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ケーキのようにじっくり味わえる児童文学|#読書の秋2020 ①

 あらゆる差別の根絶を目指す学生団体Moving Beyond Hateのメンバーは普段どんな本を読んでいるのか?ということで、今回は #読書の秋2020 に参加してみます。全2回に分けてお届けする #読書の秋2020 ですが、初回はあかとんぼ🦊が #僕が神さまと過ごした日々 を紹介します!(編集:ピエール🦄)

 年末が迫ってきている。冬特有のナイフのような鋭い寒さを感じる度、クリスマスが近づいているのを感じる。そんなとき、私は絵を描きたくなる。自分を安心させるための何かが欲しくなる。
 …いや、それよりも大学のレポート課題に取り掛からなきゃ、と冷静になる。来年から就職に向けて、語学の勉強や資格の対策などをするのも大切だ。悠々と絵なんて描いている暇はないと思う。

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 正直、色鉛筆を握るエネルギーがあまり湧いてこない、という気持ちもある。焦りが、悩みが、不安が、脳内を行き来しているのだ。それは真っ白な画用紙に、どう下描きを始めようかと、延々と考えるのと同じである。
 美術館で何かヒントを得られたら良いと思うが、外出してアイディアを収集することに躊躇してしまう。新型コロナウィルスの影響で、私は何かに取り組むことに対して、過剰に臆病になってしまっていた。

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 将来のキャリアを計画する想像力や、自力でなんとか作成する、創造力が欠けているなと感じる。その原因は、私の背後にぴったりとくっついて離れない「迷いの心」だった。
 なんだか寒気がしてきた。雪山で一人取り残された気分だ。マッチとか、ろうそくとか、体を温めてくれるものが恋しい。私の情熱よ、一体どこへ逃げていった。情熱がなければ凍えてしまう。(…私のやる気よ、早く此処に戻ってこ――い!!)

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 今回紹介するのは、「てのひらの美術館」と称するのに相応しい、心がほっと温まるような一冊だ。『僕が神さまと過ごした日々』は、主人公の「ぼく」が、老紳士の姿をした世界の創造主「神様」との出会い、ファンタジックな体験を経て、過去の自分を克服する物語である。
 美しい挿絵が調和の音色を紡ぎ、頁をめくるたびに好奇心が増していく。銀河鉄道に乗ったような気持ちで、善悪の意味や人間の不完全さの尊さを学ぶことが出来る。登場人物も魅力的で、世界の真理をしっかりと突く言葉が、ケーキの上のフルーツのように並べられている。キリスト教の勉強にもなるので、この本を読むときは付箋が必要不可欠だ。クリスマスケーキを、じっくり味わって食べる感覚と似ている。

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 私達は神様を完全無欠、全知全能の存在だと考えがちだが、本当は人間と同じように悩みや後悔をもつ「情けない部分」も持っている。その弱さを赦し合えるのが、人間の最大の魅力なのではないかと思う。また、主人公の妻と子供への接し方も非常に優しく、寂しさを分かち合う姿にも感動できる。読者はきっと、愛の花がケーキに添えられる瞬間を、文章から読み取れるだろう。物語のクライマックスでは、五感で世界の美しさを独り占めできるはずだ。

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 「児童文学なんて、今更読むのは恥ずかしい」と思っていた自分がいた。今の自分の本質的な部分は、子供の頃の記憶とも密接に関わっているが、それは完全にこの世から消えたと考えていた。しかし読み終わった後に、私のインナーチャイルドが満たされた。明日も頑張ろうと思えた。欠点だらけの自分を、もう少し愛してあげようと感じた。

 今年のクリスマスは、家でじっくり未来のビジョンを描き、心の旅をしよう。何もないツリーに、生きている幸せをデコレーションしよう。神様からのギフトを受け取るとき、貴方の元に大きな喜びが訪れるだろう。(あかとんぼ🦊)

(画像:Pixabay・あかとんぼ🦊撮影・Pixabay

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