感想紹介「MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」
公 開:2022年
監 督:竹林亮
上映時間:82分
ジャンル:コメディ
毎日が繰り返しのように感じることはないでしょうか。
先週も同じようなことがあったな、とか、あまりに毎日が忙しすぎて、曜日感覚が失われていくような、まさに忙殺される状態に陥りますと、正常な判断はどんどん失われていってしまうものです。
ループものの作品たち
ループもので有名な作品といえば、ビル・マーレイが主演の「恋はデジャ・ブ」がオススメだったりしまして、性格がものすごい悪い主人公が、一日を繰り返し続けていくうちに、街の住人のことを知ったり、女性をなんとか口説き落とそうとして奮闘するループを描いています。
また、「よくわかる現代魔法」の桜坂洋が原作で、トム・クルーズ主演「オール・ユー・ニード・イズ・キル」なんかも、同様のループものとなっています。
こちらは、異星人を倒すにあたって、パワードスーツを使いこなし、何度もループしながら操作がうまくなっていく主人公を描いています。
あたかも、フロムソフトが得意とする、いわゆる死にゲーと呼ばれるジャンルの如く、何度も失敗を繰り返しながら、敵を倒すために、操作を学んでいくようなつくりとなっています。
アニメでいうと「涼宮ハルヒの憂鬱」のエンドレスエイトを思い出す人もいるのではないでしょうか。
8月の夏休みを何度も何度も繰り返すうちに、その違和感から、脱出の糸口をつかんでいく、といった感じです。
さて、様々なループ作品がある中で、「MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」は、月曜日から日曜日までの一週間を繰り返し続けます。
現代人は忙し過ぎる
本作品が面白いのは、どこか縁遠いようなループもの作品の中にありながら、その実、身近な内容だったりするところではないでしょうか。
社会人として働いている人の多くは、勿論、日々の仕事を一生懸命繰り返すわけですが、ループに気づく前の「MONDAYS」の登場人物たちと同じように、先週も今週も、よくわからないぐらい忙しかったりするためです。
気づいたら、年をとっていて、また同じような日常に埋没する。
そんな恐怖感も含めて、作品をコメディタッチに描いているところが、傑作だといえる作品です。
上司に気づかせなければ、ループは終わらない、という、他の壮大なループものとはあまりに一線を画すゴール。
一人ずつ上の上司に、上申しながら伝えていく、という日本らしさ溢れる解決方法も面白いですし、何より、役者の演技が素晴らしいのです。
特に、マキタスポーツの面白いこと。
ちょっと空気が読めない上司の雰囲気をうまく表現しています。
小道具の作り方も面白く、あとで、画面を止めてみてみると、細かいところまでしっかり作りこんでいることがわかります。
ループの使い方
「オール・ユー・ニード・イズ・キル」では、ギタイと呼ばれる敵を倒すための能力をあげていくのが大事でした。
ですが、MONDAYSは、ループするたびに、仕事の出来がよくなっていくのが面白いのです。
味噌汁炭酸タブレットなるゲテモノ商品をどのようにして売るのかということを考えるのですが、ループを繰り返していくうちに、どんどん、キャッチコピーから映像から良くなっていくのが楽しいです。
日本人らしいループの使い方といいましょうか。
圧倒的なテンポの良さと、脚本の面白さ。
何気ない日常なはずなのに、一羽のハトが窓に激突した瞬間から、何か違和感に気づいてしまいます。
「一つだけ覚えておいて欲しいことがあるんです。(バンっ)ハトです。」
「こわっ」
ループものは、ループから抜け出すことが目的なわけですが、主人公が、会社の仲間たちと改めて、一緒に働きたいと思える前向きな作品になっているのも魅力だったりします。
ループしたことで、気づけなかった誰かの気遣いに気づくことができたりと、そんな一体感が、ブラック企業を作り出しているといえなくもないのですが、この終わりなき日常の中で、常に不満を抱えてしまっている人には、是非みてもらいたい作品がMONDAYSとなっています。
地味な人生を、満足して、納得して終わらせるために。
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