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アニメ業界の入門編として。映画「ハケンアニメ」

公  開:2022年
監  督: 吉野 耕平
上映時間:128分
ジャンル:ドラマ
見どころ:アニメーション全般

ハケンアニメの品格メ~

映画「ハケンアニメ」は、メフィスト賞作家であり、直木賞作家である辻村深月の原作を映画化したものとなっています。

覇権アニメとは、今ではあまり聞かない言い回しにはなりましたが、いわゆる、その時に放送されているアニメで、もっとも人気がある作品、と思っていただければ、そう大きく間違うことはないかと思います。

原作が作られてから、それなりの年数がたってしまっているため、2022年の映画と、感覚のズレはあるものの、女性新人監督としてアニメをつくる吉岡里穂演じる主人公と、明らかに、幾原邦彦を意識した王子千晴というキャラクターの、アニメ対決を主軸にした内容となっています。

幾原邦彦

「美少女戦士セーラームーン」や「少女革命ウテナ」の監督をしていたのが、幾原邦彦監督といえば、わかる人には説明するまでもないかと思います。

ウテナは当時のアニメ業界に大きな影響を与えましたが、幾原邦彦は、その後、「輪るピングドラム」の発表まで12年もの間沈黙していました。

「ハケンアニメ」においては、隠す気がないというよりは、原作の謝辞の中に名前が記載されていることからも、幾原邦彦監督が、モデルになっていることがわかります。

そんな現実とオーバーラップしながらみると、「ハケンアニメ」は、別の意味でも楽しくなってくるところです。

ちなみに、そんな伝説的な人物を引っ張り出す、ということがポイントとなる作品でオススメなのが、「騙し絵の牙」です。

リリー・フランキー演じる伝説的な作家に、編集者が作品を書かせられるか、ということがあったりして、沈黙を保ち続ける天才というのは、この手の物語においては、より面白さを増してくれる要因の一つともいえます。

さて、映画「ハケンアニメ」の主人公は、あくまで、女性アニメ新人監督

となっています。

監督は辛いよ。

県庁勤めから、一転して7年でアニメ監督になったという設定の主人公、瞳。

たった7年で、さすがにそれは早すぎるだろう、というツッコミはどうしても入るとは思いますが、そのあたりはある程度無視してみたほうがすんなりと見ることができると思われます。

また、柄本佑演じるプロデューサーもかなりの凄腕の設定ではありますが、若すぎてちょっと、場数に似合わない部分はあります。

「ハケンアニメ」をみた後に、是非見てもらいたい作品がありまして、それは、アニメの制作現場の大変さが凝縮した、アニメ「SHIROBAKO」です。

テレビシリーズと、劇場版が作られているのですが、「ハケンアニメ」でアニメ業界が気になった方は、これでもかとアニメ業界の大変さがわかる作品となっています。

良くも悪くもクリエイターという人間の葛藤であるとか、そんな人たちを相手に制作進行を行う人間の、どんな苦労があるのかがわかる作品となっています。

「ハケンアニメ」は、監督視点から描かれており、よい作品をつくるために、色々な困難を乗り越えていくところが描かれています。

ハケンアニメは、映画内ではちょっとよくわからないかもしれませんが、トウケイ動画という会社の物語となっています。

東映アニメーション株式会社のことだろうと思われますが、この会社は、宮崎駿や高畑勲も所属していた、まさに大手中の大手となっています。

作中では、一見そんな大手には見えませんが、大手に入ることのできた主人公の物語となっています。

それぞれのアニメ

ハケンアニメは、アニメ業界やそのまわりを描いています。

主軸としては、失踪癖のある天才監督と、新人女性監督の対決と苦悩。

アニメの舞台などを回る聖地巡礼をやろうとする人もでてきまして、必ずしも、アニメの現場がテレビの中だけの話ではないことも描かれています。

主人公がプロデューサーに連れられて、取材や撮影をさせられたり、テレビCMのタイアップについて知らされていなかったりと、振り回されたりする姿も描かれます。

ちなみに、映画では描かれませんが、クラウドファンディング的なやり方によってお金を集める試みが描かれたりと、現代においてのアニメや創作物へのかかわり方というのは、大きく変わっていることもわかります。

女優の、のんが声優をやったことでも知られている「この世界の片隅に」には、実際にクラウドファンディングでお金を集めた作品となっています。

アニメーションの出来

「ハケンアニメ」は、そのタイトルと内容もあって、劇中のアニメのできも非常に良いものになっています。

劇中において制作される「サウンドバック 奏の石」。
12体ものロボットを出すという破格の設定。

「運命戦線リデルライト」は、1話につき1年の年月が経つという、いずれにしても、アニメとして実現すると、設定や大変になりすぎる内容となっています。

劇中ではところどころを見ることができますが、普通に一本のアニメとしてみたい出来栄えになっています。

また、本作品は、アニメの対決ということになっていますが、視聴率という形で勝負している為、勝敗がわかりづらいことになっています。

しかし、そんな世間の反応を、現実とアニメーションを重ねて描くこともあって、面白いです。

アニメ制作現場としてみると

アニメ制作現場の大変さ、という点でみると、やはり、「SHIROBAKO」にはかなわないと言っていいと思います。

劣悪な環境、万策尽きた中で、なんとかしてアニメをつくり続ける人たちの苦労は、相当なものがあります。

ただ、「ハケンアニメ」は、アニメ制作だけではなく、まわりを描いているところがポイントだったりします。

原作においては、主題歌についても触れられていますので、映画をみて興味がでた方は、原作もみてもらいたいところです。

もっと、アニメの現場を知りたい方は「SHIROBAKO」

編集作業であるとか、原稿をもらう云々というほうが気になる方は、「騙し絵の牙」を。

映画製作という点に特化したものでみたい場合は「映画大好きポンポさん」を見ていただきたいと思います。

「ハケンアニメ」は、一つの作品を見る中で、自分の興味にも気づける作品となっていますので、この作品をきっかけに、色々とみてみてもらいたいと思います。

以上、アニメ業界を描いた入口として。映画「ハケンアニメ」でした!


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