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鳴神くんとユリさんに贈る想い

「魔天使マテリアル」2ndシーズン(10~19巻)を通し読みしたのは6年ぶり。
バレンタインを堺に物語が大きく動き始めたこの季節に、また作品と向き合えたことに縁を感じます。
内容を振り返りながら、感想や考察など自由にまとめます。
(完結までの内容が含まれています。)

バレンタインデー

世間は何かと乙女心で浮足立つ中、学校の至るところで箱まみれになったモテ男たちもいれば、手作りチョコを受け取り新たなカップルが誕生したり。
平穏な日常回―の裏側で、父から再婚話を切り出される鳴神…

12巻P86「俺が邪魔なら、邪魔だって言えよ!」
この言葉が痛い程胸に刺さって涙出た。
マテを読み始めたのが中学2年生。
当時は私も(妹だけ産んでりゃ良かったのに)という気持ちでいたことを思い出した。
同年代の鳴神が、私の漠然とした心境を代弁してくれたように感じた。

生徒会長と補佐

鳴神家を訪ねる、智也と徹平。
智也は信念を持って役職につとめていると思う。
ただ正当な理由を促すのではなく、背景を踏まえたうえで智也なりの意思をもって提案をするところが、相手のことを考えていると伝わる。
もしこうすればこうなる、と見通しを立てて周りをみることができるのもすごい。
徹平も、情報を好奇心で捉えるところが徹平らしい。
この2人なら、徐々に打ち解けてもいいかな〜と思えてくる。

「俺は化物に成り果てる」

中学の屋上で対決。
どうでもいいの最上級って、謎に無敵になるんだよねw
さざなみが立たないように隠密にしていたい反面、抱えてる爆弾を発散させたい、みたいな起伏があるところ。
良くも悪くも、自分の機嫌は自分で取るしかなくて。
雷のマテリアルに突然目覚めてどうしよう!は、言い換えると自分の感情とどう付き合っていくのかがテーマになっているのかも。

(メモ)
・11巻P72、徹平の両親のマテリアルが明かされる(18巻でユリさんに見抜かれた)

・12巻P101、三田「先祖の誰かが悪魔だったんだよ」

・13巻第1話(レク会)、サーヤが照れるから、周りはレイヤの姉ラブを心配されがちだけど。
初めに意識してた頃から、だんだんサーヤはレイヤのきょうだい観?を受け止めていって、レイヤがそうならサーヤもこたえよう、みたいな関係性になってると思う。

徹平と特訓

13巻P43、徹平が遊びながらマテリアルの力を覚えた話。
遊びは子どもの興味感心を深めたり、相手の存在を知るきっかけになったり。成長に繋がることを学ぶ大切な経験。
保育の勉強後にマテを読んだら、やっぱり子どものニーズにすごく寄り添ってると感じた。
きっと藤咲先生は、読者層である小・中学生の実態を題材に取り上げ、その環境の中でキャラが問題に立ち向かうことによってメッセージ性を伝えているのかな?
変わりゆく時代の中で、子どもたちの姿を捉え続ける凄さ。
いろんな分野にかかわりをもつことが、第1巻あとがきの自分のマテリアルを磨きましょう✧に通ずるなと思う。

あと、新しい呪文を考えるところ。
想像をカタチにつくり出す表現力。
鳴神の場合、わからないことを調べたり人に尋ねることができるのは良いところで、誠実な性格ゆえにこたえがない問題に苦戦する様子が丁寧に描かれてて良かった。
いままで読んでる分には「そういう技で応戦するのね!」だったのが、一緒に1から技を考えさせられたというか。
新しいことに試行錯誤する時、閃きにたどり着くまでの空白期間のつらさ。面白いほど何も浮かばないの何でだろ。

軽井沢の合宿

初日の特訓は、ハラハラした。
気持ちの整理をする鳴神に付き添う徹平の心強さ。相手と同じ時間を共有している空気感が好き。
皆がいつになくまったり過ごしているのも、時間の流れにリアリティがあって、読んでる時は昼寝した。

2日目。
トオルさんの的確なアドバイスと鳴神のペースに寄り添う配慮に、先輩…!!ってなった。
トオルさんがマテリアルの困難を乗り越えたからこそ、鳴神自身にできることがあると信じられる。
巻末のマテマテ通信「好きなセリフ」でも取り上げられるように、後押ししてくれる言葉が前向きになれる。
ほんと、マテリアルたちのあたたかさが好き。
(サーヤまで刈られなくてよかったねw)

(メモ)
・13巻P89、伊吹さんは「綾香と戦っていた」、圭吾は「綾香さんはひとりで戦っていた」と言う。どちらの言い分も正しく、うろ覚えだけど「伊吹が記憶喪失になる前後」の時期で認識している。それぞれが経験した苦い出来事から、過去の印象に違いが出ていて面白い。

・14巻P180、雪成が赤ちゃんの時に綾香さんに会った話。小夜子さん視点では過去話なんだけど、詳細は17巻外伝に明かされる。

マテリアルの母が、なぜ魔界の王子と結ばれたのか─
そして、マテリアルの鳴神と、悪魔のユリさんの馴れ初めが書かれる…

タイミング

15巻P47で、鳴神が双子の出自を立ち聞きしてしまう。
「居場所がない」という体が強張るような感覚。
15巻P49、病むと最悪な想像に陥るの、そうなるよね。
鳴神の考え方は私の性格と似てるな…

今回の読み返しで気付いたことがある。
12巻P74「サーヤも初めはとまどった」という話が、鳴神について捉えるヒントかもしれない。

・マテリアル
徹平みたいに幼少期から力の練習をしたり、悪魔と戦う使命を伝えられる教育的な風習。
確かに怪奇探偵団でも度々能力について議論されるが、鳴神の存在自体を言及している訳ではない

・怪奇探偵団
現役はしょうつばが単独で活動していて、実質鳴神が最年長。年下に身の内話はしにくいし、顔を合わせたばかりの大人(圭吾や伊吹)にも相談しにくい…

・家庭環境
13巻P156、言い換えると「家事の手伝いをする」って真紀子さんに歩みよろうとしていて良いじゃん!!と思った。
でも、家族間で気を遣い合う関係って疲れるよな。家でも外でも気を張り詰めてばかりじゃ、休まる心地がしない。

大切なことを話し合う時と場を設けること。
鳴神家の食事の席や、15巻P147で尚紀さんがユリさんを連れ出す場面。
家庭の事情を折り合いをつけて話すことがある。
プライバシーを守り、落ち着いて対話のできる環境をつくる対応をしていたということ。
私は、必要な情報は必要なタイミングで自分に巡ってくるものだと思っている・・・

(メモ)
・15巻P181、決然とした表情と強い瞳
本来のユリさんの凛とした姿の描写。
・15巻P207(外伝)、この前、握り返してくれた手とはまったく違う、強さだった。
人の違いが出てる描写。

・17巻P32、サーヤ「大島くんは?」
まさか20巻以降に出番があるとは。
・17巻P144(外伝)、ケータイを片手に悩んでいた綾香
→15巻P190
・17巻P147、優の態度がすっかり変わってしまったこと
→15巻P221
・17巻P148、ホワイトデーのときに、ひとりじゃ勇気が出ないと、綾香に無理矢理付き合わされたのだけれど、思えば伊吹が優を最後に見たのはあのときだ。
→バレンタインはチョコ作りに付き合わされたが、ホワイトデーは物陰から見ていた。意味は通じる、初版の表記。

・18巻P122、グレイヴン「きちんと今のお礼をさせていただきますよ」

どこか遠いところへ(まとめ)

多くを語らなくとも落ち着く距離感。
そんな鳴神にだから、ユリさんは悩みを打ち明けることができた。
気の利いた言葉のひとつも、思い浮かばない。
それは、ユリさんの気持ちを知る度に苦しさを受け止める時間が必要で。それだけ大切な存在になっていたのね。

鳴神の、祖父の家を訪ねる選択

私にとっては第三者に理解を求める手段があるということを知れたのはとても大きかった。
「なんであんなに遠くまで家出をしたのだろう?」
初めは、祖父がたまたま遠い地方に住んでたからだと思った。
鳴神にとっては精一杯の判断で、そうする他なかったとしても。勇気で行動を起こしたからこそ、周囲に問題が浮き彫りになって環境を変えることができたと思う。

ユリさんの、繭に閉じ篭った気持ち

15巻であざやかな緑と花々を咲かせたが、18巻では鋭利な凶器になってしまった植物の力。
(破魔の笛の音色にサーヤの感情が出るところも、マテリアルの意志が反映されているのかも…)

豹変したユリさん、元は魔界の権威的な環境にいて。
成果を出してお父様に認められることが存在意義だった。
一方で、安全が確保された環境では、恩に着る性格で人間らしい情を持っていた。
どちらも素のユリさん。
条件付きで愛されること、一緒にいるだけで満たされる関係性を知ったこと。
ユリさんは、自分の意志に気付くことができたんだね。

気持ちの伝え方、受け止め方は自由

私は自己完結するタイプで、ようやく意思表示をすることの大切さを痛感している・・・

相手の好意を受け取るか、断るか。
自分の気持ちを伝えるか、育てるか。
些細なことだけど、自分がどうしたいのかを検討して行動していく。
同様に、相手の選択は相手の自由だから手放す。
その都度向き合えば、きっと何とかなるだろう。

僕らの証明の歌詞「信じる心が道しるべ
仲間を守るために最善を尽くしたマテリアルたち。
懸命に、いまに立ち向かう姿を尊敬しています。

(メモ)
・19巻P28、神槌「(妹は)女子高生してるよ」
・19巻P50、サーヤ「夏休みのプール開放日に保健室の当番を頼まれたんだ」
・19巻P64、(紫星学院大の裏山)魔界に通じる道がつながりやすい
サーヤ「パトロールは翔さんと翼さんが忙しい合間を縫ってやってくれていた」
・19巻P75、徹平「今度はオレがしほっちを守るから」
・19巻P221、愛する人のいない世界に、意味はない。
レイヤが鳴神ユリのことを思い出すシーン。先の展開のユウト綾香の情景と重なっている。
19巻P230、ジュセル「昔を思い出します」もそのことを言ってるのかもしれない。

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