自転車にうまく乗れないんだった
わりと近くの客先の人から「もし可能なら、会社に帰るときにこの自転車に乗って帰って欲しい。明日とりに行くから。」という謎の依頼をされて「はい!いいっすよ!」と軽く承諾し、自転車に乗って思い出したんだけど私は自転車にうまく乗れないんだった。運動神経の問題ではなく、運転全般が出来ないのである。
運転。
運転が無理なのである。よくわからない。
何がわからないのかがわからない。というやつである。
車の免許も持っていない。しかもその理由が親から「あんたは運転とかできないじゃない」と言われ、妹からも「運転とかできなくない?」と言われたことなので、どうやら本当に運転とかできないんだろう。
運動神経はかなりいい。国内でも上位に入ると思う。でも運転はできない。
案の定、今自分が一体どのような状態で今なにをすべきかが全くわからなくなったのですぐに自転車を降りた。
そう、私は自転車にうまく乗れないんだった。
人と暮らした時に思い出すことに似ている。
「今日何食べたい?」「明日どこか行く?」「お風呂入る?」
毎日毎日なんらかの質問をされて、それに答えなければいけないことが本当に辛いのだ。
毎日毎日なんらかの質問をされてその都度それに答えるぐらいなら全てを命令されるほうが5000倍マシだ。
何も考えたくない。何も考えたくないんだよ。
うすらぼんやりと、生きているのと死んでいるのの間ぐらいでいたい。なるべくそうしていたい。
そう、私は、なるべくそうしていたいんだった。
自転車を引きながら夕暮れの道を歩いていたら、全てを思い出した。
そうだった。
私は、そうなんだった。
会社について自転車をとめたら、
(いや、そんなこともないな)
と、思った。
なんなんだ。
何もわからない、という事が、わかった。
フフッ
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