賭け

美容院でコロナの話になって美容師さんが「電車で咳した人がいてそれで非常停止ボタン押した人がいるらしいですね」と言い、「そうそう、ネットでみました」なんて言ったものの(この人は、コロナがすごく怖いんだろうか、そうでもないんだろうか)と考えていたら「普通に出かけたりしてます?」と聞かれ(ここは…不要不急の外出は避けてます、と言うべきだろうか、でも美容院にヘッドスパだけをしに来ている時点で…)とか考えながらも思い切って「全然出かけてます」と正直に言ったら「私も!普通に友達と外食とかしてるし、でも親に怒られましたよ〜!」と、笑って、

よかった……

以前、私より年上(47歳ぐらい?)で自分の会社の代表を務める人から突然
「最近さ、同世代の周りの独身の知り合いがみんなさ、なんでか急に若い男と付き合いだしてんの」
と言われた事がある。
「え?」
「20代とかのさ、若い男とさ、付き合ってる人多いの。バンドマンとか劇団員とか。」
「それほんとに付き合ってんですか?」
「うん。彼氏なんだって。」
「へえー…」
「まあ、独身なら、そりゃ自由だし、年齢なんて関係ないし。みんな自分にお金はかけてるからすごく若く見えるし。まだまだ綺麗だし。」

「へえー…」

「どう思う?」

「どう思う?」って。
まず、あなたはこういう話に対してどっち側なんだ。話はそれからだ。こんなのは卑怯だ。

いや、会話は常に『賭け』だ。

「私は、それは彼氏ではなく、ただのお金が目当ての男である確率がかなり高い、としか思いません。もちろん例外も世の中にはありますが。」

(よし言った。が…この人はどっち側だ?)

「ね!ほんとそれ!まあ本人がよきゃいいんだけどさあ、自覚があるならいいよ?パトロンだって自覚が!ないの!だからもう聞いてらんないんだよね!」

(勝った…)(正直さの賭けに出て、勝った)
(この人に対する信頼もあったのかもしれない)(いや、信頼ではなく希望?こちらの一方的な願望?)(とにかく)

(賭けよう)と思う時、そう、賭けた数だけが会話の数だ。

たまに負けるけど、勝った数だけ数えればいい。

まだ、死にたくはない。

やっぱり髪は切らなかった。
おわり

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