カレーかそうでないか

 「好きな食べ物は何か?」
 義務教育課程において、新たな学級における自己紹介の項目として、頻繁に挙がる。好きな食べ物というだけでも、自分のキャラ付けとして偽りの回答をする者がいる。
 例えばある女は、「マカロンが好きです♪」とか。マカロンとかどこで売っているのか。スーパーで売っているところ見たことあるか?
 例えばある男は、「カレーライスが好きです」とか。その男は体育会系のマッチョな奴。たぶん見た目とのギャップで実は可愛い系というか、アイドルっぽさを出したいのだろう。なぜならその男の「嫌いな食べ物は?」という質問に対する答えは、「ピーマン」だったからだ。薄ら寒い。
 義務教育課程は遠い昔になり、今や国の三権の一翼で働く賃金労働者と化した俺の好きな食べ物は、カレーだ。だから、「好きな食べ物は何か?」という質問に、正直者の俺は「カレー」と答える。
 ところで、20歳を超えて、ある程度人生経験を踏んだもの同士が会話をすると些細なことでも深堀されて、「にわか」が露呈することがある。例えば、「カレーが好き」というと、「どこのカレーが好き?」と聞かれてうろたえる。どこって言われても、カレーはカレーだろう。
 そんな意地の悪い質問に対する対策として、多様なカレーを食べることが、一社会人として求めれられるような気がする。
 今やデリバリーで様々なお店の料理を食べることができる。だから、俺もデリバリーで食べられる多様なカレーを食べることにした。
 今日注文したのは「100時間カレー」というやつだ。ググると、「100時間カレー まずい」とか、「100時間カレー おいしい」とか二極のリコメンドが出てくる。こういうカレーに対して明確な回答を持っていることが、カレー好きを自称する者には求められるだろう。
 とりあえず、「三元豚ロースカツカレー」を注文した。「カツカレーには目がない」。

三元豚ロースカツカレー

 食べた感想は「最初は普通で半分食べるとくどい味」。
 ホームページに100時間かけて作った的なことが書かれていたが、もしかして100時間煮込んでいたのだろうか。なんというか、味が濃くて後味が少し苦い。カレーの良さとはスパイスの辛さと野菜の甘味だろう?苦味を覚えるとしたら、強火で煮込んで鍋の底で焦げたときくらいだ。
 カレーというよりこれではソース。そうか、俺はソースカツを食べていたのか。
 ともあれ、後味以外にもカレーのおいしさが感じられず2/3を食べた時点でギブアップ。頭痛がしてきたので、申し訳ないが残りは残飯で・・・。ごめんなさい農家のみなさん・・・。
 正直、その辺のスーパーでロースかつ買ってきて、炊いた米の上に乗っけて、咖喱屋カレーをぶちまけた方が美味しい。少なくとも完食できる。

画像2

 という訳で、カレー好きを自称する俺の感想としては「100時間カレーはカレーというよりソースカツであり、カレーとして食べてもソースカツとして食べても美味しくはない」というものであった。
 1000円と少しを支払うことで俺は一つの意見を持つことができた。残飯になってしまったが、ありがとう100時間カレー。

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