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レビュー/ドイツの重鎮KREATORが放つ劇的スラッシュ「GODS OF VIOLENCE」

GODS OF VIOLENCE / KREATOR
2017年1月27日発売

ドイツの「スラッシュ三羽ガラス」の一角を担うKREATORが4年ぶりに放つ14thアルバム。

もはや激しく暴力的で速いだけのスラッシュ・メタルではない。禍々しさの中に独特の美がある。激しさと攻撃力の高さはそのままに,叙情的なメロディを大胆に導入した孤高のサウンド。たとえばTESTAMENTの最新作が見せるブルータルなスラッシュとは似て非なるもの。クラシック音楽が根付いたドイツ産ならではの雰囲気だ。

まず印象に残るのが,かつてないほどメロディアスに歌っているミレのヴォーカル。ヒステリックで聴く者をやたらとアジテートするスタイルはいつものとおりだが,本作では随所で「歌う」。たとえば09"Fallen Brother"のサビなどは実にキャッチーで,もともとのミレと声質と相まって高揚感は否が応でも高まること必至。

リード・ギターが奏でるメロディもリリカルで実に美しい。「ギターが歌っている」とさえ言えるかもしれない。イントロやサビでその傾向は顕著だと思う(もちろんリフはスラッシュ然としているけど)。アルバムのオープニングを飾るインスト・ナンバー01"Apocalypticon"の印象的なメロディはその象徴だ。

さらに,04〜07の中盤の流れがとにかく圧巻。04"Totalitarian Terror"におけるサビの歌メロとギターの叙情性,05"Gods of Violence"の禍々しさ,08に負けず劣らずキャッチーな06"Army of Storms",そして勇壮で胸踊る07"Hail to the Hordes"――。KREATORの新境地と言える素晴らしい曲が息つく間もなく繰り出される。

その他にも,もはやスラッシュではなく正統派のメロディック/パワー・メタルと言ってもいい雰囲気の曲や,テンポを落とした重厚で迫力満点の曲もある。全11曲のすべが個性的で,似たような曲は1曲たりともない。いわゆる「捨て曲」などもってのほか。充実の55分である。

繰り返しになるが,よりメロディアスになったヴォーカルとリード・ギターの影響で,どの曲もドラマ性が一段と高まっているのが本アルバム最大の特徴。。もちろん基本はスラッシュ。速い時は速いし,重い時は重い。畳み掛けるような迫力も健在。従来のKREATORらしさはそのままに,新たに加わった叙情性という要素が彼ら本来の魅力と高レベルで融合している傑作だ。

KREATORは90年代後半にスラッシュ・メタルを脱して,遅くて重いメランコリックなゴシック・メタル路線に方向転換した時期があったが,その時の経験が30年経って生きているのかもしれない。2014年のLOUD PARKでは凄まじいパフォーマンスを披露し,最前列にいた女性客に涙を流させたKREATOR。次に来日した時にはさらに強力な扇動力を見せつけることだろう。

【収録曲】*輸入盤
01.Apocalyticon
02.World War Now
03.Satan Is Real
04.Totalitarian Terror
05.Gods of Violence
06.Army of Storms
07.Hail to the Hordes
08.Lion with Eagle Wings
09.Fallen Brother
10.Side by Side
11.Death Becomes My Light

*アメブロからの転載です。

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