わたしの叔父さん <ネタバレあり>

フラレ・ピーダセン脚本・監督・編集

2019年の東京国際映画祭でグランプリを受賞。
それ以前は本国デンマークでは19館のみの上映だったが、受賞が大きなニュースとなり”凱旋”後は80館にまで拡大上映された。

本当の姪と叔父が”両親を亡くした姪と彼女を引き取り12年間同居している足の不自由な叔父”を演じる。

舞台となった農場は”叔父役”のハンセン氏が実際に所有しているもの。監督が取材のために滞在していてハンセン氏もろとも気に入ったため、ロケ地に決め、ハンセン氏の出演も依頼した。

撮影チームは監督、録音・照明担当のサウンドミキサー、プロデューサーの3人のみ。

主演の新人女優イェデ・スナゴー自身も劇中のクリス同様獣医を目指していたらしく、動物の扱いがうまい。

ちなみに獣医役は、地元の本物の獣医。

監督自身の出身地でもある南部ユトランドで衰退しつつある、小規模農場の暮らしを記録に残したいという監督の強い思いで作られたため、方言が話せる人ということが重要な条件だったようだ。

2人の日常がフィックスカメラの映像をメインに映し出され、小規模農家の過酷さが良く伝わる。

姪と叔父の関係は、「姪に助けられている叔父」かと思いきや、「叔父の存在に救われる姪」でもあることにだんだんと気づかされて行く。

夢を諦めざるを得なかった自分の境遇を呪っていた彼女だが、いざ、広い世界が開かれると叔父のいる安穏とした生活を求めてしまう。

でも、これは単純に共依存とは言えないとおもった。

14歳で衝撃的な理由で家族を失ったクリスは、十分すぎるほど喪失感と取り残される恐怖を味わっている。

また家族を失うかもしれない不安に脅かされながら冒険するには、過酷すぎる人生をたどってきている。

それでも、少しずつ。
スマートフォンの利便性や近くにいる他者からの刺激で少しずつ、世界は広がっていくだろうと思う。

何よりも、叔父を失ってしまうかもしれないという恐怖を感じた事件をきっかけに、ただ漫然と送っていた生活から、彼女自身が「叔父に救われていた自分」を自覚しながら日々を送れるようになった。

姪の人生を優先したときに自立の必要性を感じ、リハビリをするほどの愛を持った叔父を去りがたい気持ちは痛いほどわかる。
出会ったばかりの男に「一生面倒を見るのは無理だ」なんて言われる筋合いはねえ!!

叔父への感謝を自覚できたことが何より大きな一歩だったのではないだろうか。

破れたTシャツを着ながら、スーパーでデートを控えたクリスに「これは必要なものだ」と、ヘアアイロンを買ってやる姿が泣けてきた。

しかし、本当に農場の個人経営は熾烈だ。
世界共通だと思う。
でも彼らのおかげで我々の食卓が守られてきた。

大手を利するために、中小経営者が排他されるようなことがあってはならない。


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@恵比寿ガーデンシネマ


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