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栄光と没落と夢。映画「ドリームガールズ」

公  開:2007年
監  督: ビル・コンドン
上映時間:131分
ジャンル:ミュージカル

人生は、何がきっかけで成功するかわからないものです。

映画「ドリームガールズ」は、実力があるにも関わらず人気がでなかったり、自分の曲を白人にとられてしまう、なんていうことがまかり通ってしまっていた時代の、音楽業界を中心とした物語となっています。

前半は、歌の実力は抜群である主人公たち、ドリーメッツがなかなか有名になれない理由がほのめかされながら、彼女たちの歌が衝撃的に歌われます。

本作品は、ミュージカル映画であり、ドリームガールズというグループと、レインボーレコードが肥大化していく様が描かれています。

ドリームガールズは、スプリームスという黒人4人組のグループが元ネタとなっていますし、レインボー・レコードは、モータウンというレコード会社が原形となっていることから、当時の音楽業界を知っている人がみますと、別の意味でも楽しい作品になっています。

黒人の少年たちがでてきて歌ったりするところは、どう考えてもジャクソン5だろう、というものもあったりしますし、引用元がわからなくても、音楽性の違いによって、バラバラになっていく様子は、どこの世界でも共通なのだなぁ、と思わされるところです。

レインボー・レコードを立ち上げたカーティスは、プロデューサーとして、様々な決断をしながら、グループを大きくしていきます。

本作品は、黒人ガールズ・グループに夢をみた男が、感情よりも儲けること、売れることを優先し、結果、かつてファミリーとして一致団結していたはずのメンバーが離れていく、ありそうな物語としてみることができます。

しかし、白人が力をもっている時代であり、黒人差別が当たり前のように行われた時代であるということを考えると、まずは、白人に認められるために、何をすればいいのか、ということを考えながらプロデュースしたカーティスという男の物語としてみることもできたりします。

白人に媚びるなんて、というまわりの意見ももちろんありますが、お金と力をもっていた白人から、奪い返すということこそ、本作品のもつ力強さにもつながっていきます。

作中で流れるキャデラックという曲が、黒人の間で人気が出たと思ったら、白人に真似されて奪われてしまうという、それまでの歴史をそのままなぞるような話も含めて、ブラックな話となっています。

もちろん、ミュージカルなので、歌いまくります。

歌姫ビヨンセが主演ということもあり、隙さえあれば歌いだす登場人物たち。

歌がうまいので、初めは驚きますが、あまりに歌いすぎるので、ミュージカルが好きな人以外は、食傷気味になってしまうかもしれません。

どんなに実力があっても有名になれなかったり、お金をつかませないとどうにもならない不健全な社会の中で、輝くような存在の栄光と没落をみることができます。

ちなみに、登場人物たちのモデルとなった人たちは、映画のような美談にはなっていなかったりしますので、気になる方は、恐る恐る調べてみてもらえればと思います。


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