瀧波ユカリ『臨死‼︎江古田ちゃん』

瀧波ユカリ『臨死‼江古田ちゃん』(1)~(7)(アフタヌーンKC)

「月刊アフタヌーン」で連載中。

主人公は東京都練馬区にある江古田駅周辺でひとり暮らしをするフリーター「江古田ちゃん」。

江古田ちゃんは家の中では全裸の「裸族」で、はじまりは「全裸でご挨拶」が定番。

(第七巻 3頁)

このコマが江古田ちゃんに惹かれる人とそうでない人を分ける指標みたいなものになっている。わたしは勿論前者ですから、江古田ちゃんに惹かれる理由をなるべく丁寧に書いていきます。

ページをめくると、モテ女子「猛禽」対する畏怖、男性の浅はかさ、ひとり暮らしのアホ行為、彼氏「マーくん」の非情な扱い、江古田ちゃんを信じてやまない「信者くん」、女王様ラミーちゃん、女装子(じょそこ)ミカちゃん、友人M、ぉねぇちゃんなどなど…との日常が描かれている。

江古田ちゃんは数限りない試練を乗り越えた人生の兵(つわもの)である。誰かに守ってもらうのではなく、「自分を守れる自分」を作る、自衛のスペシャリスト。
でも、そうしたくて生きてるわけじゃない。隙あらばモテたい。愛されたい。守って欲しい。ていうかなんであの子はあんなにモテるんだ?!みたいなひがみやっかみを抱えつつそれを表に出さないように生きる。これが「凡女美」。
凡女が生きていくための武器って何なんだ?ということを、江古田ちゃんで学ぶことができます。
「可愛いは作れる」、けれど限界があるしその限界をさらに上回る可愛さを持った女性が大勢いるという絶望を経験した凡女はとてもたくましく生きられる。その現実を突きつけつつ凡女の武器を追求する漫画が『臨死!!江古田ちゃん』なのです。だから死にそうなの。

そんな兵の江古田ちゃんは「おかしな思考・感覚」を許さない。間違った日本語を使うマニュアル店員、通りすがりの変態、礼儀に欠ける人などが主に登場するが、会話の中で「上から目線の物言い」をしてイラッとさせる一般人も出て来たりするので、あれ、わたしもこんなこと言ってないよな?とドキッとさせられる。

「臨死‼」とは言え江古田ちゃんは毎日悩み苦しんでいるわけではなく、けっこう気楽な生活を送っている。

(第七巻 19頁)

ちいさなことでも日々鍛えられた想像力で笑えるって、とても楽しいし幸せ。なにが楽しいの?っていったらこんなアホみたいなことを思い付く自分。江古田ちゃんを読んでると、自意識をこじらせて誰かに迷惑かけて面倒臭い時もあるけど、そんな自意識過剰な自分が好きだなと思える。

自分は「凡女」だよなと思う人、我こそは自意識過剰だと思う人、ひとり暮らしで「笑う」機会がぐんと減った気がすると思っている人は江古田ちゃんを全巻揃えて読みましょう。

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