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コンサートレポ:『クッパが主役!?』スーパーマリオオーケストラコンサート

2018年9月15日(土)9月16日(日)に開催された「『クッパが主役!?』スーパーマリオオーケストラコンサート」を観覧した。本レポートでは9月15日の公演について触れる。会場は京都最勝寺のお堀の中にある「ロームシアター京都 メインホール」、当日は日中アニメ関連の大きなイベントもあり会場付近はかなりの賑わいだった。
音楽監督は新海誠監督『君の名は。』のオーケストレーションを担当された深澤恵梨香氏、指揮は竹本泰蔵氏。竹本氏の指揮が大好きなので、とても楽しみにしていた。また、開場前のグッズ販売では、定番のTシャツやパンフレット、エコバッグ等のほかに、「テイクアウトライブカード」というものが販売されていた。これはカードにあるQRコードを専用アプリで読み取ることで、スマホやタブレットなどでコンサートを後日視聴することができるというもの。コンサート参加者は講演終了後に再び映像をみて楽しむことができるし、参加できなかった人はカードを購入することで映像を見ることができる。とてもいい試みだと思った。

「クッパが主役!?」と銘打っていることもあり、クッパが登場するゲームの曲が演奏された。とはいえ、クッパの曲でメドレーが組まれたわけでもなく、特別な演出があったわけでもない。結果的にこれまでのマリオが出てくるゲームごとのメドレーとなっていた。
演奏に先駆けて各作品の紹介及び編曲についてのコメントが紹介され、演奏中には後ろの壁に演奏されているゲームのプレイ映像が同時に流されているという演奏形式。曲順はどれもゲームプレイ時に聴く順番になっていた。おなじみの「スーパーマリオブラザーズ」地上BGMからはじまった。

どのメドレーにも共通していたのだが、単純に演奏するのではなくゲームをプレイした人なら感じるものを様々に音として表現していたこと。たとえば「スーパーマリオブラザーズ」メドレーではジャンプ音、コイン獲得音などをプレイ映像に合わせて演奏し、「スーパーマリオブラザーズ3」の魔王クッパでは、プレイ映像でマリオがクッパに踏みつぶされると同時にヤラレチャッタ時の曲が演奏される。思わず会場が笑顔に包まれる。PRESS STARTの時もスペランカーの時に何度も何度もミス時の曲が演奏されたが、それを思い出した。これはもはや定番ネタといっていい。
また、4曲目の「スーパーマリオ64」以降の楽曲で強く感じたことだが、メドレーを組むにあたってゲームの「物語」を大切にした編曲をされていると感じた。 ゲームハードが変わってゆくにつれて、描かれてゆく世界も広く濃密なものになってゆく。プレイ時間も長くなってゆく中、ゲームをプレイすることは別世界を旅する経験とよく似てきているのかもしれない。そういった旅の思い出を振り返る時の気持ちによく似た感情を、演奏後に感じた。プレイ中に出会う景色、そしてそこを歩み進めてゆく時の感情。そういった感情の起伏を大切にした編曲と感じた。

竹本氏の指揮は今回もとても躍動感のあるものだった。氏が笑顔で腕を振り、身体を揺らしてリズムをとり、オーケストラ全体をリードしつつかつ自身も音楽を楽しんでいるような、そんな指揮が本当に素晴らしい。なによりこれから演奏するパートへの指示がとてもわかりやすい。「次はどの音が来るのか!?」というのを常に楽しみに待ちながら聴くことができる素晴らしい指揮だった。

以下個別に感想を。
「スーパーマリオワールド」はタイトルBGMからとても陽気だった。ダブルベース、パーカッション、ドラムがある編成だったのでハネたリズムがある地上BGM、アスレチックBGMの演奏がとても躍動感あるものだった。まよいのもりで静まり、水中BGMで穏やかな気持ちになり、魔王クッパBGMでは3段階に展開する曲の流れ(なんと途中でピーチがキノコを投げるBGMまで)を再現する盛り上がり!そして道中で出会ったワールドのキャラクター達を振り返りながらヨースター島へ帰ってゆくマリオとピーチとヨッシーたち。あの達成感が思い出されるとても気持ちの良い演奏だった。

「スーパーマリオ64」は色んな演奏会で演奏される人気の高いゲームなので、今回の演奏曲も馴染みのあるものだ……と演奏前には思っていたがいい意味で裏切られた。セーブデータを選ぶ時のファイルセレクトからきっちりと聴かせてくる。この曲をここまで丁寧に聴いたのは初めてだったので感動した。こんなにいい曲だったんだこれ。ゲームを起動するたびに何気なく聴いていた曲の素晴らしさに気付かされた。そんな感動を胸に抱いたまま64の世界が次から次へとやってくる。金管が映えるメインテーマ(筆者注:ボムへいのせんじょうで流れる曲)、さむいさむいマウンテンとスライダーの陽気なカントリー調。特に心に残ったのはウォーターランド。静かに始まりだんだんと演奏楽器が増えてゆき広がってゆく音の世界がとても印象的な曲だが、今回聴いたウォーターランドがその音の広がりを最も感じられた。一曲の中であれほど静かにそして劇的に展開してゆくことに感動できるのは初めてだった。
余談だが、今回の演奏会で初めてメタルマリオが無敵マリオのアレンジだったと気づいた。なんだか恥ずかしい限りだがそんなことに気付かされたのも嬉しかった。
緊張感のあるクッパ3号を聴いて、浮遊感のある感動のエンディングへ。マリオ64のスタッフロールが大好きなので、とても嬉しくて思わず泣いてしまった。あの明るく優しくそしてちょっとだけお別れするのが寂しい曲をこうして生演奏で聴けたことがとても嬉しかった。

「スーパーマリオオデッセイ」はおそらく今回が初めてこうしたフルオーケストラで演奏される曲目だったので、今回最も楽しみにしていた。そしてその期待を大きく越えた素晴らしい演奏だった。ダイナフォーの躍動感はゲーム内そのままだった。かなり起伏の大きな曲調が会場内を大きく盛り上げる、スチームガーデンはベースラインで描かれたメロディラインをオーケストラでは金管でアレンジ。原曲は60’sのロックンロールだったがこちらはパワフルさを増してお色直し。こうした生演奏でのアレンジが最も楽しめたメドレーだと思う。そしてなんといってもニュードンク・シティの華やかさ!オデッセイが発表されてからずっと楽しみにしていた陽気でクールな楽曲は本当に素晴らしいものだった。それぞれの国ごとに大きな特色があり、それによって使われている楽器も曲調も様々なものであるが、それを見事にまとめ上げたオーケストラの演奏力には脱帽するばかりだった。

「スーパーマリオオデッセイ」メドレーの最後にはクッパ城とクッパ城本丸が演奏された。この 曲はゲーム中でも特に移植の「和」のイメージが強い曲(使う楽器も和楽器が多い)なのだが、演奏前にはなんとステージ上に和太鼓と小太鼓がそれぞれ準備されたのだ!そしてオーケストラと和太鼓小太鼓の共演!オーケストラに合わせて鳴り響く太鼓の音は会場に強く響き渡り、ものすごいパワーを感じた。
またクッパ城本丸が演奏されている時に、合わせて演奏者後ろの壁にメッセージが流れ、太鼓の拍子に合わせて手拍子してほしい!と観客と一緒に楽しむことができる場面があった。試み自体はとても面白いのだが……その時に促した手拍子が、変拍子であること、また3パートに分かれて手拍子を催促したが、それぞれの手拍子が重なり合うと、自分が今どこのパートを手拍子すればいいのかわかりにくくなってしまうこと、それらが重なって、全体としてはリズムの合わない手拍子になってしまったと感じた。ここは手拍子の催促の仕方に課題があると感じた。

圧倒的なクッパ城本丸の演奏が終わり、大きな拍手がアンコールに変わる。すると、アンコールの拍手に応えて登場してきたのは、マリオだった。
着ぐるみのマリオがステージ上にあがる、それだけで観客から大きな拍手と歓声が飛び交う。その中で演奏されたアンコール曲が「Jump Up,Super Star!」だった。ここで会場はさらに盛り上がる。壇上でマリオが手拍子を促し、演奏に合わせてダンスをする。マリオを中心に、会場が一つになってゆく。この一体感を生み出してくれるマリオは、やっぱりみんなのヒーローだった。長い年月をかけて、様々な世界を駆け抜けてきて、そしてこれからも果てしない旅を続けてゆく、そんなマリオのカッコよさを感じることができたコンサートだった。

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たくさんのゲーム音楽演奏会に参加して、たくさんレポートを書いてゆく予定です。