ちょっと高い食パン

ちょっと高い食パンでも買おうかなってちょっと高い食パンの店に行ったら20歳ぐらいの同棲カップルみたいな2人が「上の段のやつ下さい」って言ってて店員さんが「今は焼きたてなのでカットができませんがよろしいでしょうか?」と言った。
彼氏が「え、切ってもらえないって。どうする?」と彼女に問う、彼女は「どうしよう…」と言っている。なんだかずっと「どうしよう」「どうしようか…」と言っている。

家にパン切り包丁があれば自分で切ればいいし、ないなら買うのやめる、って話じゃないのか、もしかしてネットで見た普通の包丁でもガスの火で温めるとケーキがきれいに切れます、を試そうとかそういう話?というわけでもなくずっと「どうする?」とか言っている。

最終的に(店員さんに時間とらせちゃったから買わなきゃ悪いかな)という雰囲気で彼氏が「買います!」と言った。買うんだ。

たぶん普通の包丁で普通に切って失敗して「全然うまく切れないね」「あはは」「パン切り包丁偉大じゃね?」「あはは」「今度買お!」「でも味は美味しい」「見た目ひどいけど味は美味しい」「だって480円だから!」「あはは」

なんて他愛もない思い出が出来るんだろう。

他愛もない思い出。

ない。

他愛もなくない思い出なら大量にあるが。

ほとんどは忘れたい。

イヤホンの歌声は

眠そうに夜空に寝転ぶ三日月にリボンでもかけてあげたい気分

とのこと。

そんな気分になったことは今までに一度もないね。

「そんな気分になったことは今までに一度もないね」

こんなにも言う必要のない言葉、ある?

ないね。

ごめんね

え?

ごめんね

いいんだよ

(優しー)



おわり





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