●上西 なるほど。

●山本 それで、国会質問なんかでも、面白かったんですけれども、そのあとの質問なんかでは、「野党共同チームの田村です」とかという言い方で質問をしたりとかいうことで、これは非常に連携が深まったものだと思ってます。

●上西 で、改めて、この「桜を見る会」というのは、どんな問題なのかっていうのを、日曜版編集長としては、どういうふうに見ていらっしゃいますか。

●山本 やっぱり「桜を見る会」の問題っていうのは、よく「桜ばっかり、やっている」というふうに言っている一部メディアだとか記者の方もいるんですけど、この問題は、言ったら一国の総理っていう為政者が、税金を使ってですね、有権者を買収する、しかも証拠となるような名簿、これを破棄しちゃう、という
で、その中では、公選法だとか政治資金規正法だとか、様々な違法の疑いも出てきているということで、やっぱり民主主義に関わる非常に重大な問題で、こんなことを許してたら、もう法治国家の根幹が崩れちゃう問題だというふうに。
で、あの多分、今日なんかの安倍さんの会見を見ても、まあまあ安倍さんは、まあ前に、「正月過ぎて、餅食ったら忘れだろう」っていうふうに、たぶん国民は、まあ忘れるだろうって思ってると思う。
ただ、やっぱり、その安倍さんをこう、倒すぐらいのしつこさで、追及していく必要があるんじゃないかなと思ってるんですね。

●上西 で、そう言って追及していったことによって、「いや、もう名簿ありません」って言ってたけれども11月20日に参議院本会議で「私自身も事務所から相談を受ければ、推薦者について、意見を言うこともあった」と。まあ、物証がある以上、認めた方がいいだろうという部分もあったのかもしれ知れません。
で、同じ日には菅官房長官が、首相枠が1000人、等々と。自民党関係者6000人とかっていうのを、出したわけなんですけれども、同じ日に安倍首相が内閣記者会加盟報道各社のキャップと懇談していると。
これは、「もう、いいでしょう?」みたいなことをしゃべってるんでしょうかね。

11月20日衆議院内閣委員会 菅官房長官 15,000人の内訳
    首相推薦             約1,000人
    副総理、官房長官などの推薦    約1,000人
    自民党関係者の推薦        約6,000人
    公明党関係者や元国会議員など     約1,000人
    各省庁推薦の功労者など             約6,000人
※ 同日、安倍首相は内閣記者会加盟報道各社のキャップと懇談(毎日新聞は欠席)

●山本 あの(懇談は)2回やって、一番最初の時は、囲み取材をやって、前夜祭のホテル問題を結構やったんですけれど、それで批判を受けたんで、結構、後から聞くとその説明をしたようですね。で、これは確か毎日新聞さんだけが、参加しなかった。
でまあ、安倍さんなんかはやっぱり、大手メディアさえなんとか納得させればという気持ちだったと思うんですよね。
ところが、それでなかなかうまくいかないっていうんで、年末にもう1回、(12月17日に、報道各社の首相番記者を対象とした懇親会を)やって(※8)、その時は東京新聞さんと毎日新聞さんが(不参加)。

※8 「首相動静」(2019年12月17日、時事ドットコム)
安倍首相とメディア幹部・記者会食「桜」疑惑の最中に急増「共犯者に」の声も」(2019年12月30日、しんぶん赤旗)

●上西 番記者とね。

●山本 そうですね。その時も、やっぱり、そこをなんとかすれば、乗り切れると思ったんだと思うんですよね。

●上西 でも、ここでこう、首相枠は1000人って言っているけれども、首相は多分60番で、受付票でいう、で、60番は実は3000何番とか4000何番とかがあるっていうのも、まあ、資料を発掘していくと出てきたわけですよね。

●山本 そうですね。

●上西 で、これも、ちょっと重複する部分もあるかもしれませんが改めてお伺いしてもいいですか。
大手メディアはなんで、「桜を見る会」を取材をしていたのに、こう本質的な問いを立てられなかったのかと。「こんなことやってていいんですか」っていう問いは立ってなかったんでしょうか

●山本 前、田中角栄元首相の金脈問題が出たときに、この問題も結構、私たちの先輩の赤旗記者とか、あと週刊誌なんかが結構、発掘して問題になったんですけど、その時に、特に政治部の記者なんですけど、大手紙の、「まあ、こんなことはもう知ってるよ」と。「角栄さんが、金に汚いことは」って言ったんですけど、やっぱりそういう感覚っていうのは、まだ残ってるのかなと。
たぶん、安倍さんなんかについても、「安倍さんがそれって私物化しているのはまぁ知っているよ」と、まあそりゃ、皆さん前夜祭だとか、あるいは「桜を見る会」じしんも行っているので、ただやっぱりそこで、その私物化っていうのが、安倍政権の手法のひとつの本質、森友・加計、これだけじゃなくて、例えば憲法なんかを見ても、歴代自民党政権でさえ集団的自衛権は行使できないと言っていたのを、閣議決定だけで、それができるようにすると。
まぁ、これはある意味で言うと、憲法の私物化ですから、やっぱり私物化っていうのが、安倍政権のひとつの本質だっていうのところを、きちんと見抜くかどうかってのは、非常に大きいんじゃないかというふうに思います。

●上西 そう。だから、政治部の記者は「もう、そんなの知ってるよ」かもしれないけれども、国民は知ってて納得して支持しているわけではないんですよね。安倍政権を、ね。
だから、そこを改めて掘り起こしてみて、「それでも支持するのか」っていうふうになると、そこは変わってくると思うんですよね。

●山本 だから、言われたように、田村さんの質問があるときに、twitter で非常に話題になった。そこはある意味じゃ、本当に国民っていうのは健全っていうか、やっぱりそれが逆に今、こうマスコミを動かしているということは、非常にこう、希望があることじゃあないかなというふうに思ってます。

●上西 だから、森友とかなんかでも、同じ構図だっていうふうに言われるかもしれないんだけども、やっぱり森友とか加計とか、複雑じゃないですか。で、証拠も出てこないから、どっちの言い分が本当か分からないんだけれども、それがこれは、構造が簡単で、「ああ、これはごまかしているな」っていうのがわかるっていうのが、この質疑のいいところだったなと思うんですね。

●山本 あと、これから先生がやられるジャパンライフ(への招待状問題)。これはもう、被害者がいるっていうのが全然、森友・加計とも(違う)。広範な被害者がいる

●上西 これは前から問題になってたものなんですね。大門議員なんかが国会で(取り上げていて)。

●山本 そうですね、はい。

●上西 で、改めてそれが、「桜を見る会」との関係でもっとクローズアップされたと。

●山本 そうですね。

●上西 2015年の招待状でジャパンライフの代表取締役会長・山口さんに、60番の受付票で、「安倍総理から、ご招待が来ました」というので、じゃあ本当にご招待したんですかっていうのを問うていると、そもそも名簿がなくて、個人情報でというふうに、とにかく何も答えない、というのが、そのあとの経緯でありました。
そこのところは質疑は用意をしないんですけれども、こういうのですね、60番の招待状が来ましたと。
で、もう名簿は破棄してるって言うけれども、国立公文書館に12月24日に宮本議員が行って、これは何年のだったかな。

●山本 小泉内閣ですね。

●上西 平成17年、「桜を見る会」、平成17年のものを、名簿というか、一覧表ですね、一覧表を発掘してきた、と。


●上西 こういうのも、またジャパンライフについても、こういうのを探すのは、みんなで探す、みたいなことをしているんですか。

●山本 そうですね、もともとは、言われたように、大門議員が質問をした関係でその後、田村議員が国会でこの問題を取り上げて、それでその後、私どもも、この問題を。
まあ、今回の「桜を見る会」の問題が、モリカケと違う一つの理由というのは、関係者が多数いるっていうことなんですけれど、同時に、それによる被害者が、いるっていうこと。

●上西 そう。単に後援会優遇ではなくて。

●山本 そうですね。それで、特にこのジャパンライフの問題なんかは、このジャパンライフが非常に問題だということが明らかになってきて、会社自身も非常に行き詰まった。

●上西 当時、この招待状の時点で、わかってたんですよね。そういうことはね。

●山本 だから、ある意味で言うと、「最後の荒稼ぎ」をする材料に、この首相の招待状っていうのが使われて、多くの方はそういう招待状を見ると、「あ、そうやって総理主催の『桜を見る会』にも呼ばれるような立派な人なのかな」というふうに思いますから、そういう役割を果たしたっていう意味では、非常にやっぱり重大だというふうに思いますね。

●上西 この、「国立公文書館に行ったら名簿があるぞ」みたいなことっていうのは、誰がわかったんでしょうね。

●山本 それはわかんないんですけれど、たぶん、秘書だとか、あとまあ宮本さん自身もいろいろ調べるのがね、非常に好きなんで、やっぱり、いろいろ考えてやったんだろうと。
あの私どもも実は60番なんかに結構こだわって、私どもは記事でやったのは、ちょうど安倍政権の一番最初の、第1次安倍政権の時に行った方がおられて、それも60番だったんですね。
で宮本さんのやつは、たぶん小泉政権の時なんですけど、だから、ある意味じゃあ小泉政権から、少なくとも安倍政権の第一次、第二次は、60番というのは首相枠。
まあ首相の後援者だとか、あるいは安倍昭恵さんの友達なんかの人も、これも一生懸命、皆さんこう、なんですか、喜んでネットとかあげるわけですよ。招待状が来ましたよ、と。それも私たちの若い記者なんかが調べたら、少なくとも15以上、60番になってるんです。
だから、外形的な事実から見ると、まあ60っていうのは首相枠だっていうのは、ほぼ明白じゃないかなと思ってるんですけど。

●上西 で、大門議員の質疑のなかでは、消費者庁の中の職員が、内部告発文書として内部文書が出てきて、立ち入り検査をどうするか、というので、「要回収」の文書の中で、「本件の特異性」があって、「政治的背景による余波懸念」で、と。(検査に)入ろうか、入るまいか、みたいなことがあったっていうのが出てきていますけれども、それを結局、上の人が止めたっていうのが、被害を拡大させる。「そんなことでいいのか」っていうふうに思う職員が、そういう文書を世に問うた、というようなことと理解していいですかね。

●山本 そうですね。それで、ここでも非常に「桜を見る会」とも関連するんですけど、今、言われたように「政治的背景による余波懸念」っていうがあるんですけれど、これは非常に大事なところで、実は山口会長っていうのは、実は政界とのつながりが非常に深かったんですよね。

●上西 天下りもしていますよね。官僚の方もね。

●山本 天下りもしていますし、政治家との関係も深くて、私どもの記事でも書いたし、ほかも書いているんですけれど、安倍さんのお父さんの晋太郎さんが外務大臣。この時代に、安倍さんはちょうど、外務大臣秘書官なんですよね。で、ちょうど、アメリカに、国連かなんかの関係で、アメリカに行くことがあって、そのときにこの、ジャパンライフの山口さんも一緒に行ってるんですよ。だからもう、その時からのつながりなんでね
よく、総理が外遊する時に、経済使節団って、いろいろ企業の人が来るじゃないですか、その一員に、いたんですよね。
そのぐらい、もう政界との関係っていうのは、その当時からもあったんで、まあ、ある意味じゃ、それを知るとですね、「桜を見る会」に安倍さんが呼んだっていうのも、「ああ、なんとなくわかるな」って言う。単にこう、誰かが間違えてやったんだとかいうんじゃなく、やっぱりもう、かなり古くからの関係があったんだなっていうのがよくわかりますね。

●上西 そういうのを見てくると、やっぱりこう、政治にはそういう闇があるんだなという感じがしてきます。

●山本 そうですね。

●上西 で、ここでちょっと「桜を見る会」の質疑から離れて、もう少し大きな話になるんですけれども、今回の「桜を見る会」の質疑は、田村議員が「しんぶん赤旗」の特集が集めたものを元に、質疑を組み立てたということなんですけれども、国会議員の質疑が、野党の議員の質疑も聞いていると、非常に深く調べて組み立てられてるなって思うときと、そうでもないなと思うときがやっぱりあって、それはそれぞれの議員の準備の力にもよるんだろうけれども、その個人、一人ではなくて、国家議員一人ではなくて、その国会議員の情報収集がいろんな人に支えられてるんだと思うんですよね。
で、それはどんな人がいるんでしょうっていうので、まぁ思いつくことをいくつか書いてみたんですけれども。

国会議員の質疑を支える情報収集
(1)議員による官僚への資料請求やレク(説明)要求
(2)野党合同ヒアリング
(3)国会図書館調査員
(4)委員会調査室調査員
(5)議員による現地調査などの独自調査
(6)秘書
(7)地方議員
(8)関係者、労働団体、専門家
(9)しんぶん赤旗
(10)その他

●上西 一つは、事前にレクを要求しますよね。あるいは資料請求をすると。で、レクをして(受けて)いく中で、「このへんが大事なポイントだな」みたいに掴みとっていくようなこともあるし、かつ、国会の質疑で足りない部分、あるいは国会質疑に備える部分は、野党合同ヒアリングなんかで、今でいうと追及本部ですけれども、そこが官僚の方とやり取りをすると。
それから、国会の図書館の調査員の方々がいらして、「じゃあ、これに関してのこれまでの質疑を調べて」とか、「新聞記事を調べて」とか、「こういう調査はあるか」とかっていうふうに言うと、まあ揃えてくれますよね。
で、各委員会にも、厚生労働委員会の調査室とか専門の調査員の方がいらして、その方は与党・野党を問わず、国会議員の方の調査要求に答えるようなことをされている。
で、5番目のところが議員自身が独自調査をする。先ほどの宮本議員が公文書館に行ったりとか、あるいはの山口県に現地調査に行ったりとかいうのもあるし、秘書の方とか地方議員の方とか。
で、「関係者、労働団体、専門家」と書きましたけれども、まあ陳情なんていうのもありますであるでしょうし、労働団体も独自に政策を追ったり、政策形成してるでしょうし、学者との連携もあるでしょうし。
で、そこにプラスして、共産党の場合は、機関紙である「しんぶん赤旗」と日曜版があると。
この辺の厚みがやっぱり、党によってすごく違うなあという気がするんですよ。
先ほどの市議さんね、現地の市議さんが情報をつなぐような役割をしてくれたとかっていうのも、やっぱり地方議員の厚みがある党と、そうじゃない党っていうのもありますしね。
で、「その他」と一応書いておいたんですけど、何か他に思いつくところってありますか。

●山本 後は、内部告発なんかも、結構共産党の議員には寄せられるケースも結構ありまして、これまでもいろんな防衛省がらみのことなんかも、結構やってますね。
やっぱり、一つはまあ、そういうことを委ねて安心…。

●上西 自分の身を守りつつ…。

●山本 そうですね。守りつつ、きちんとやってくれると。で、しかも、きちんとそれを握りつぶさないと。しかもちゃんと角度がわかって、鋭くやってくれるという、多分、信頼だと思うんですけど、やっぱりそれは、赤旗なんかも、結構、内部告発っていうのは寄せられます。

●上西 なるほど。こう、ざっとあげましたけれども、このへんが特に重要とかっていうのはありますか。

●山本 国会の質問っていうのは、いま言われたように、特に共産党の場合は、1人の議員の力だけって言うよりも、当然その議員の力もそうですけど、いろんな秘書だとか、今挙げたような方の土台をもとに、やっているというのが一つの特徴
あとはやっぱり、国会質問をする際に、よーく準備をするっていうことはどういうことかというと、相手が必ず、まあ、こう言ったらこう反論してくるっていうのが、やっぱりこう、きちんとレクとか聞いてるとわかるんですよね。
だから、それを覆す材料を持って、質問する。よく、質問じしんを準備しないと、なかなかいい材料があっても、なかなかうまくいかない、その辺が非常に大事なのかと。
そのへんの知恵も、やっぱり今回の田村さんの質問なんかも、材料なんかは私たちもあれ(提供)しましたけど、よく秘書だとか国対とよく相談して、質問の組み立てをよく考えてられるなっていうのは、私たちから見ても思いますね。

●上西 そう。質問の組み立ても良かったし、あと一つ一つ、これはこんなふうに大事なんだっていう。次はこれに行きますっていう、聞いてる人が、今どういうことを追及してるかっていうのはわかるし、で、これはちゃんと答えてないとかっていうのも、判断をして、それをちゃんと言葉にしてくれるから、私たち、見ててわかるんですよね。
なんか、見ててもわからない質疑をする議員さんもいらっしゃって、ご本人はどんどん追及してるんだろうけど、こちらはちょっとよくわかんないみたいな、置いてきぼりにならないところが良くて、だからこそ30分の質疑を流すだけでも、たぶん、わかってもらえるだろうというふうに、まあ私たち、最初(の頃の街頭上映は)やってきたんですけれども。
で、最後ですけれども、通常国会は1月20日からって決まったんですかね。

●山本 そうですね。というふうに言われていますね。

●上西 で、今、こう野党の連携を深めていこう、みたいなこともあって、先ほど枝野さんのツイートを紹介しましたけど、こちらは原口(一博)議員ですね、国民民主党。
原口議員は野党合同ヒアリングとか追及本部とかで、ずっと司会進行されて、で「田村(智子)議員の隣に座らせてもらっているお陰もあって真実に近づく事ができます」と。「田村議員の精緻に積み上げられた資料を見て良いチームをお持ちなのだと感心します」ということで、田村議員のこのチームに敬意を表するとともに、他党としても共産党と敬意を表しながら、連携しながらやっていこうみたいなことが、このツイートから見えてくるんですけれども、通常国会に向けて、他党との連携みたいなことは、話が出てるんでしょうかね。


●山本 ええ。たぶん追及本部は年末も20何日かまでやっていて、たぶん新年ももう、すぐ始まると思うんですよ。それで、とにかく通常国会でこれをやろうと。
で、前にも言いましたけど安倍さんは、とにかく早く忘れてほしいと。今日の年頭の記者会見でも、まあまあ、「いやいや」と言って、まあお詫びをするので終わらせようとしてるんですけど、やっぱりこの問題っていうのは安倍さん本人に関わる問題なんですよね。「桜を見る会」のことは。だから安倍さんがきちんと釈明しない限り、疑惑は解消されない
ただ臨時国会っていうのは、一対一の国会質問っていうのは、田村さんの質疑が最初で最後だったんですよ。

●上西 あのあと予算委員会ね、やらなかったですよね。

●山本 そうですね、やらなかったですから、あれはきちんと野党が、規則に基づいて要求したんですけれども、やらなくて、結局、そういう意味でいうと、本格的な「桜を見る会」の論戦は通常国会からなんです。

●上西 なるほど。

●山本 で、通常国会っていうのは当然、予算があるんで予算員会に出すんで、ここはもう、総理も逃げようがないんですよね。

●上西 テレビも入りますし。

●山本 そうですね。だからここで、野党はたぶん、「桜を見る会」、あと今、例のカジノの問題も出てるんで、そのへんも含めて徹底的に追及していくのかなと。
で、私たちも当然、通常国会に向けて「桜を見る会」の問題で新たな取材もして、ぜひ出していこうかなというふうに思っています。

●上西 はい。じゃあまたそれは日曜版で。特集になって出てくるかなというところですね。

●山本 そうですね。ぜひ。

●上西 あの日曜版の、新年合併号ですか、新しい、ちょっとじゃあ、宣伝を。

●山本 日曜版はそういうスクープとかもそうなんですが、あとは、多くの人が選んでいただけるように、こういう、新年号だと仲代(達矢)さんにを出ていただいたりとか、あとは新年から始まったのが、「銀河鉄道の夜」、この漫画なんですけど、これは、ますむらひろしさんという方が、前にも銀河鉄道について描いていたんですけれど、今回改めて、最終形だと言って、非常に力を入れて描いていただいて、こういうのも始まりまして、そういう意味で言うと、いろんな方の興味とか関心に応えるようになっていると思いますね。ぜひ一度、手に取って読んでいただけると嬉しいです。

●上西 そう、「しんぶん赤旗」のツイートがね、「私たち、こう、いい取材をするから購読で支えてほしい」っていうようなことを書いてらして、毎日新聞もね、そういうことを書いてらして、毎日新聞の統合デジタル取材センター長さん(齊藤信宏氏)にも、ハーバー・ビジネス・オンラインで取材をしたことがあって(※9)、その時も有料課金、有料購読の仕組みで支えてもらって、私たちは深く追及ができたとおっしゃってて、そういうところも私たち、重要な観点かなと思っているところです。

※9「メディア不信と新聞離れの時代に、鋭い記事目立つ毎日新聞の「挑戦」」(上西充子)(2019年8月13日、ハーバー・ビジネス・オンライン)


●上西 はい。じゃあ今日はそのあたりで、なにか質問とか来てますか。大丈夫ですか。見えないですか。1時間半、やりましたね、ありがとうございました。ちょっと長くなりましたけれども、非常に充実した話をお伺いすることができました。ありがとうございました。

●山本 ありがとうございました。

追記:この対談の内容は、下記の3つのテーマに整理して分析を加えたものを、ハーバー・ビジネス・オンラインの記事として後日、公開予定(下記は、いずれも仮タイトル)。
第1回:田村議員の質疑の組み立てのうまさ
第2回:しんぶん赤旗日曜版は、なぜ問いを立てられたのか
第3回:なぜ大手メディアはすぐに追随できなかったのか