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天に救いを求めた末裔#4

私はTD100023。
対タルパ撃滅用ヒューマノイドインターフェース
その10万23号…個体識別名the end(打ち止め)。

与えられた任務はタルパに憑依された者の排除。
主兵装はイサカM37。
副兵装は備前長船(ビゼンオサフネ)。
兵装を使用する事が望ましいが、
やむを得ない場合は徒手による排除を行う。

歴代のインターフェースが兵装のみに頼り、
その多くがタルパ憑依者に破壊された過去から、
格闘プログラムを組み込まれたモデルが標準となった。

戦局を覆すに至らず人類はいたずらに犠牲者を増やし続けていた頃、
突如として現れた稀代の天才工学博士が、我々ヒューマノイドインターフェースを対タルパ撃滅用にプログラムと義体をオーバーホールして戦線に送り込んだのが50年前。

人類が渇望したタルパを根絶する日まであと1歩となった時、彼は私の手によりその命を落とすこととなる。
戦闘により損傷した箇所を修復するためにスリープモードとなっていた私に不正プログラムを上書きした何者かが描いたシナリオ通りに。

彼の死に関係なく人類はタルパを討ち果たし、世界に残されたわずかな陸地を拠点に天空への移住計画を進めていった。
海面が年々上昇し、この星のすべての陸地を飲みこむまでのタイムリミットが25年と判明したからだ。
それまでにタルパに一応の勝利を収めた人類は皆一様に焦っていた。

用済みとなったヒューマノイドインターフェースの多くは、天空に浮かべる巨大都市の建造に従事した。
人間と違い疲労と不満を漏らさない理想的な労働力は、機械的損傷個所を直されることなく無休で貢献することを強要された。
彼らと違い心を持たない我々は物であり、命令に反することはない。
労働力にならないまでに損傷が著しい個体は解体され、数を減らしていった。

私は人に害をなすはずのないヒューマノイドインターフェースのイレギュラー個体として分析と解析が行われ、博士を殺害するに至ったプログラムの書き替えを行った人物の特定が急がれた。

しかし、結果は不明。
誰が何の目的で博士を謀るに至ったのか?
有耶無耶のまま空中都市は人類に貢献したヒューマノイドインターフェースの退場と引き換えに完成した。
何かの犠牲の上に成り立つ人類の歴史は今回もまた轍を踏み、偽りの平穏を享受することで永らえることとなる。

最後の陸地の浸食と共に私の安置された研究室は海へと消え、対タルパ用に造られた人類の希望を背負っていた私は朽ちることも、壊れることも叶わず水底に深く、深く沈み忘却の彼方の存在へと堕ちた。


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