クラウドファンディングを外から見て

 前職でクラウドファンディングに携わっていた私が、退職してネットに一切触れず半年後、クラウドファンディング業界を見渡して感じたこと、またその可能性に関して少々まとめてみたい。

私が在籍していた期間というのは、クラウドファンディングが日本に根付いていくのかどうなのか?という分岐点にあったように思う。

プラットフォームがどんどん乱立し、各社が特色を競い合い、業界認知を広めていくタイミングだ。

米国ではKickstartarやindigogoが市場を確立し、魅力的な案件に世界中から支援が集まり、投資家たちも注目するサービスへと躍進を遂げていた。様々な案件の中には数億円を集めるものもあり、ソーシャルネットワークのパワーを見事に見せつけられた印象が強い。

一方、日本の市場はまだまだ未成熟である事は否めなく、どうしたら「日本のクラウドファンディング」は成長し、成熟するのか、というのは各プラットフォーム運営会社が今尚必死にトライを繰り返している部分だと感じる。

私が会社を辞め、療養し、改めてクラウドファンディング業界を見た印象は、「あまり変化は無い」という事だ。

各社のパワーバランスに多少の変化はあれど、プラットフォーム全体としての成約率、成約金額のアベレージ、最高金額、案件の質は概ね一定。むしろ、プラットフォームによっては低下しているのでは?と感じるところも少々あるな、という印象。

【変化が感じられないと思ったポイント】

1.声が大きい起案者の成約率が高い。端的に言えば、Facebookでの友達人数が多いと、案件の質に関わらず成立している印象。公開性と集客性が強みであるプラットフォームを運営している割に、其れ以外からの支援が少ないと言うことは、案件の本質的魅力が低く、「この起案者とつきあいがあるから」といった「人」ベースでの支援動機が大きいものと思われる。これは少々残念。起案者が知らない人でも、案件が魅力的なら支援する!というのがソーシャルネットワークの本質的なパワーでは無いだろうか。

2.上記に付随して、どんな案件であれば支援をしてもらえるのか?といったプラットフォーム側でのキュレーションやブラッシュアップの能力不足が感じられる点。これってクラウドファンディングじゃなくても良いんじゃないの?と感じるプロジェクトも多い。

3.起案者と支援者との関係性が希薄。集めてリターン品送って終わり。というケースがほとんどでは無いだろうか。よくマーケティング使われる「3R⇒Relationship(支援者との関係強化)、Retention(継続的な支援)、Reputation(口コミやレビュー)」が欠けている。集めるまでは必死に告知、シェア依頼などはするものの、「その後」の動きに関してはスパッと切れてしまう案件がほとんどでは無いだろうか?

これらの3点をケアしない限り、どんどんプラットフォームの存在意義がなくなっていくものと思われる。以前、「プラットフォームに掲載する意義は集客性のみである」と言われたことがある。サイトへのアクセスデータを見る限り、Facebook経由が8割であり、それってプラットフォームの集客では無くFacebookに依存しているだけで、そもそもプラットフォームの存在意義を「集客性」以外に創りださなければ将来性は無いに等しい、と考えていた事を思い出した。この考えは今も変わらない。

それを作り出すためには、プラットフォーム側のキュレーション力を上げること。起案者から相談が来た場合、その内容のイシューはなにか、ターゲットは誰か、コンセプトはどうなのか、アプローチとしてクラウドファンディングは最善手なのか、を如何に正しく判断していけるのか。案件によっては補助金、寄付、その他の手段が最善かもしれない。まだ、掲載タイミングが今では無いのかもしれない。そういった事を緻密に判断する能力が求められているように思う。

また、3で記述した3Rに関しては、案件掲載する前、中、終了時、その後(長期的に)といったフェーズに分けたフォローアッププランを構築するべきだろう。支援して成立した、そのプロダクトは今後どうなっていくのか、イベントはどうなっていくのか、支援側としては気になって当然だろう。プロダクトが完成したけど、半年後に気になって検索してみたら頓挫していた。では悲しすぎる。それに気がついている起案者は、Facebookグループを受け皿にして関係性を継続させたりしているわけだが、全部が全部そうではなく、レアケースだ。これらを補助するような機能、フォローアップがプラットフォームに求められるのだろうと思う。

以上が私がパッと見て感じたことで、うーん、ちょっとクラウドファンディング業界大丈夫?と思っている次第。

そんな中、こんなサービスがアメリカで始まってた。

https://credibles.co

こちら、実店舗を持つ飲食店に限定したクラウドファンディング的なサービス。これは良いね!とっても良いと思う。

何よりも、コミュニティ重視の視点から発生している点で、顧客との関係性や両者のメリットの打ち出し方が明確でシンプル。

支援は食事券のみ。来店時に支援金額に応じて値引きするといった内容。決済方法もPayPalで利便性が高い。

店側からすれば、支援者から即時入金があるため、キャッシュフローが安定し、設備投資の見通しも立てやすく、「攻めの経営スタイル」を取りやすくなることだ。これが上手く行けば、支援者側も享受できるメリットは大きくなる。好循環が発生するという仕掛けだ。

集めた金額がどう使われているのか?といった部分に対して、どうった形式で公開し透明性を打ち出し、信頼性を構築していくのか?については、もう少しケアする必要性はありそうだが。実際に店舗に来る支援者とコミュニケーション出来るというのは両者にとって大きな安心感や信頼感につながっていくんだろうなと。

こういった地に足が付いたサービスは力強さがある。日本でもやるといいんじゃないかな。それこそ、地場ネットワークは比較的強いお国柄だと思うしね。

余談でしたが、これ展開したいな〜と思っている方いらっしゃったらお話してみたいな〜なんて思ったりしてます。

それじゃバイバ〜イ!

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