本の内容とかをよく覚えている話

私はたぶん人より記憶力がいい。
大学生の頃、映画の話を、あらすじという枠を超えて1から10まで話したら友人にかなり驚かれた。その時に、気に入った映画や小説はストーリーを事細かに話せることが意外とすごいことだと教えられた。驚いた。

大人になって気づいたことだが、私はエピソードを人から聞いたり、本を読んだりした際に頭の中でそれを無意識に映像化する。
だから小説の中の登場人物も、頭の中で映像化しているので、このシーンのこの表情がかわいかった、このセリフの言い方が意地悪だ、などを感じる。

以前、中学生の頃に読んだ小説を、いつでも手に取って読めるよう購入したことがある。
購入する前はすべてのシーンを人に聞かせられるくらい内容を覚えていた。
しかし、購入してパラパラと本を再読していたら、いろんなシーンが映像化できなくなってしまった。映像化しようとすると、本のページの中の文字が先に出てくるようになってしまい、映像化できないシーンが複数できてしまった。
そのことに戸惑って、もったいない気がしてその本は結局人に譲ったのだが、映像化しづらくなってしまった部分はそのままだ。

なぜ映像化できなくなってしまったのかを考えてみると、おそらく、最初に読んで私の中に映像が出来上がったところから、私の中で、映像が少しずつ形を変えていっていたからだと思う。

だから、再読した時、本の中にある「正しい情報」とほんの少し食い違いがあることが整理できなかったのだと思う。

しかし、初読の際にすでに購入していた本(読み終わってもいつも読める状態だった本)は何度読み直しても映像が崩れることはない。不思議。
おそらく、最初に出会った文字情報に出会えない間にその情報を補うために想像し、自分の中のイメージが膨らんでいくのだと思う。しばらく訪れなかった子どもの頃の思い出の場所を美化してしまうような感じで。

人は過去とか記憶とかを美化してしまう生き物だなあと思いつつ、すごく気に入った本があったら直後に買わないと頭の中で遊べなくなってしまうなと感じた。

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