夏長編小説の長い言い訳(『アーガロン号の冒険』本当のあとがき)
注:以下は今回の夏長編を読んだ方向けです。分からない方はさっぱりだと思うので流してください、どうぞ。
少年が心を躍らせる冒険小説が大好きである。大好きである。大事なことだから二回言った。宝島やトムソーヤの冒険、海底二万里、読者を旅へいざなう数々の名作を子供のころから何度も何度も読んで来た。内向的で(どちらかと言えば)活発ではない癖に、冒険心や好奇心を人一倍持っていた僕にとってこれらの冒険小説は欲求を満たすには必要十分だった。
考えてみてほしい、学校の休み時間、雨降る休日の午後、そして夜寝る前、本を持って明りの下へ入りさえすれば僕達は何処だって行けるのだ。フリント船長の隠した財宝を追って死線を超えたり、納屋の上から自分の葬式を眺め、最新型の秘密潜水艦で全世界を旅することだって出来る。こんなに素晴らしいことはない!
まあ、御託を並べたが、今回の長編?『アーガロン号の冒険』はそんな僕の童心をくすぐってくれた小説群に対するリスペクトも込めて書き上げた。
基本的に僕は小説を書くとき、(メッセージ的な意味での)テーマは設けない。しかし、コンセプト的な意味でのテーマは毎回設けることにしている。(例えば? 前作だと『西部劇・ロボット・兄弟』とかだよ)
今作のテーマが頭に浮かんだのは昨年の暮れ、前作を絶賛執筆中、祖父母としゃぶしゃぶを食べている時だった。頭の中にぶわっと、雪の中を重厚な蒸気機関車が走り去っていくイメージが浮かんだのだ。
瞬時に次の小説の中にこれを使おうという決心がつき、三つのテーマを立てた。それが『スチームパンク・機関車・氷』だ。
テーマが出来上がると直ぐに頭の中に世界観が構築されていく、『氷河期で文明が衰退し、蒸気機関が文明を支えている世界』。スチームパンクはいつか書きたいという気持ちがずっと心の中にあったのだが、ありきたりでベタなスチパン世界を書くのもなぁ…と言う気持ちもあり、長年書けず仕舞いでいたが今回の世界観はその悩みに対する最高の回答だと思った。
同時に今回の小説では色んな事にチャレンジしようとも思った。(向上心がない僕が珍しく向上心を見せる貴重な瞬間。今後10年は見られないのではないかと思われる)全部説明して飽きられるのもアレなので幾つか紹介する。
まず一つは王道だ。(自分で言うのが恥ずかしいが)基本僕の書くものは邪道で下品で暴力的だ。少なくとも僕はそう思っている。それは自分がそういう物が好きだからでもあるし、そっちの方が書いていて楽しいというのもある。が、あえて今回はストーリーから展開、登場人物に至るまで王道で子供に合わせた設定に従った。
大凡上品で暴力性の欠片もないお話を作ることにしたのだ。その為、いつもは行き当たりばっかりで作るストーリーも全て予めプロットを腐るほど書いてから書き始めた。その結果、中々に苦戦を強いられることになった。何が辛かったかって登場人物がみんないい人で暖かいのだ。
いい人、そして特に子供を書くことの難しさを痛感させられた。勿論、得られたものもある。人の成長の書き方、そして成長する様を書くのはとても楽しい!という事だ。
二つ目はヒロインだ。
邪道でふざけた中身の無い僕の小説には殆どと言っていい程ヒロインは登場しない。それは勿論僕の女性経験がインド人もびっくりなほどに少なく、女性とゆー物に興味はありながらも全く理解できていない童貞心が満載だからでもある。
今回はそんなヒロインを作ることにした。勿論、ストーリーの中で主人公を引き立てたり成長の重要なファクターとなるキャラを考えたが、結局は僕自身の理想が入ってしまっているのは否めないだろう。結果、これヒロインか?と言う感じが出てしまったらしく合評の場ではヒロインが可愛い!と言う意見が出てこなかったのが残念である。(個人的には無茶苦茶可愛いと思うよ……うん…特に泣いているシーンは好き……ごめん)
三つ目はテーマを作ってみる、だ。これは上記のコンセプト的なテーマではなく、話の核となるテーマだ。
僕の場合は『母』だった。これには色々理由があるが、もしや僕はマザコンなのではと言う恐怖心が大学には行ってから(もっと言えば2年の初めぐらいから)急速に湧き始めたからだ。
マザコンの恐怖におびえるあまり、母親とは何かと言う事をたまーに鼻くそをほじりながら真剣に考えるようになった。そんな思いをふと、じゃあ母親をテーマにすりゃいいんじゃね?と言う軽いノリで組み込んでみることにしたのだ。実際テーマ性がハッキリしていると実に書きやすい。伝えたいことがあるというのがこんなにも楽だとは知らなかった……
取りあえず、分かりやすいので言えばこの三つだ。他にもあるがまあ…書いてもしゃあないことだし書かないでおく。
とまあ、はたから見ればなんじゃそりゃと言うような新たな試みをもって挑んだ今作。個人的には(勿論直したいところも沢山あるが)とても気に入っている。(いつか、もしかしたら加筆修正版を出すかも…)
さて長々と書いてきたがそろそろ終わりにしようと思う。私は現在冬長編に文字通り悪戦苦闘している。こんなものを書いている暇があったら一秒でも早く冬長編に取り掛かりたいのだ(嘘、いい息抜きになった)
明らかに今年一番アルコールと熱量を使った本作。新たなステップを目指して来年も本作に負けない良作を数多く生み出せるよう、邁進するつもりだ。
そしてこんな諸星モヨヨをこれからも応援していただければ幸いである。
では…皆様に素敵な一年が訪れることを祈って………
(年末 実家、二階の自室にてSummer Windを聞きながら)
◎おまけ1
作品を書く時に作成したイメージカットの一部。
食用動物のノラック。豚とアザラシのイメージですね。ぎーぎーと鳴きます。
蒸気人間クォーツ。名前から時計的なイメージを連想していますね。立ち絵は森の奥からゆっくり歩いてくる感じで… 顎に排気管が付いてます。
ユーガリアン連帯の地層。何で書いたんでしょう…?
蒸気人間アラクニド。複眼ですね。蜘蛛をイメージしてます。胸が大きいですね。頭から垂れ下がっているのは内燃ガスを吐き出すための排気管です。
蒸気刀。恐らく一番最初期に書いたイメージスケッチ。あれですね、進撃の巨人見てますね,
たぶん。右上のランドセルみたいなやつは小型蒸気機関を内蔵したバックパックです。
◎おまけ2
本作を書くにあたってヘビーローテーションしていた曲の一部です。聞きながら読むとより作品の世界に入り込めるのではないかと思います。
・『L`Ultima Diligenza Di Red Rock』Ennio Morricone
◇収録アルバム『The Hateful Eight』
・『Son of Man』Marsa Sakamoto
◇収録アルバム『Tarzan』
・『Final』Hans Zimmer
◇収録アルバム『The Lone Ranger』
・『トレインチェイス』天野正道
◇収録アルバム『管弦楽曲ジャイアント・ロボⅠ』
・『Red Army』Marco Beltrami
◇収録アルバム『Gods Of Original』
・『ジャイアント・ロボ』天野正道
◇収録アルバム『管弦楽曲ジャイアント・ロボⅠ』
・『Sab Than Pursues The Princess』
◇収録アルバム『JonCater Soundtrack』
・『ホーリー&ブライト』Godiego
◇収録アルバム『GODIEGO SUPER TWIN DELUX』
・『Bestiality』Ennio Morricone
◇収録アルバム『The Thing』
・『Love Train』The O`Jays
◇収録アルバム『The O`Jays』
・『ジムボタンの歌』堀江美都子、こおろぎ`78
◇収録アルバム『エイケンTHE BEST』
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