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諦めなければ、終わらない。映画「THE FIRST SLAM DUNK」感想。

公  開:2022年
監  督: 井上雄彦
上映時間:124分
ジャンル:スポーツ/アニメ

ゴールが遠いメェ~

ある世代において、スラムダンクという漫画作品は、一種の伝説といえるでしょう。

「バガボンド」や「リアル」でお馴染みの井上雄彦による傑作漫画といえば、やはり、スラムダンクなわけです。

その一方で、テレビアニメ放送で、いつまで試合をやっているんだ、と思わずツッコミを入れつつ、ドラゴンボールのテレビ放送も、いつまでも空中で少し戦って、また一週間後なんていうのをやってましたので、当時の子供たちも気も、相当長かったものです。

そんなスラムダンクが、井上雄彦本人による監督・脚本で映画化されたとなれば、これは、ファンならずとも気にならないはずがないところだったでしょう。

映画「スラムダンク」は、原作でいうところの、全31巻のうち7巻もの冊数をつかって描かれた山王戦が描かれます。

映画になるにあたって、作品のどこを切り取るのか、という点において、驚くほどの英断だったといえるところでしょう。

本作品は、桜木花道という主人公ではなく、本来であれば脇役であるはずの宮城リョータというキャラクターを中心に、物語が語られていきます。

たしかに、桜木花道という男を語る為には、2時間程度の映画の尺ではとうてい描き切れるものではありません。

それならば、脇を固めるキャラクターから描くというのも、面白い試みだったところでしょう。

特に、26年ぶりのアニメーションによる公開だったということから、スラムダンクファン以外でも入っていける工夫といえるのではないでしょうか。

ただ、まるっきりスラムダンクを知らない人が、映画「スラムダンク」を見た場合には、さすがによくわからなくなるかもしれません。

ですが、本作品は、正直、内容そのものは、気にしなくてもいいようになっているのが、改変の良くも悪くもポイントといえるところです。

試合のドキドキ感

作品の後半が描かれ、宮城リョータ以外のキャラクターについては、ほとんど紹介されません。

もちろん、名前や雰囲気ぐらいは憶えている人もいるかもしれませんが、山王工業の生徒となると、もはやほとんど記憶にないことでしょう。

ただ、そんなことは気にしないで大丈夫。

アニメ「ブルー・ロック」においても、後になればキャラクターの名前と能力や性格が一致してきますが、そんなのがなくても、彼らが凄い能力をもっていて、ものすごいサッカーのプレイをみせてくれる雰囲気だけはしっかり伝わります。

映画「スラムダンク」についていえば、宮城リョータや桜木花道が所属する湘北高校が応援すべき存在だということがわかっていればいいです。

バスケットボールを知らなくても、なんだか見ているうちに、勝つのか、負けるのか、とひたすらハラハラしながら応援したくなってくることを楽しめれば、それが、本作品の一番のいい見方といっていいでしょう。

原作では、一試合を通じて、それぞれのキャラクター達が成長していく姿が、濃密に描かれるところですが、映画版は、アニメによって描かれる、様々な角度で見ることができる試合観戦だと思ってください。

そのため、かなり頻繁に入る回想シーンには、どうしたものかと思ってしまうところですが、一種のCMぐらいのつもりでみておいてください。

よくわからなくても、見ているうちにどんどん試合の先が気になってくるところは素晴らしいです。

CGアニメーション

本作品が公開される前に、予告映像が流れて、その、観客がペラペラの書き割りのようであったり、CGの動きをアニメーションっぽく見せているという点で、非難があったりしました。

選手たちのアニメライクなリアリティに反して、観客は立て看板のようになっていて、ぎょっとしたりしますが、我々がみるべきは、選手たちの活躍なので、それほど気になることはありません。

物語として面白かったかは別として、何より、スポーツをアニメーション風のもので表現する、という点においては、抜群の面白さだったといえます。

声優について言及する話もあったりはしますが、どらえもんのジャイアンの声やアニメ「呪術廻戦」の藤堂葵なんかの声をあてている、木村昴が桜木花道の声をやっているので、癖がある分あまり気にならなかったりしました。

アニメの延長線であるとか、原作の忠実なアニメ化と思ってしまうと、イメージと差に違和感を覚えてしまうかもしれませんが、こういう作品だと思えば、スポーツもののアニメーションってこういう風にしてつくっていくこともできるのだ、ということがわかる作品であったりもします。

あと、伝説的な作品ではありますが、20年以上前の作品であるということも念頭に置いてみる必要があります。

桜木花道というキャラクターはとても良いキャラクターですが、現在の作品のキャラクターと比べてしまうと、かなり浮いた存在として見えてしまうところでしょう。

時代の流れによって、主人公になるキャラクターも、桜木花道から、宮城リョータに変更せざるえなかったのかもしれない、という点も含めて、面白いところでした。


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