理想の休日の過ごし方を提案させていただきます

2020年以降、新型コロナウイルスCOVID-19の出現によって、私たちの生活を取り巻く環境は一変した。
テレワークの導入、緊急事態宣言に伴う休日活動の自粛、スポーツ大会の相次ぐ中止・・・
これまで当たり前のようにできていたことができなくなり、制約の多い生活の中で「どこまで我慢すればよいのか?」「我慢するなかでもできることは何か?」と考え、ひいては「人間らしい活動とは?」など、深く考えてしまう人も多かったのではないだろうか。
そんなコロナ禍と呼ばれる悲惨な現状の中でも、人間らしさを取り戻し、友人たちと笑顔で語らえるような、そんな「理想の休日の過ごし方」を提案させていただきたい。

その「理想の休日の過ごし方」の中には、あるスポーツが登場する。
北欧発祥で、知的、戦略的…そんな修飾語を伴って呼ばれることも多い。

そのスポーツとは…






「モルック」である。

FORSTAに記事上げておいてオリエンテーリングじゃないんかい!と激怒する読者もいるかもしれず、そんな読者からの背後からの攻撃に怯える生活を送りたくはないので断っておくと、ちゃんとオリエンテーリングも登場する。むしろオリエンテーリングが主役である。ツカミが欲しかったのです、すみません。

ということで、本記事では「モルック」と「オリエンテーリング」を組み合わせ、コロナウイルスの感染拡大防止に配慮しつつも、友人たちと楽しく過ごせる「理想の休日の過ごし方」を提案させいただきたい。

0. 満足のいく休日の過ごし方とは?

自粛が続き、できた時間で家の周辺で走る、漫画を読む、読書する、映画を見る、ゲームをする…など、様々なツールで時間をつぶしてきたことかと思うが(かくいう筆者もそうだった)、この過ごし方だとなんとなく、満足ができないのではないだろうか。
この記事をご覧の方は、これまで、休日はどこかしらで開催されるオリエンテーリングの大会に参加し、ルート談義し、周辺の観光をして…という過ごし方をされてきた方が多いと思うが、対比が著しい。
コロナ禍で圧倒的に不足するのは、「家族以外とのコミュニケーション」「新しい刺激」である。
オリエンティアは、自然や新しい地図と触れ合って常に、新しい刺激を求める人が多いので、余計にだ。
なら、その二つの要素を埋めるために、こんな状況下でもできることとは何なのだろうか?

自粛期間、特に緊急事態宣言下で求められるのは「大規模イベントの中止要請」「不要不急の外出自粛」「家族以外との飲食の自粛」と理解しているが、
・大規模イベントにあたるのは「5,000人」「収容率50%以上」であり、スポーツイベントの場合は「各スポーツ協会が示すガイドラインに従っての開催」のことが多い。オリエンテーリング協会にもガイドラインがあり、それに従うことが推奨されている。
・「運動・スポーツは心身の健康増進に大きな役割を果たし、コロナウイルス感染症対策による活動自粛に伴う健康二次被害の拡大を防止できる」、とされており、スポーツのための外出は自粛の対象とならない、とスポーツ庁からの通達に明記されている。
・家族以外との飲食の自粛については、あくまで三密、飛沫が飛びうる距離での飲食であり、屋外で適切な距離を取ることによってリスクはある程度、回避できる。(飲食はあまり、推奨はされていない)
というような状況だ。
ガイドラインを参照したうえで考えてみると、オリエンテーリングイベントは、「長距離の移動の自粛」および「(特に飲食時の)感染拡大防止措置」を行えば、ある程度開催できるのでは?と思える。

そこで筆者が提案したい休日の過ごし方は、
・「長距離の移動が発生しない近場でオリエンテーリング地図を作り」(新しい刺激)
・「感染リスクの小さい屋外(特に公園が良い)、一定の距離とマスク着用を保ちつつ」(感染拡大防止)
・「友人とオリエンテーリングと追加アクティビティを楽しむ」(家族以外とのコミュニケーション×新しい刺激)

というものだ。

この、追加アクティビティの有力候補が、モルックである。

1. モルックとは?

モルック


モルックとは、フィンランド発祥のスポーツで、1~12までの数字が書かれた「スキットル」という円錐型の木の棒と、「モルック」と呼ばれる棍棒のような30cm程度の円柱型の棒を用いる。
基本ルールは、いたって簡単。
① 1人ずつ順番にモルックを投げてスキットルを倒す
② モルックにより飛ばされたスキットルは、飛ばされた場所で立たせる
③ スキットルを1本だけ倒した場合はスキットルに書かれた「数字」が、複数倒した場合はその「本数」が得点となる

勝利条件は、「50点ぴったり獲得すること」である。
ちなみに、50点以上になってしまうと、25点まで点数が逆戻りする。

スキットルは一塊にした状態でゲームがスタートするため、序盤は力業で多くの本数を倒した方が得だが、徐々にスキットルが飛ばされて孤立していくので、孤立したスキットルの数字が大きい場合は単独で狙った方が得になってくる。終盤は50点ぴったりにするために、点数を調整しに行くが、上がられないようにほかのプレイヤーが狙いのスキットルを吹っ飛ばしたり、ほかのスキットルを近づけるように仕向けたりするので、高度な戦略が求められる。

筆者がこのスポーツを知ったきっかけは、同じ地域クラブ・オリエンテーリングクラブトータスに所属するO石氏に紹介されたからである。O石氏は、過去にデンマークで開催されたJWOC2019に参加しており、その際にモルックの存在を知り、遠征時の近くのスーパーでモルック一式を買い込んで日本に輸入していた。そのモルックが2年の時を経て解禁され、昨今は彼の所属する日本学連関係者やトータスのメンバーがその魅力の餌食となっている。(余談だが、O石氏はオリエンテーリングの会場にモルックを持ち込むことを計画しており、ゆくゆくは「モルックおにいさん」として名を馳せたいそうだ。彼が「モルックO石」または「O石・モルック・Y輔」という名前でオリエンテーリング大会にエントリーする日も近い)

たまたま公園でO石氏と逢瀬するイベントがあり、その際にモルックの魅力を存分にブチ込まれた筆者は、これ幸いとamazonでモルックを発注し、マイモルックを入手した。(6,000円程度で手に入る。フィンランド製)
現在、オリエンテーリング界でモルックを所有しているのはおそらくO石氏とK藤氏と筆者のみなので、必要な場合はぜひお声がけいただきたい。

2. 近場でオリエンテーリング地図を作る


さて、いきなりモルックの紹介をしてしまったのでモルックの記事では?と思われるかもしれないが、オリエンテーリング要素もしっかり入れていくことでより、満足度が上がるのでその方法について紹介したい。

オリエンテーリングをするのに必要なのは何だろうか?
コンパス?地図?ユニット?フラッグ?
筆者の行きついた答えは、「オリエンテーリング用のマップ」いわゆる「O-map」である。
コンパスがなくても、ユニットがなくても、フラッグがなくても、究極的に言えば地図上に円が書かれて繋がれていればオリエンテーリングは出来る。ただ、それのマップが、通行可能・不可能を「正確に」表現していることが必要だ。(地図上で通行可能なルートを読み切った!と思っても、現地に行ってみたらふさがっていたら、ブチ切れるだろう)そのために最適な地図が、O-mapなのである。
そう、O-mapさえあれば、オリエンテーリングは出来るのだ。
しかし、家の近所に自由に使っていいO-mapなんてなかなか転がっていない。
ないのであれば、自粛期間で創出された大量の時間を使って、作ればよい、と筆者は考えた。
そして、そう考えたオリエンティアはほかにもたくさんいた。

オリエンテーリングをするにあたって、大事なのは「テレイン」であるが、オリエンテーリングができるテレインは都市部にそう、多くない。そんな中で、とりあえずオリエンテーリングが出来そうな場所を探してみた。

そこで見つけたのが「JR川崎駅」「三ツ池公園」「多摩川台公園」の3つである。
これら3つのテレインに共通するのが「昼間は人通りがあり、オリエンテーリングの大会は開けそうにない」ことである。だからこそ、今までオリエンテーリング用の地図が作成されてこなかった。

少し話は変わるが、自粛期間中に、NaviTabiアプリの利用者数が格段に増加した。
NaviTabiは、アプリ内でコースセットし、それがいつでも・誰でもプレイできるというのが魅力のナビゲーションゲーム用アプリである(街を、PlayGroundにしようというキャッチフレーズが物語っている)が、このNaviTabiの出現によって、大会でなくても他人とオリエンテーリングのルートや記録を比較できる環境ができ、またソロで、コントロールがない場所でオリエンテーリングをプレイする、という下地ができた。
さらには、GPSを利用することで、コントロールから半径〇m以内に入った際に通過証明を取る「自動パンチ」という機能により、コントロール通過証明をスマホで、かつ設置なしで取ることが出来るようになった。
さらには、GARMINウォッチのみでその自動パンチをすることが出来る「O-range」が出現した。

「いままでオリエンテーリング用の地図が作成されてこなかった近場テレイン」
「NaviTabi・O-rangeによる”無設置”での通過証明」

という2つの要素が組み合わさることで、「近場でニューマップを作り、無設置でオリエンテーリングを楽しむ」ことができるようになった。無設置でいいと、運営にかかる労力が非常に小さくなるため、「運営が少数でも気軽に開催できる」というところでさらに、後押しになった。

ずらずらと書いたが、少し乱暴に言うと
「これまで大会が開けそうで開けなかったエリア(公園が望ましい)のO-mapを作り」
「NaviTabiやO-rangeでコースセットしてしまえ」

ということである。
そうすれば、オリエンテーリングは出来る。(そして、その調査に伴って新たな発見ができる)

3. 友人とオリエンテーリングと追加アクティビティを楽しむ


ここまで準備が整えば、あとはお楽しみである。作成したテレイン内で集まれそうな広場を会場に設定し、青空会場の形でオリエンテーリングを楽しむ。NaviTabiやO-rangeであれば、設置は不要で、各自思い思いのタイミングでスタートができるので、地図さえ渡してしまえばあとはお任せだ。
オリエンテーリングにつかれてきたり、すべてのコースを走り終わったら、追加アクティビティを楽しめばよい。
最近の筆者の推しはモルックであるが、モルックである必要もない。
サッカーでも、キャッチボールでも、屋外で離れてできるアクティビティなら任意のものが可能だ。
(モルックのいいところはプレイヤー同士の距離が取りやすいこともある)

一定の距離を保ちつつ(通常は2m以上が推奨される)、少し不便ではあるが食事を楽しむこともできるかもしれない。公園の近くに、テイクアウトできる美味しそうなカフェやレストランを見つけておくと、楽しみは倍増するだろう。

こうすれば、コロナウイルス感染拡大防止に配慮しつつ、友人たちと集まり、陽の光をたっぷりと浴びながら、運動し、談笑する、人間らしい理想の休日を過ごすことが出来る。

4. モデルケース


上記のような、筆者が勝手に考える「理想の休日」を、ある程度実現できたモデルケースがあるので紹介しよう。
<使用地図>
多摩川台公園(東急東横線多摩川駅徒歩5分)
<コース>
大人用:1.6km、1.5kmの2本
子供用:0.4km、0.3kmの2本
NaviTabi、O-rangeによる計時可能
<タイムスケジュール>
13時 公園の広場集合
適宜出走、適宜モルック
16時 公園から徒歩移動
16時30分 クレープ屋でクレープをテイクアウト、距離を保って食べる
17時 街中の温泉(丸子温泉)に入る
18時 解散

メンバーは、筆者の所属クラブのトータスメンバー計8名である。

オリエンテーリングする様子や、モルックに興じるメンバーの写真があるので、共有しておきたい。

画像6

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この公園の近くにはランチBOXをテイクアウトできるカフェ(hiff café tamagawa)があり、そこでガパオライスなどのランチをテイクアウトして公園で食べるのもオツである。
■hiff cafe tamagawa
https://hiff-cafe.com/

画像4

また、NaviTabiやO-rangeでオリエンテーリングをしやすくする工夫として、NaviTabiのイベントページやO-rangeのPublic coursesのページのURLをQRコード化して、マップに張り付けておくと、初めての人でもイベントを探す手間が省けて快適にオリエンテーリングすることが出来る。

QRコード


また、このイベント方式での推しは「小さな親子連れが参加しやすい」ことである。小さなお子様は公園の広場で遊ぶのが大好きであり、4歳ほどになれば嬉々として広場を駆け回る。走っているだけでも楽しいらしい。ご両親とも参加されていれば、片方の親が面倒を見ている間に一人は走りに行き、交代で面倒を見る…ということもやりやすいのだ。
トータスの中にも、小さなお子さんのいるメンバーが参加していたが、そのお子さんと大きなお友達が共に影鬼をしたり、モルックで戯れることができるのも、このイベントならではだった。

5.最後に


このような休日の過ごし方は、いかがだろうか?
オリエンテーリングに、遊びに、食事に、コロナを比較的気にすることなく楽しめる。そんな環境をオリエンテーリングを中心に形作ることが出来たら?
筆者の理想は、いろいろな公園に地図があり、「公園にキャッチボールをしにいく感覚でオリエンテーリングができる」、そんな気軽なアクティビティの一つにオリエンテーリングが数えられる環境である。そのためには圧倒的に地図が足りないし、知名度も足りない。
だから、たくさんの人に地図を描いてもらいたい。こんな制約の多い環境下でも、オリエンテーリングを中心とした休日の楽しみ方を再発見してほしい。お互いの居住地域の近い地域クラブはこのモデルに適しているだろう。
大学生クラブでも出来る。キャンパスに通うことは出来なくても、少人数で集まり、スプリントを楽しんでサクッと解散する、程度のことは許されるだろう。
隣接した地域にクラブがあるなら、そのクラブと地図を交換し合って少人数の集まりをお互いにやるのもいいだろう。
もちろん、コロナ禍が終わって、自由に集まり、多くの大会が開催される世の中が戻ってくることが一番良い。ただ、地方の大会を求めて奔走するだけでなく、家の近くで、身近に、すぐにオリエンテーリングが体験できる場所があるとよい。新歓で、いきなり2時間も移動するフォレストに案内するよりも、少し気軽に、近所の公園でスプリントをしてみる方が、新入生にとってはとっつきやすいのではないか。

普及、練習の機会、アクセス、選択肢を増やす、様々な要素で、近場のO-map×NaviTabi・O-rangeは役に立つ、と筆者自身、このコロナ禍で気づかされた。
そんな、オリエンテーリングが生活の一部になる世の中に、休日の過ごし方として気軽に選択できる世の中になってほしいと、切に願い、そのために行動したいと思っている。

※余談:地図作成について


余談だが、オリエンテーリング用の地図を作るのはハードルが高い、と感じている方に訴えたいのは、「やってみたら意外とできる」ということである。何にハードルを感じるか?というと、おそらく「コスト」と「作図スキル」面であると思うが、それぞれについて記載させていただく。

■地図作成にあたっての「コスト」
最近はOpenOrienteeringMapperというフリーソフトが公開され、作図時の基本情報となる”基盤地図情報”および”Google Map”、”国土地理院地図”はすべてネットで無料公開されている。つまりは、金銭コストは”無料”。
しかしながら、地図作成にかかる「時間」は重要なコストだ。ここに関しては、各自努力するしかない。
個人で作成した地図の作図/調査の実作業時間を概算だが計算してみると
・JR川崎駅:40時間くらい(現地調査:2回、調査期間:2020年5月1~5日)
・三ツ池公園:30時間くらい(現地調査:2回、調査期間:2020年5月~7月)
・多摩川台公園:30時間くらい(現地調査:1回、調査期間:2021/1月~2月)
という時間を要している。作成だけで100時間/3テレインなので、かなり長いが…大会がなくなった自粛期間でぼーっとしているよりは有用な時間の使い方だと筆者自身は考えている。

■「作図スキル」
作図スキルに関しては、基盤地図情報の取り扱いに関して、プロマッパーである坂野氏が手順を詳細に記載してくれている。
「ストリートマップ作成と特色表示のすすめ」
https://orien-advent.hatenablog.com/entry/of_the_board
上記を参照すれば、下絵として用いる基盤地図情報を作図ファイルに取り込むことが出来、それをなぞるだけでもそれなりのマップが出来上がる。それ以上に情報を肉付けするとなると、「経験」が必要だ。
筆者は上記3テレインを見つけて、いざ作図しよう!と思った矢先に、自身の保有するOCADに最新版のスプリント地図図式・ISSprOM2019が対応していないことに気が付いた。そこで、使い慣れたOCADをあきらめ、まったく経験のないソフト・OpenOrienteeringMapperを使用することとした。
使ってみるとこれが意外と、OCADよりも使いやすく、最終的にはOCADと比較してもこちらを使いたい、と思うようにまでなった。(マウススクロールで拡大・縮小ができるのが非常に良い)
このように、経験のないソフトでもとりあえず使ってみたらそのうち慣れてくるので、まず使ってみることが肝要だ。

詳細な作図スキルに関しては、やはり課題はあるので、誰でも作図が気軽にできるような、相談窓口を立ち上げてみたい(作図会zoom、略して作zoom)と考えている。

オリエンテーリングクラブトータス
結城 克哉


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