12万円のワンピース

偶然会った知人が「今、知り合いの結婚式で着るワンピース買ってきた」と言って「へえ」「高かったけど買っちゃった」「高いって、いくら?」「12万」

「12万!?!?」と言ったら、彼女の顔色がサッ…と変わった。

たぶん(高すぎ…)と思いながらも店員さんに勧められて買ってしまったんだろう。「年齢的にもこれぐらいが普通ですよ?」とか言われたんだろう。買ったものの(普通…?)と思いながら、少しの不安と後悔を抱えながら、歩いていたんだろう。

私は「まあ、高いけど、普通じゃない?」と、言った。
1秒前に「12万!?!?」って叫んだくせに。

「普通かな?」
「うん、私も8万ぐらいのなら買ったことあるし(買ったことはない)」
「だよね!ちょっと高いけど、たぶん何回も着るし!」
「そうだよ、今後いちいち悩まなくてすむし、何かの時は迷わずそれ着ればいいんだから」
「だよね!」

また、姉の事を思い出していた。

私の姉は昔から「思ったことを言う必要はない」という、謎ポリシーを持っていた。

「会話なんて、その瞬間の為にだけある」
「適当に合わせるとか、相手が喜びそうなことを言うとか、そういうことをバカにする人もいるけど、仮に本音で喋るとしたら、私は誰の話にも興味がない。本音で話してよ、と言われたら、『誰とも話さない』の一択になってしまう。なぜなら、聞きたいことも、話したいことも、特にないので…」と言っていたのが姉が26歳ぐらいの時だったと思う。なんか、最近も同じような事を言っていた。

姉のことはずっと、

(おそロシア)

と思っているけど、

時々思い出す。

会話とは、その瞬間の為だけにある…

たしかに、
そうね…

時にね…

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