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イケメンおやじが大活躍。映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」

公  開:2023年
監  督:古賀豪
上映時間:104分
ジャンル:アニメ/妖怪

「ゲゲゲの鬼太郎」をまったく知らない、という人は、あまりいないのではないでしょうか。

水木しげるが描いた「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズは、アニメシリーズで6期つくられた長寿作品であり、水木しげるの稼ぎ頭といってもいい存在でもあります。

鬼太郎そのものは紆余曲折あって、現在の鬼太郎になっていったわけですが、「墓場鬼太郎」として描かれていた時代が原典といっていいところでしょう。

「墓場鬼太郎」としてでてきた当初の鬼太郎は、アニメでみられるような正義感溢れるキャラクターではなく、不気味で、ひがみやで、なんとも薄気味悪い少年として描かれています。

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎(以下 ゲゲゲの謎)」は、どうして鬼太郎が生まれたのか、という謎を追うものではまったくありません

いわゆる、前日談と呼ばれるものであり、しかも、その内容は、あくまで、テレビシリーズの6期目の、前日談となっているのがポイントです。

「墓場鬼太郎」シリーズとしての、前日談だと思ってしまうと、肩透かしどころか、別ものをみることになりますので、ご覧になったことのない人は、注意してください。

萌えキャラ猫娘

水木しげる作品といえば、昨今では、当たり前に存在する美少女キャラというのは、存在しません。

アニメシリーズにおいては、3期において天童夢子なるヒロインがでてきたりしているわけですが、かわいい女の子というのは皆無といっていいでしょう。

たしかに、猫娘というキャラクターはいるわけですが、方向性がだいぶ違ったりしています。

ただ、アニメ6期では、猫娘が、いわゆる萌えキャラ化したということで話題となりましたし、良くも悪くも、かつての猫娘を期待している人間からすると、コレジャナイ感が凄かったところです。

また、デ・ジ・キャラットのぷち子の声優でお馴染みである沢城みゆきが鬼太郎の声をあて、かつて、の鬼太郎の声をあてていた野沢雅子が、目玉おやじの声優をしているという点では、感慨深いところです。

「ゲゲゲの謎」は、6期のアニメシリーズから派生したものだ、ということをくれぐれも頭に入れて見てもらえると、物語のラストに繋がる点も、違和感なくみることができたりします。

さて、概要ばかり書いていても仕方がないところもありますので、本編の内容に入っていきたいと思います。

横溝正史的ミステリ感

「ゲゲゲの謎」の、前半は、実にいい感じに物語が積みあがっていきます。

金田一耕助シリーズでお馴染みである横溝正史もかくやという舞台設定。

主人公である水木は、戦後拾われた会社で出世するべく、取引先の社長である龍賀に取り入る為、とある村へと出向きます。

龍賀一族が作っているとされるM(エム)と呼ばれる秘薬。
一族の当主が亡くなったことによる跡目争い。
閉ざされた村。
殺人事件。

昭和のミステリ感がたっぷりの始まり方であり、村の因習が云々というのは、ある意味使い古された舞台設定ではありますが、それを、ゲゲゲの鬼太郎の世界観で行おうっていうのですから、どういう風に物語が進んでいくのか、楽しみでならないところです。

村の因習云々という点で、最近の作品であれば、柳楽優弥主演の「ガンニバル」は、この手の作品としては非常にオススメとなっていますので、因習にとらわれた村云々という設定がひっかかった人は、是非、そちらも併せてご覧いただきたいと思います。

キャラクターのデザイン

「ゲゲゲの謎」は、主人公である水木と、もう一人の主人公が肝となっています。

鬼太郎の父親であり、将来の目玉おやじとなる、ゲゲ郎が最大の魅力といっていいでしょう。

女性人気もおそらく相当高かったと思いますが、デザイン的には「ぬらりひょんの孫」にでてきそうといいますか、「蟲師」の主人公は関係ないですが、とにかく、銀髪で、不思議な雰囲気の男となれば、作品とってキャラクターというのがいかに大事かがわかるというものです。

物語は、ゲゲ郎と、水木とのバディものの様相を呈し、二人で、村の謎に迫っていくところから、圧倒的なアクションものへと変化していきます。

物語の前半の雰囲気のまますすんでいくのを期待していますと、これが、アニメの6期の流れを汲んでいるという事実を思い出すことになります。

妖怪

鬼太郎シリーズということで、色々な妖怪がみられるかと思いきや、実はそこまででもなかったりします。

狂骨という妖怪がでてきますが、水木妖怪というよりは、京極夏彦の「狂骨の夢」という作品で、知名度をあげたようにも思われる妖怪です。

「ゲゲゲの謎」でいいますと、妖怪というよりは、モンスターみたいな敵と戦うシーンがあったりもしますし、近年でいうと「サマータイム・レンダ」を思い出すところもあり、どこかで見たことのある作品の雰囲気が感じられたりするところです。

あるいは、ルパン三世の映画「ルパン三世 ルパンVS複製人間」といったほうがしっくりくるかもしれません。

また、水木しげるが戦争経験者ということもあると思いますが、「ゲゲゲの謎」の水木もまた、戦争でなんらかの精神的な辛い思いをした描写がでてきます。

戦争で生き抜いてきた軍人だったからこそ、という描写については、近年では漫画「ゴールデンカムイ」の主人公である杉元を思い出させるところです。

「ゲゲゲの謎」というタイトルの関係もあって、ついつい、「墓場鬼太郎」に寄った気分でみてしまうところですが、物語のラストでは、本作品が、「墓場鬼太郎」ではなく、あくまでアニメシリーズの6期の流れをくむのは、このような違いがあったからだ、ということも暗示しているところがポイントといえるでしょう。

頭が胴体から離れ、血が流れる描写なんかも平然とあることから、年齢制限がかかっている鬼太郎シリーズとなっているところも含めて、いったい何をみることができるのだろう、と思ってしまう作品が「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」となっています。

もし、「墓場鬼太郎」に興味がでた方がおりましたら、ノイタミナで放送されていたアニメ「墓場鬼太郎」も併せてご覧いただければと思います。


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