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動くキャラクター表現の絶妙さ「マイ・エレメント」

公  開:2023年
監  督:ピーター・ソーン
上映時間:101分
ジャンル:ファンタジー/ロマンス


火も水も、表現するのは大変メェ~

火と水、風と土のエレメントを模したキャラクターが生きる街エレメント・シティ。

移民としてやってきた「火」のエレメントの子供が、親の店を継ぐべきかで葛藤しつつ、属性の異なる「水」のエレメントと恋に落ちる

あらすじを聞いただけで、話しの方向性が見えてくる内容です。

多種多様な民族が集まって積み重なっていったアメリカという国のメタファーだというのは、映画をいくつか見た人であれば、考えるまでもない設定でしょう。

そして、そんな王道のようなラブストーリーを、ピクサーが作ったわけですが、その簡単な感想を語ってみたいと思います。

揺れ動くキャラクター

「マイ・エレメント」の一番の見どころは、キャラクターたちの動きです。

火の属性である主人公は、怒りによって色が変わり、まわりを燃やして爆発します。

一方で、水のキャラクターはちょっとしたことで水を飛ばしたりするのですが、その変幻自在なキャラクターの動きは、それだけで面白くみることができます。

色々な属性たちが同じ町で暮らしている為、水によって消えてしまいそうになったり、雲のような風の属性にぶつかって散らしてしまったりと、エレメントたちの日常が面白く描かれています。

まるでゲームの中のような世界で、暮らすキャラクターたちを覗き見る面白さがあります。

ストーリー

物語としては、火のエレメントであるエンバーが、水のエレメントのウェイドと出会って、父親の店をつぶさない為に、協力をしながら、恋に落ちていく内容となっています。

ただ、ウェイドは、明らかに裕福な家庭で育っており、一家は芸術家の家系であり、エンバーとは明かに毛色が違います。

ロミオとジュリエット方式の結ばれない恋のようでもありますが、その困難はそれほどでもありません。

ただ、2人が触れ合うまでが、見ものではあります。

水にぶつかるだけで顔が半分になってしまったりと、彼らは、別の属性と接触すると、簡単に死にかけてしまうあたりが、ハラハラします。

その設定もやがて、薄らいでいくのが残念だったりしますし、親子の問題を取り扱いそうでありつつ、家柄・人種の違う2人が恋に落ちる話しなのかとも思わせるあたり、主題が見えづらかったりはします。

前半は突飛な行動が目立つウェイドも、後半には、恋の為に成長していく青年となっていったりします。

人種差別について

異なるエレメントが一緒にいるのがあまりいいことではない、というのが前提の世界観となっていますので、差別は遠回しに描かれていますし、人種感の憎悪というのも描かれています。

水のエレメントに対して恨みがあるのか

「水めぇ」

と敵愾心むき出しのエンバーの父親。

人種差別的な部分でいえば、同じくディズニー作品「ズートピア」は、人種差別が横行する世の中で、何にでもなれるということを掲げているズートピアで、警察官として頑張ろうとする主人公と、キツネのニックの物語のほうが鮮烈に描かれていたりします。

「マイ・エレメント」は、触れることすらできない2人の恋の行方は、だいたい見えていたりもします。

キャラクターの面白さ

物語そのものは、かつてのアメリカの、移民としてやってきた人たちが、自分の子供たちには良い生活をしてもらいたい、というも描いています。

二世は、英語が当たり前ですが流暢に話すことができたりする点も、ウェイド一家のときに出てきますが、そういう意味では、物語の設定そのものは、やや古めに作られています。

ただ、映像的な面白さがありますので、設定や物語よりも、キャラクターの動きの良さに注目です。

服を脱げば鉄網を通り抜けられますし、炎で鉄を簡単に溶かすこともできます。

「意味あるのかな」

とキャラクター自身も言っているだけに、正直、たしかに謎だったりはします。

属性がキャラクターの形をしていることもあって、ああいう街に発展していくのかも含めて謎ではありますが、異なるエレメントのキャラクターたちが、ワイワイやっている姿はとても見どころがあります。

VRとかであの世界を旅できたりしたら面白いかもしれない、と思わせてくれる「マイ・エレメント」でした。


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