お一人様一つまで体験

手作りマスクをたくさん作ってる人に「マスクのゴム買いに行くから一緒に来てよ」と言われ「嫌だよ」と言ったら「お一人様一つなんだよね。作ったマスク一個あげるから!」と言うので謎の手芸屋について行った。
まずは彼女が店内に入る。
なぜか私は外で待たされる。

彼女が嬉しそうに店を出てきた。
「買えた、じゃあ次、買ってきて」と自分の財布を私に渡す。

「レジで、マスクのゴム下さい、って言うの。レジにあるから。」と言う。
二人で行ったらダメなのだろうか、と思いつつ店に入ると

【マスク用のゴム(1点50㎝)はお一人様一つまで。同行者の方、ご家族は人数に含めません】
と厳しいことが書いてある。なるほど。

それを読み、一旦外に出る。
彼女に財布を返す。

「失礼、お客様のその財布、先程のお客様の財布と同じですね?偶然ですか?」って言われるんじゃない?だからとりあえず私が出すから。

と言ったら彼女は「リスク管理がすごすぎる」とめちゃくちゃウケていた。

いや、この店を甘くみてはいけない予感がしたんだよ。そういうの、私はわかるんだよ。

レジに行き、
「マスクのゴムをください」
と言ったら、レジのおばちゃんがレジの下のあたりからスッ…っとマスクのゴムを出した。
「280円です…」

なぜか一切目を合わせない。
これは本当にマスクのゴムか?覚醒剤ではなく?

マスクのゴムを買い、外に出ると
「買えた!?」
と聞かれ、
「うん。買えた」
と答える。

「ありがとね!あ!お金払う!」
「うん…」

「うん…」とか言いながら、
(すごく面白かったな…)
と、思った。


おわり…



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