令和いらねえ釣りはホットケーキ ver.2/2024年6月26日


2024年6月26日。濱田高志さんから封書が届いていた。この2年間、毎月エッセイを書いていたフリーペーパー「月刊てりとりぃ」、その最終号だった。しばらく休止していた「月刊てりとりぃ」を期間限定で復刊するにあたっては宇野亞喜良さんから「またやってほしい」との声があったと聞いた。その再開版に、書き手のひとりとして声をかけてもらった。光栄だったが、率直に言って、自分でいいのかとも思った。休刊前から「月刊てりとりぃ」は知っていたが、いつもおじけづくほどのお名前が並んでいたし、濱田さんと仕事をときどきするようになってからも、「てりとりぃ」の世界はぼくが興味があっても、書くことはないだろうと思っていた。なので依頼は意外。しかし、単純にうれしかった。2年限定で全24回発行と決まっていたから、その限定ありきでテーマを考え、雨の降る名古屋の夜、街を歩いているときに「24時間の時報ごとにエッセイひとつで全24回になる」と思い当たった。タイトルは「24時間24丁目24番地」。思いついたとき街にいたからだった。連載を始めてから、ピエール瀧の単行本が似たタイトルで出てしまい、少しだけ後悔したが、向こうがいる場所に比べたらこっちはクローズドで、しかもぼくの立ち位置は隅の隅なのでまあよかろうと。午前6時からスタートして、午前5時で終わった。

「月刊てりとりぃ」は毎号、限定150部。都内数カ所で配布されているのだが、実際に置かれているのを見たことがない。ぼくが行く場所やタイミングが間違っているのかもしれないが、1箇所ごとの割り当てを考えれば、見つけられない理由もわかるというもの。すぐになくなっているのだ。また、フリーペーパーとしての運営で、制作費は濱田さんの自費持ち出し。だれひとり利益を享受している者はいないから、すべての執筆者はノーギャラ。それについては、依頼の段階で濱田さんから説明を受けているから、まったく納得していいる。じゃあその代わり、たくさんの読者に届くようにしますよ、なんて浮わついたコンサルタントみたいなことも濱田さんは言わない。“非バズ”で結構。限られた場所で、わずかな人に届くから面白い。それは見えないところで言いたいこと(たいていは陰口)を言う、みたいな狭い了見ではなくて、いわゆる“同人”という感覚からしか生まれ得ない美学(とその継承)にこだわっているのだ。ぼくも含めた執筆者たちにとっての原点の確認でもある。毎回、なんの飾り気もない封書が届くと背筋がピンと伸びる気がした。得難い2年間をありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?