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安全運用のための発令

安全運用に関する発令についてのまとめです。

★過去問CHECK★
第19回(49)「MRI検査時の鎮静に関する共同提言」

第18回(49)「臨床MRI安全運用のための指針」
第17回(49)「臨床MRI安全運用のための指針」
第16回(50)「臨床MRI安全運用のための指針」
第15回(47)「植込み型医療機器等のMR安全性にかかる対応について(48)「臨床MRI安全運用のための指針」

日々の業務にも関わる大切な発令ですので,一読しておくとよいと思います。

「植込み型医療機器等のMR安全性にかかる対応について」
令和元年8月1日付 厚生労働省医薬・生活衛生局

「臨床MRI安全運用のための指針」
最新版:令和3年(2022年)5月31日一部改訂版 日本磁気共鳴医学会
改定前:令和元年8月5日付(令和2年3月19日一部改訂)日本磁気共鳴医学会

「MRI検査時の鎮静に関する共同宣言」
2020年2月23日 改訂版 日本小児科麻酔学会•日本小児放射線学会

過去問は日本磁気共鳴専門技術者認定機構のホームページにPDFデータが公開されておりますのでそちらをご活用ください★





問題1 植込み型医療機器等のMR安全性にかかる対応について

正しい文章はどれか.

  1. ASTMやISOに基づくMR検査に関する安全性評価をしていない植込み型医療機器を販売してはならない.

  2. MR Safeとする場合は【使用上の注意】の[重要な基本的注意]の項に「一般的なMR検査による影響はない」と記載する.

  3. MR Unsafeとする場合は【禁忌・禁止】の項に「MRI検査は禁忌とする」と記載のうえMRI装置が併用禁忌であることも記載する.

  4. MR ConditionalとするためASTMの試験規格に基づくMR安全性評価をした場合はB1+rmsの値を記載する.

  5. ISO等のASTM以外の試験規格によりMR検査に関する安全性評価をした場合は別に厚生労働省に審査申請を行う.


【解答】

  1. X 「原則」ASTM又はISOに基づく安全性評価を行う.

  2. O

  3. O

  4. X SARを記載する.  

  5. X 審査申請ではなく,使用上の注意に記載する.

  


【解説】

  1. 金属が含まれる植込み型医療機器等の製造販売業者は,「原則」ASTMまたはISOに基づくMR検査に関する安全性評価を行うこと,とされており,「販売してはいけない」わけではない.
    ただしASTMやISOの安全性評価を実施していない場合は,【使用上の注意】の[重要な基本的注意]に「本品については,試験によるMR安全性評価を実施していない。」と記載しなければならない.

  2. 正しい.

  3. 正しい. 

  4. MR ConditionalとするためASTMの試験規格に基づくMR安全性評価をした場合の記載例にはSARが用いられており, B1+rmsの値を記載する決まりはない.

  5.  ISO等のASTM以外の試験規格によりMR検査に関する安全性評価をした場合は,MR検査を実施可能な撮像条件等を記載例を参考にして【使用上の注意】の[重要な基本的注意]に記載しなければならない.



問題2 臨床MRI安全運用のための指針

正しい文章はどれか.

(1)安全管理体制

  1. 安全管理チームに含めるのは磁気共鳴専門技術者に準ずるものでもよい.

  2. 安全管理チームの会合は6ヵ月に1回以上行う.

  3. 安全管理責任者や安全管理担当者は,安全性に関する講習会に少なくとも2年に1回参加する.

  4. 医療従事者への講習は年1回以上行うこと.

【解答】

  1. O 

  2. X 安全管理チームの会合は年1回以上

  3. X 少なくとも年に1回参加することが望ましい.

  4. X 定期的に行うこと.


【解説】

安全管理体制として,施設内にMRI検査を管理するチームを作ることが求められている.このチームは1名の責任医師,その他の医師,診療放射線技師もしくは臨床検査技師,看護師などで構成され,構成員には「磁気共鳴専門技術者あるいはそれに準ずるものが含まれることが望ましい」とされている.
安全管理チームの会合は年1回以上行い,施設内での医療従事者への講習を定期的に行うことが求められている.
安全管理責任者や安全管理担当者は,MRIの関連団体にて安全性に関する講習会に年1回程度,定期的に参加することが望ましい.

※発令当初は「少なくとも5年に1回」の参加が望ましい,とされていましたが,令和2年3月19日一部改訂版にて年1回とされました。


(2)MRI検査前の安全管理

  1. 医療従事者および作業従事者の金属持ち込みを防止する教育及び管理体制(マニュアル作りなど)を整備する.

  2. メンテナンス関係者に対する安全管理体制の整備を求めている.

  3. 金属持ち込みを防止する教育の整備の対象には,メンテナンス関係者は含まれるが,検査室内に立ち入る修繕作業者は含まれない.

  4. 作業従事者とはMRI装置のメンテナンス関係者および室内外の修繕等のための作業者を指す.

  5. 安全管理の為に入室者制限を設けるように求めている.

【解答】

  1. O

  2. O

  3. X 検査室内に立ち入る修繕作業者も含まれる.

  4. X 室内の修繕等のために検査室内に立ち入る作業者を指す.

  5. X 入出者制限は特に記載なし.


【解説】

検査前の安全管理として,医療従事者および作業従事者の金属持ち込みを防止する教育及び管理体制を整備することが求められているが,入室者を制限することは特に記載されていない.金属持ち込みを防止する「作業従事者」はMRI装置のメンテナンス関係者および「室内」の修繕などのために「検査室内」に立ち入る作業者を指す.



(3)MRI検査中の安全管理

検査中は患者の状態を監視し,必要に応じて心拍数,血液酸素飽和度などの観察を行うこと.
 
 
【解答・解説】O
検査中は患者の状態を監視し,必要に応じて心拍数,血液酸素飽和度などの観察を行い,患者からの中止要請(患者緊急コール)を伝えるシステムを利用した運用体制を整えること.
また,緊急時のバックアップ体制を構築し,運用マニュアルを整えること,とされている.
 
 

(4)造影剤使用の安全管理

  1. MRI造影剤の使用においては必要に応じて同意書を取得する.

  2. 造影剤は使用削減する.

  3. 安全管理責任者は造影剤に関する講習会に5年に1回程度,定期的に参加することを求めている. 

 【解答】

  1. X 造影剤の使用においては同意書を取得する.

  2. X 使用削減は求めていない.

  3. X 少なくとも2年に1回参加するよう求めている. 


【解説】
MRI造影剤の使用においては同意書を取得しなければならない.
安全管理責任者や安全管理担当者はMRI造影剤に関する講習会に少なくとも2年に1回の参加を求めている.使用上の注意改訂など,重要な情報の周知をはかるためである.
造影剤の使用削減については言及されていない.



(5)MRI装置の品質管理

  1. 終業時点検ではファントムを用いて画質の維持・向上に努めることを求めている.

  2. 保守点検は少なくとも1年に1回実施するのが望ましい.


【解答】

  1. X 始業点検で求めている.

  2. X 保守点検は少なくとも6ヵ月に1回実施するのが望ましい. 

 
【解説】
保守点検の頻度は6ヵ月に1回が「望ましい」とされている.またファントムを撮像しての画質の維持向上は始業時に行うことを求めている.



(6)非常時の安全管理

非常時の安全管理として災害への対応へのマニュアルを備えることを求めている.

 
【解答・解説】O
患者の安全確保,クエンチへの対応,地震・火災・浸水・停電などの災害への対応マニュアルを備えていることが求められる.


※最新の令和3年(2022年)5月31日一部改訂版で改定された項目は注意書き部分の2点でした。
・安全性情報に関するリンクが増加
・鎮静に関する共同宣言の年号が2020年のものに変更


問題3 「MRI検査時の鎮静に関する共同提言(2020年2月23日 改訂版)」について正しい記述はどれか。


  1. 小児患者のMRI検査のための鎮静をより安全にするための基準を示している.

  2. 鎮静の深さに応じた安全基準を設けることの意義は大きい.

  3. どの鎮静薬も危険である.

  4. パルスオキシメータ―は換気のモニターである.

  5. モニターで監視すれば十分である.


【解答】

  1. O

  2. X 意義は小さい.

  3. O

  4. X 酸素化のモニターである.

  5.  X 十分ではない.


【解説】

  1. 日本小児科学会,日本小児麻酔学会,日本小児放射線学会が共同で「MRI検査時の鎮静に関する共同提言」を作成した.この提言の目的は,小児患者のMRI検査のための鎮静をより安全にするための基準を示すことである.

  2. 提言の前文として強調されている項目は大きく4点ある.
    ①    鎮静は自然睡眠と全く異なる
    ②    鎮静の深さは「一連のもの」である
    ③    どの鎮静薬も危険である
    ④    パルスオキシメーターは酸素化のモニターであって,換気のモニターではない


    ②鎮静の深さは「一連のもの」である
    鎮静の深さは「一連のもの」であると言わざるをえない.すなわち深さに応じた安全基準を設けることの意義は小さい.実際の診療においては,MRI装置の激しい騒音下に長時間の不動状態を維持するために,防御反射を維持できない「深い」鎮静になりがちであり,その場合に如何に早く気づき対処するかということが重要である.

  3. ③どの鎮静薬も危険である
    どの薬剤が安全でどの薬剤が危険,ということはない.あえて言えば,どの薬剤も危険である.なぜなら鎮静薬は気道,呼吸,循環のコントロールという声明を守る機能に作用する薬であり,その上浅い鎮静から全身麻酔までは「一連のもの」だからである.浅い鎮静のみ達成しうるという薬はない.

  4. ④パルスオキシメーターは酸素化のモニターであって,換気のモニターではない
    パルスオキシメーターは鎮静を行う上で必須であるが,モニターしているのはSpO2だけである.SpO2だけ見ていると,気が付かないうちに呼吸性アシドーシスが進行し,脳圧も上がり,危険な状態に陥っていることがあり得る.

  5. 患者の監視について
    MRI対応のパルスオキシメーターの使用は必須である.しかしこれだけでは換気の評価ができないため,低換気による弊害を防ぐために,可能な範囲で目視による監視を行い,MRI対応のカプノメーターを使用する.
    バイタルサインや鎮静薬の投与時間,投与量などを経時的に記録するスタッフを配置することも求められている.また,鎮静を行う前に,蘇生行為が必要となる状況を想定し,蘇生に必要な物品等がすぐに使用できる状態であることや,患者の禁忌事項の確認をする必要もある.
     

【参考文献】
MRI検査時の鎮静に関する共同提言(日本小児科学会・日本小児麻酔学会・日本小児放射線学会2020年)


【安全性情報に関して参考にすべき関連学会・関連行政機関のHP】
安全性情報・ガイドライン等|一般社団法人日本磁気共鳴医学会 (jsmrm.jp)
医療従事者からの報告(副作用・副反応・感染症・不具合報告・疾病等報告) | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 (pmda.go.jp)
公益財団法人日本医療機能評価機構|医療事故情報収集等事業 (med-safe.jp)




★過去問CHECK解答★
第19回(49)1,5
第18回(49)5
第17回(49)1,4
第16回(50)1,3,5
第15回(47)4,5(48)3,4,5


※解答は個人見解です。

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