某市のランナー

僕は社会人になってからずっと一人暮らしをしている。
 男の一人暮らしにしては、自分で言うのもなんだが、自炊をしっかりしてやっていて、栄養バランスにも気を使っている。
 それでもやはり、日中はほとんどがデスクワークなので運動不足にはなりやすい。30代後半から40代になると、かなりだらしのない腹になる職員を多く見かける。僕はそうなりたくない。
 そこで、かなり前からランニングをしている。とはいえ、毎日コンスタントに10キロ走ったり、マラソン大会に参加するほど熱心ではない。あくまで、健康のために休日やその前日に、仕事に支障が出ない範囲で走るだけだ。

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  僕が走るのは基本的には夜9時~11時の時間帯である。理由は、このご時勢にマスク無しで歩行者とすれ違うのが嫌だというのもあるが、もともと走っているときの顔を見られるのが嫌いだからだ。苦しくなった表情を誰かに見られるのも、前髪が乱れるのも嫌いだ。
 しかし、世の中には自分がランニングしている姿を歩行者に見られるのが好きという人もいるらしい。なんでも、運動をしない怠惰な(肉体的には確かにそうだが)人に対して、ストイックな自分を見せつけることに喜びを感じるのだそうだ。僕には理解できない。

 とにかく僕は夜に走るのだが、それは危険を伴う。
 最も多く経験する危険は、歩道を走る自転車との接触である。
 僕の住む某市は治安があまり良くなく、いわゆる「民度」も良くない。だから、自転車のマナーも悪い。
 夜に走っていると、無灯火で片手でスマホを弄りながら、かつ咥えタバコで歩道を走っている自転車によく出くわす。しかも毎回同じ人というわけでもない。何度も轢かれそうになった。
 そこで僕は路肩を走ることにしたのだが、それはそれで車にとってはかなり邪魔な存在となる。何度かクラクションを鳴らされた。
 非ランナーからしてみれば、ランナーは自分の都合で走っているわけで、周りに迷惑をかけるべきではないから、邪魔になるくらいならやめてほしいと思われているのかもしれない。確かにそうだと思う。周りに迷惑かけて走る奴はランナーでもなく、人でもなく、ただのサル。バナナを食べてその皮をその辺に放り投げるサルと、ポイ捨て野郎が同類なように、この手の奴はアニマル。そう、ランニング・アニマルだ。

 ・・・というわけで、あまり人通りが少ない、国道から離れた道選んだが、それでもランナーにとっては厳しい道だった。
 近くにランニングコースでもあればいいのだが、某市はそもそもランナーが少ないみたいだから、そういったものは作られてないようだ。
 こうなったらランニングができる公園に行くしかない。でも某市は治安が良くないから、夜の公園なんかにはチンピラが溜まっていることもある。オヤジ狩りなんてのもたまに起きているみたいだし、ちょっと怖い。まあ、ランナーなんて腕のバンドにつけたスマホとイヤホンくらいしか持ち物ないから、狩られる心配もないか。

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