格言_190307

1986年にアパレル企業のワールドに入社して

企画生産や人事の仕事に従事した富島公彦氏は、

2001年にユナイテッドアローズに

人事開発課長として入社し、

採用と販売員教育の体系化を行っていった。



ユナイテッドアローズ社には

「私たちは、世界に通用する新しい、

日本の生活文化の規範となる価値観を創造し続けます」

という会社理念がある。


また「店はお客様のためにある」

「お客様のお役に立つ」「お客様に得していただく」

「お客様の要求を満たす」という社是もある。


富島氏はユナイテッドアローズの採用担当として、

どんなに優れた能力や専門知識を持っていたとしても、 

この理念や社是に共感できない人は絶対に採用しない、

同じく強い想いを持つ人を仲間に入れる、 

ということに絶対に妥協はしなかったという。



富島氏が入社した頃のユナイテッドアローズは、

アルバイトを合わせても500名足らずの会社だった。


会社が急拡大していく中で、

「違う価値観を受け入れる」という理由づけで、

専門分野のスキルを持っているものの、

理念にはあまり共感できない人を採用したことがあった。


しかし、社内でみんなが振り回された挙句に、

早々に辞めてしまった。


能力がある人だけに、会社にとって

負の力を発揮した時は問題になることもある、

と大きく感じた出来事であった。


個性的な人や異なる価値観を持つ人を受け入れることは

大切だが、それはあくまで「根幹のベクトルは同じ」

という前提があったうえでの話である。


多様な人がいる組織のほうが強いが、

ベクトルは同じ方向に向いていないと、

せっかくの力が分散してしまうのである。



ユナイテットアローズはどんな時でも業績が良いので

とても優秀な人を多く採用できているのだろう、

とよく言われるが、実際には

他の企業より飛び抜けて優秀な人が多いわけでもなかった。


同社が業績が良い理由のひとつは、理念を通じて

全社員のベクトルや価値観が合っているため、

余計な労力を使うことなく個人の全ての能力を

目の前のやるべき仕事に集中できるからである。


つまり、一人当たりの生産性が高いのだ。


会社自体が迷走したり、価値観の違いや派閥争いなど

方向性が定まっていない会社では、根回しや何やらに

パワーを使ってしまいます。


さらに本来やるべき「お客様にとって正しいこと」が

できないジレンマに陥り、社員は心身ともに疲弊して

本来の能力が発揮できずパフォーマンスも上がらない。


全員が同じベクトルを向いているのであれば、

生産性も高い上に、何かあっても修正力が高いのだ。



同じ理念を共有する人ばかりが入社すると、

他社の内定をすでに持っているのに

ユナイテッドアローズを受けに来る人が増えた。


なぜすでに他社に内定しているのに

当社を受けてくれるのかを聞くと、


「採用サイトと説明会、選考と進むに連れ、

採用サイトで行っていることと説明会の内容が

違っていたり、選考時の面接官の態度などに

矛盾を感じてしまって、本当にこの会社を

信じていいのかわからなくなって悩んでいるから」


と言っている学生が多かった。


最近の企業の採用サイトやホームページを見ていると、

学生のご機嫌取りのようなものが多い。


当社に入ればこんな楽しい社会人生活が待っていますよ、

といった良い部分ばかりのアピールです


良い部分をアピールすることはとても大切だが、

事実と違うことや古代した内容を伝えても、

母集団は多く集まるかもしれないけれど、

自社の理念や価値観に合わない人を集めてしまう。


学生も後で「何か違うな」と分かってしまい、

労力をかけて選考して内定を出しても辞退されたり、

入社しても3年以内にすぐ辞めてしまったりする。



採用にあたっては母集団の数ではなく質、

つまり理念(価値観)に共感した母集団形成が大切である。


だから、採用サイトや説明会SNSなど

会社の理念や価値観を伝える場では、

一貫したメッセージを伝えることが大切である、

とユナイテットアローズの元採用担当者である

富島公彦氏は述べている。




理念が違う人間が混じると、大変なことになります。


「どうしてそうしなければならないのか」

を理解させることに時間がかかるし、

「そうしなくてもいいではないか」

という別の理念との議論が始まってしまいます。


それはお客様のためでも誰のためでもない、

ただ議論や軋轢のためだけの時間の浪費になるのです。


たとえば野球チームやサッカーチームで、

ほぼ全員が「絶対に勝利をしよう」と言っている中で、

「別に勝利しなくても、のんびりやればいいんじゃない」

という人が一人二人混じることで、

チーム全体の勝利への執着心が薄れてしまいます。


チーム全体が強くなるためには、

理念を共有することが大事なのです。


みんなが同じ方向に向かっているからこそ、

どうやって助け合えば良いのかもわかりやすいし、

どのように支えあえばもっと強くなれるのかも

メンバーの中ですぐに分かります。


企業の人材採用というのは、

優れた能力を持つ人を探すことも大事ですが、

「同じ方向を向く同志」を探すことが、

非常に大切なことなのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?