卵が本当に好きだから
雑な人が作った雑なすき焼きを数人で食べた。
雑な人が作ったから味がよくわからなかった。
「濃い?」
「濃いような、薄いような…」
「甘い?」
「甘いような、しょっぱいような…」
「しょっぱい?」
「しょっぱいような、甘いような…」
雑な人が「でもほら、すき焼きって卵じゃん!」と雑なことを言い、
「たしかに」
「生卵さえあれば」
「たしかに」
ふと隣の男性を見ると、取り皿に割った卵をずっと全くといていなかった。
「卵をとかないのですか」
と聞いたら
「俺は、卵が本当に好きだから、最初は白身だけで楽しむ」
と言って、取った肉をチョコン…と卵の白身部分に当てて、食べていた。
……………
『卵が本当に好きだから』
人生で初めて聞いた言葉だが、とても響きが良いと思った。
よくわからないが。
日々とは、よくわからないことの連続だ
最近は、物事をあまり追求しないほうが面白いような気もしている。
「卵が本当に好きだから」
もう、言葉のゴールじゃん
かなわん
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