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塗る。

皆さんこんにちは。

今週末に、競馬の祭典である東京優駿第90回日本ダービー(G1)を迎える。
そして、中の人は、重要なG1レース前になると、塗り絵と呼ばれるものを用意する。
今回は、そんな塗り絵についてクローズアップする。

塗り絵とは

そもそもこの「塗り絵」とは一体どんなものなのか。

一般的に塗り絵と聞くと、紙に絵の輪郭だけが書いてあり、そこに色を塗る遊びのことを指す。

しかし、競馬界での塗り絵は、大きく意味が異なる。

競馬に使われる塗り絵は、馬名・騎手名を記入もしくは記載し、そこに騎手が着用する勝負服の模様、さらに騎手が被る帽子の色を描くというものである。

各メディアの実況アナウンサーは、この塗り絵を頼りにレースを実況する。

ラジオNIKKEIのアナウンサーは、基本的に手描きで塗り絵を作成しているが、これはテスト勉強同様、自分で実際に作成した方が覚えやすいという理由だそう。

第67回有馬記念で用意した塗り絵

塗り絵いろいろ

塗り絵のフォーマットには何種類かある。

①枠無し

枠なしの場合、左から右に書いていくが、その理由は諸説あるとのこと。
アナウンサーが作成する塗り絵について調べてみると、ラジオNIKKEIのアナウンサーは枠なしの塗り絵を使っていることが多い。

②枠あり

この場合、右から左に書いていくことが多い。
これは、縦型の競馬新聞の場合、いずれも1番の馬が一番右に来るように作られているため、競馬新聞と同様にした方が見やすいという理由でそう書かれている人もいる(例:山本直アナウンサー/ラジオNIKKEI)

塗り絵の作り方

今回は、第90回日本ダービー用の塗り絵を例に解説していく。なお、フォーマットは枠無しのものを使用する。

まず、レース番号とレース名などの基本情報を書く。

次に馬番。18頭分のスペースの真ん中に収まるように書くことが一般的であるが、このレースは18頭が出走するため、18頭分の枠は全て埋まることとなる。

次に、馬名、騎手名を書いていく。
中の人の場合、騎手名の下に斤量を書き加える。

そして、勝負服の色や模様を塗っていく。
この勝負服の模様だが、JRAから送られてくる資料を基に作られる。

中央競馬の場合、勝負服は馬主ごとに決められているが、主要馬主の勝負服の模様(服色と呼ばれる)を以下に記載しておく。なお、服色コードの順番は胴体の基本色→胴体の柄→袖色→袖柄(ここに胴体・袖関係なく入る柄が来る場合もある)となっている。ちなみにこの服色、競馬場やWINSで配布されているレーシングプログラムに記載されているので、興味を持った方はぜひ一度手に取った際に見てほしい。

サンデーレーシング→「黒、赤十字襷、袖黄縦縞」
キャロットファーム→「緑、白二本輪、白袖、赤一本輪」
金子真人HD→「黒、青袖、黄鋸歯型」
社台レースホース→「黄、黒縦縞、袖青一本輪」

この服色だが、コードの後ろから塗るのが基本とされている(詳しくは小塚アナ、山本直アナの塗り絵動画を参考にされたい)。

模様はわかりやすく描く

そして、前後する場合もあるが、騎手が被る帽子の色を塗る。
ここでポイントだが、まれに同じ枠で同一オーナーの馬が出走する場合がある。その場合、見た目だけだと区別がつかないため、外側の騎手は「染め分け帽」と呼ばれる特殊な帽子を被る。この染め分け帽、4分の1ずつ色が分かれているが、2枠から8枠は、その枠の色と白の染め分け帽、1枠の場合は色が白のため、白と水色の染め分け帽を被る。
なお、同じ枠に3頭おり、3頭とも同一オーナーの場合、一番外側の騎手が被る染め分け帽は色が8分の1ずつ分かれたものを着用する。

枠順発表時の準備はこれで完了

以上の作業を、レースの前々日もしくは前日に行う。
なお、アナウンサーが塗り絵をする場合、読みやすくするために、馬名に区切りの線やアクセントの記号などを書き加える場合がある。
アナウンサーによってはこのほかに、各騎手、各厩舎の情報を書き込む場合もある。

そして、レースの約1時間前になると、馬体重が発表されるが、本場馬入場時のために馬体重と前走比を記載する。

なお、レース開始までに出走取消や競争除外、騎手変更があった場合は赤ペンで修正を入れたり、取り消し線を引いたりする。

塗り絵の使い方

この塗り絵は、実際に競馬のレースを見る際に大変重要になる。
実況アナウンサーの場合、この塗り絵を参考に実況するため、塗り絵は欠かすことができないものとなる。
例えば、馬群の中で馬を見つける際、塗り絵や帽子の色の分かる分からないで、見つけるまでの時間がかなり異なってくる。
1秒の間が命取りとなる競馬実況の世界では、この準備が大変重要になってくる。

なお、アナウンサーのほとんどは、馬名と勝負服をあらかじめ頭に入れる。これは、塗り絵を見ながら実況すると、馬群を追い切れなくなるので、双眼鏡で馬群を追いつつ、塗り絵はチラ見する程度になるという。

まとめ

実況アナウンサーにとっては必需品となる塗り絵。
競馬のレースを観る時、この塗り絵があるだけで、楽しみ方が変わってくるかもしれない。

そして、この塗り絵の作業を経験すると、競馬を観る時に見えてくる世界が違ってくるかもしれない。


ダービー本命:5番 ソールオリエンス



じゃ、また。


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