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初めての脱毛は25歳の時だった。

部位は「ひげ」「わき」「脚」の3か所である。女性になりたかったわけでは全くなかった。ただ、綺麗な男の子(今でいうジェンダーレス男子)になりたい。と願っていたため、特に「ひげ」の存在がどうしても許せなかった。もともと体毛が薄いほうだが、美白ケアした白い肌ではどうしても目立ってしまう。

外出する予定があるときは、数日前から伸ばしておいて前日夜に泣きながらピンセットで1本1本抜いていたのだ。一度抜くと3週間程度は無毛が続いてくれるが「このルーティーンはいつまで続くのだろう・・・」という思いが募っていった。

外では「もともと体毛が薄くひげも生えない」という設定にしていたため、誰にも相談することができなかった私が脱毛という手段と出会ったのは、バイト仲間の"TOSHI"のおかげだった。彼女はエステシャンをしながら空いた時間でバイトするダブルワーカーである。

バイト仲間数人で温泉旅行をした時の事お風呂上りにみんなで夕食をとっていると「キノくんはホントキレイなお肌でツルンツルンだねぇ💛おひげなんて生えないんでしょう~うらやましい~!私の周りにいる女子はみーんな毛深くて脱毛にお金がかかるって泣いてるよぉ~」とTOSHIが言った。

「え?女の子なのに毛深いの??脱毛??なにそれどういうこと??」

「女の子だからってみんな毛がないわけじゃないのよ~!毛深い子なんておひげも生えてるしてさ~。毛穴に針刺して電気で毛根焼いていくからいたいのよぉー」

「そうなんだ!毛深い女の子もいるんだねぇ。僕知らなかったよ。脱毛って痛そうだね。エステだと女性専用なのかな?僕も実は抜いてるから、全然つるつるなんかじゃないんだぁ」

「あらん、毎回抜いてたら大変そうだし、お肌に良くないわよ~!キノくんも絶対脱毛したほうがいいわよ~!!」

その一言で脱毛を決心したのだった。

ネットで脱毛サロンを検索するも、女性専用エステが主流だった時代、なかなか男性の脱毛サロンが見つからず諦めかけていたところに、美容外科のレーザー脱毛をできるということを知った。

今はすでに倒産してしまった神奈川美容外科クリニックでカウンセリングを受け、口上から顎下まで全体をカバーする「アレキサンドライトレーザー1年間受け放題」で10万円のコースに決定。レーザー照射の頻度は、3週から4週に一度。毎月きっちり通い続けること10回でツルンツルンの肌を手に入れた。当時10万円の出費は痛かったが、これまでの手間や苦悩を考えると心は晴れやかだった。

その後、「わき」「脚」の脱毛を行い男性時代にムダ毛の処理は完了した。このころ私は、自分が性別移行をすることなど想像もしていなかった。

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