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よーし、おじさん目に映るすべてを破壊しちゃおうかな~v(^^)(無意味な文章)

(注:世の中には意味のある文章が多すぎるため、無意味な文章を書いています。決して意味を見出さないでください)

 西暦2042年、おじさん構文によって人類の文明は崩壊した。

 生き残った人々は世界各地で地下組織を形成し、文明の残滓をかき集めることでかろうじてその勢力を維持していた。

 そうして長い年月が過ぎ去り──時は西暦2120年。過去の栄光を実際に知る人々はほぼすべてが土の下へと還り、今を生きる若者たちは、受け継がれた理想が既に偶像と成り果てたことに心のどこかで気付きつつも、おじさん構文に怯えながら世界の片隅で生き続けていた。

「ロロ、ロロ、ヤックおじさんも逝ってしまった。どうしよう、ロロ」

 住民たちの中心にいたのは、二十歳も半ばを過ぎた頃の精悍な男だった。恵まれた体格と鋭敏な感覚そして深い知性を持つ青年──ロロが、このコロニーでは若くしてリーダーとみなされていた。

 ここは旧横浜駅坑道コロニー。その入り組んだ構造でおじさん構文から隠れることに適した地であったが、食糧自給に限界があり、かつては数千人の住民がいたこともあったが歴史とともに彼らはより良い土地を目指して散り散りとなっていた。『いつか、みなとみらいの"タワマン"に帰るのだ』──今ここにいるのは、それが口癖だった長老の執念で残った人間たちとその子孫であったが、原因不明の疫病やおじさん構文によって、今やたった14名が残るのみであった。

 ──ロロ、どうするんだ、ロロ。

 残ったのは若者が多い。その口々から発せられるのは不安の声ばかりだった。無理もない。現状のままでは早々に限界が来ることなどわかりきったことだった。否、既にその限界に達したと見ても良い。

 ロロはまばらに点灯された"えるいーでぃー"によって淡く照らされる天井を仰いだ。その交換部品ももうほとんどない。この旧横浜駅坑道は近い未来に、動くモノも、照らすモノもいなくなる。

 ロロは決断した。

「外に出る」

 誰もが予想していたにも拘わらず、息を飲んだ。

「すぐにだ。すぐに出る。北を、目指そう」

 ──長く、つらい旅が始まった。

 目的地はグンマーと呼ばれる地であった。彼の地は文明崩壊の影響が極めて少なく、過去にもグンマーを目指して多くの人間がコロニーを発ったという。その情報だけが頼りだったのだ。

 そして、1週間もせずにいちばん年嵩の一人が倒れた。やはり、おじさん構文によるものだった。看取ることもできず、13人は必死に逃げた。

 おじさん構文の先兵から隠れながらの強行軍は容赦なく体力を、精神を削る。まもなくして、一番若い少女──すなわち最もおじさん構文への抗体が強い者である──ミミが高熱を出して動けなくなった。もとより身体が弱かったのだ。ロロが彼女を背負って進む。

 それからさらに幾度の夜を超えただろうか。

 道程はついにそのほとんどを消化し、いつ目的地が見えてもおかしくないところまで辿り着いていた。

「みんな、もう少しだ」

 消耗し、うつむく面々をロロは必死に激励する。その顔にも疲労は濃く、夜中も率先して見張りに立つため目の下にべったりと隈が張り付いている。それでも明るく、強くあろうとするロロに、みんなが勇気づけられた。

「そうだ、がんばろう! もうすぐだ!」

 ミミに次いで若い少年、レトが跳ねるように応えた。それにロロもまた勇気づけられた。100人の味方を得たような気分だった。

 ──おじさん構文の先兵と交戦になったのは次の日だった。

 もう少しなのに。あと少し、あと少しなのに! 13人は必死に逃げたが、すぐに追いつかれてしまった。

「ロロ! 食い止める、行ってくれ!」

「そんな……っ⁉」

「行け! 止まるな! 行けええええええええええぇぇぇ!!!」

 貧相な武器を手に、年長の者から次々と敵へ向かって飛び込んでいく。ロロの両目から涙があふれた。心が引き裂かれそうだ──でも、頭ではどうすればいいかを理解していた。自分はリーダーだ。背負っているミミの体温を感じる。すぐ後ろにいるレトの息遣いがわかる。

「走れ────────!!!」

 ……

 …………そして、夜が来た。

 そこにいたのは6人だった。

 歩く。歩く。荒い呼吸音だけが響く。

 もうすぐ、もうすぐのはずだった。夜を徹して、歩く。歩く。歩く。

「ロロ……」

 ふと、横で不安げに呼んだレトの頭をロロはくしゃりと撫で、ミミを背負いなおした。無理にでも笑おうとしたが、もうできなかった。それでも、先頭を歩き続け、常に背後を気遣った。

 そして────

「あれは……壁……それに、門、なのか……?」

 朝焼けの向こうに浮かび上がったシルエットが、始めは何かわからなかった。しかし、それは明らかに、人によって作られた巨大な建造物であった。

「着いた……着いたんだ」

 全身の力が抜けそうになる。しかし、

 カンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!!!!

 門の方角から突然けたたましい鐘の音が届き、一気に全身に緊張が走った。反射的に振り返ると、丘の下から陽光を反射しながら鋼鉄の生物たちが駆けてくる。まだ距離はある。だが、猶予はない。

「全員急げ、門へ急げ!」

 叫び、両足に最後の力を込めて──


「ミミちゃんもう疲れちゃったかな? 若いうちから身体を鍛えないとあとから大変ダゾ! あとちょっとガンバロウね(^_^;)」


 全員の動きが止まった。

 その視線がロロにくぎ付けになる

 ──ミミ、しっかり掴まれ。

 ロロは、そう言おうとした、はずだった。

 ロロはオイルの切れた機械のように、自分の右手を開いて見た。そこに、見覚えのない痣があった。昨日の、あの戦いの時だろう。だから、もう。

「レ……レト!」

 ロロはすぐにミミを下ろすと、近くにいたレトに預ける。

「おじさ……おじ、は、俺が、ぐ……頼む、ミミちゃ、を」

 残った武器を手に取る。塗りつぶされそうになる意識に抗って、ここまで守った彼らに背を向ける。最期まで、守る。そのために。

「みん、な、生きろ……!」

 走り出した。もう、二度と振り返ることはない。レトもミミも、残された全員がロロの名を叫んだ。それもすべて振り切って、すぐに聞こえなくなる。

 生きてくれ。生きてくれ。このおじさん構文蔓延る世界でも、せめて少しでも幸せに。未来へ希望を──

 ロロは武器を振り下ろした。やがてその意識が失われても、信念が身体を動かし続けた。身体が動く限り戦い続けた。

 遠くで門が開いて、またすぐに閉ざされる。同時に完全に朝日が昇った。

 ────これが夜の終わりと、新しい朝の始まりであった。

(EON)


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