誰がやるのかわからないゲーム「進め! コメ助!」


先日、衝撃的なニュースが流れた。まずはこちらをご覧いただきたい。

http://www.sankei.com/politics/news/160216/plt1602160055-n1.html

公明党が、ゲームアプリ「進め! コメ助!」を発表した。ゲームアプリを通じて、公明党の若者への浸透を図ったという。周知の通り、今夏に行われる参議院議員選挙からは、投票できる年齢が18歳以上へと変更された。若者への浸透の程度で、選挙結果が変わることはもちろんあり得る。そのため、公明党はゲームアプリの制作という形で、若者へのアプローチを試みた。リリースは3月1日だという。

さて、ここまでの短い文章だが、恐らく読者の皆様は、ほぼ同じ思いを抱いたことであろう。


「誰がやるんだよこんなの」。


ご存じの通り、いまやスマートフォン(スマホ)でプレイできるゲームの人気は絶大なものとなっている。そして、多くのゲームは無料でスタートできるという特徴を持つ。スマホを手に入れた若者は、いままであまりゲームをしなかった人でも、そういったゲームを楽しむことが多くなっている。かくいう筆者も、スマホを購入した際、当時大流行していた「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)をプレイしたことがある。

本題に戻ろう。公明党のゲームアプリ「進め! コメ助!」である。このゲームは、船に乗った「コメ助」が、数々の敵を避けて大海原へと進んでゆくゲームである。放っておけばコメ助の船はまっすぐ進んでゆくので、プレイヤーは船を左右に動かし、海の生物や妨害船といった敵を避け、航行距離を稼いでゆく。

誰がやるんだよこんなの。


やるけどさ…。

ということで、「進め! コメ助!」をダウンロードしてみた。遊び方を見てみる。

「画面をフリックして、妨害船やサメなどの海の生き物から帆船を守り、海の彼方をめざせ!!」「ファミリーカードを持っている時に画面をダブルタップすると使うことが出来るよ!」「アンカーや妨害船に当たると敵の船長が舵をとりに乗り込んでくるよ。表示された矢印の通りにフリックして舵を守りぬけ!!」「星を持っている状態で画面をダブルタップするとお助けキャラが助けに来るよ!!」

以上が「遊び方」で説明されている全内容だ。ちなみに、「メニュー」の方を開いた先にも「遊び方」がある。タップすればもちろん全く同じ画面が開くので、多少くどいと言える。これ以上の詳しい説明はないが、どうやらシンプルな操作でプレイできるらしい。いざ、コメ助とともに海の彼方を目指そうではないか。「航海開始」だ。

「よ〜し、がんばるヨネ!」というそれほどかわいくない声とともに、コメ助の航海が始まる。

こちらがゲーム画面だ。上部には緑色の体力ゲージや舵マークの航行距離、集めたコインやスターの数、風向きなどが表示されている。コインを集める要素や風向きという概念は何も説明してくれなかったが、特に支障はないという判断であろう。ゲームプレイヤーにおいて、「コインは取るもの」というのは常識なのである。何に使うか全く説明がなくとも、コインは取るものなのだ。そして風向きはコメ助の航行速度に関わる。当然、追い風なら船が速くなり、向かい風なら遅くなる。プレイしていれば自然とわかることではあるが、船の速度が変わればプレイにも影響するので、そのあたりは説明があってもよいのではないだろうか。

ちなみに、先程の画面の左上にある、真ん中が黒いコインは、「偽コイン」であり、取ると所持コインが10枚減る。公式サイトには記述があるが、それはアプリ内でも説明したほうがよいだろう。筆者は最初、全く気づかずに全部拾っていた。

さて、この緑色の体力ゲージであるが、敵を避けていても、少しずつ減っていくものである。もちろん、体力が尽きればゲームオーバーだ。その減少を補うには、航行の途中でコインと同じように出現するハートを入手しなくてはならない。ハートの入手により、一定量の体力が回復する。

この「何もしなくても体力が減っていくが、途中で出現する回復アイテムを取ってなるべく遠くまで行く」というシステム、どこか心あたりがある方もいるのではないだろうか。そう、2000年代の初頭、個人ホームページによく設置されていた「あれ」である。正式名称を知らないのだが、わかる人にはわかればいい。その2000年代初頭の「あれ」と似たシステムのゲームを、公明党は2016年も2ヶ月終わったこのタイミングでリリースした。その度胸には感服する。

ゲーム自体の話に戻ろう。操作は説明にある通り、左右のフリックでコメ助の船を動かすのみである。妨害船を避け、コインやハートを入手し、航行距離を伸ばしていく。

暗雲や雷雨により、障害物やアイテムが見えにくくなることも。

なお、妨害船よりもタコやサメのほうがずっと避けにくい。なぜタコやサメやイルカがコメ助を襲ってくるのかわからないが、そもそもなぜコメ助が船に乗っているのかも一切わからないので問題はない。この世界は正常である。

妨害船にガツン!とやられる寸前。「遊び方」で触れられていたような、敵海賊との戦闘になるのかと思ったが、体力が減るのみだった。しばらくプレイしたが、戦闘モードに入る確率はかなり低めのようだ。基本的には妨害船がガツン! タコがガツン! サメがガツン! でコメ助が沈む。どうも盛り上がりに欠ける印象が否めない。


と思っていると、何かの拍子に戦闘モードになる。何にぶつかったときにこうなるのかが結局よくわからない。このゲームの視認性はあまりよくない。このモードで敵海賊に競り負けるとゲームオーバーとなる。ならば勝てば何かよいことがあるのか…と思うが、勝った瞬間に通常の航行画面に戻り、無敵時間も一切ないため、立て直せないままタコやサメにガツンガツンやられて一瞬で終わる。

冒頭の産経新聞の記事にもあったが、この敵海賊たちが他の政党の党首(連立与党である自民党含む)に似ていることがほんの少しだけ話題になっている。しかし戦闘モード中は方向の変わる矢印を見ながらフリックすることになるため、敵海賊の顔を見ることもほぼない。あまり意味のない、些細な話題作りだ。

このモードのときに活躍する「お助けキャラ」というものもあるのだが、アプリ内では説明がない。星を入手するとよいらしいが、筆者のプレイ中に星を入手できたことはまだない。ちなみにお助けキャラには「山口代表」や「佐々木さやか議員」がある。「山口代表」や「佐々木さやか議員」である。

また、「ファミリーカード」という、コメ助の家族たちが描かれた援助アイテムもある。「ダブルタップで使うことができる」という説明もあるが、入手方法などは教えてくれない。

配である。信じられないかもしれないが、配だ。このゲームでは、海に浮かぶ配を拾うことができる。配を拾いたい人にはオススメのゲームである。

種明かし。先程の「配」のようなパネルを集めることにより、言葉を完成させ、その解説を読むことができる。なけなしの政治要素がここにあった。山〇〇津男。

個人的に、本当に意味がわからないのがこれである。ズバリ「性格診断」。これは航行距離が3000を超えると開放されるモードなのだが、そこからもうすでによくわからない。航行距離が3000を超えると性格が診断できるようになる意味が全くわからなかったし、やってみたらみたで、

何だこの実りのない時間は。本編に戻ろう。航海開始をタップして…

急にコイン使うところが出てきた〜! 伏線回収〜!

どうやら、コインを十分持っていればこの画面が出るようである。このゲームは筆者に「気づき」を提供してくれた。


長くなったが、このゲームに魅力がそれほどないことがわかっていただけたのではないかと思う。ちなみに、案の定ではあるが、プレイ人口がものすごく少ない。そのため、Game Centerで確認すると、筆者が記事執筆のために数度プレイした際の記録は、執筆時現在で全国6位となっている。逆に言えば、5人は確実に熱中してプレイしているのだろう。皆様もこの魅力のあまりないゲームで全国1位の記録を狙ってみてはいかがだろうか。あるいはパズドラやモンストやグラブルをやってはいかがだろうか。


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