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大阪ミニシアター巡り🚗第3弾【シアターセブン】


こんにちは、映画チア部大阪支部です🎬

今回は、「大阪ミニシアター巡り 第3弾」ということで、十三にある【シアターセブン】という劇場へ(かんな)と(なつめ)の2人でお邪魔してきました!

わたし自身、シアターセブンへ伺うのは初めてで、十三駅もあまり馴染みのある駅ではなかったため、とても緊張しておりました…。

いざ、シアターセブンへ向かってみると、阪急十三駅から徒歩5分ほどのためアクセスも良好!
シアターセブンは、「大阪ミニシアター巡り 第2弾」でお邪魔した劇場【第七藝術劇場】と同じビルで、ひとつ下の5階にございます!

⬇️第七藝術劇場の記事はこちらから


駅周りにもたくさん飲食店があって、映画前や映画終わりに寄り道してみるのもオススメです💡

今回は、そんなシアターセブンの支配人である菅野さんに、劇場についてや支配人というお仕事について、またオールタイムベスト作品、おすすめ作品についても、学生ならではの目線でお伺いいたしました!
とても優しい方で、わたしたちもとても充実した時間を過ごすことができました…!

最後まで是非お楽しみください✨(かんな)

(聞き手 : なつめ、かんな)


●シアターセブンについて

チア部:シアターセブンは元々どのようにしてできた劇場なのか教えてください。

菅野さん:シアターセブンは2011年にできた劇場で、今年で11年目になります。ナナゲイはもっと昔から、何回か名前が変わったり経営母体が変わったりしながらずっとあったんですけど、その姉妹館としてオープンしたのがシアターセブンです。僕は最初の立ち上げの時にいたわけじゃないんですけど、最初はNPO法人が運営していて、今は紆余曲折を経て、ナナゲイの経営会社である「有限会社第七藝術劇場」が運営している映画館なので、社長もスタッフも一緒です。元々関係がなかったわけではないんですけど、今は特に結びつきが強い感じですね。

チア部:シアターセブンでは舞台挨拶やトークに力を入れておられますが、シアターの規模感的と相まって、映画やそれを作った人との距離が近いと感じました。
コロナ禍で人との距離感を気にする場面が多くなったり、移動や対面の機会が制限されたりしたわけですが、それを経て今、シアターセブンが提供する映画や人との交流の場にはどのような思いがあるのかお聞きしたいです。

菅野さん:元々コロナの前から舞台挨拶は多いです。それは今おっしゃったように、キャパが小さいのでお客さんとの距離が近く提供できるということも1つあります。それから、ここで上映する作品はいわゆるインディーズ作品と呼ばれるような作品が多いんですが、そういう作品は宣伝費も少ないしメディアに取り上げられることもあまりない。監督が直接自分で宣伝活動をしてらっしゃる作品は特に、その延長で直接お客さんと話せる環境を元々大事にしているということもあります。

確かに、コロナで劇場を休館したり対面することが制限されたりしました。でも、コロナで良かったことというと語弊がありますが、広くリモート技術が使えるようになったという良い面もありました。
今までだったら、東京からゲストを呼びたくても予算が限られている中で実現が困難なケースがほとんどだったんですけど、東京の監督さんや俳優さんもZoomでつないで舞台挨拶をしてもらえるようになりました。そこの幅はすごく広がったと思います。

最近、またコロナの感染者が増えてきてはいるものの、世間的には少しずつ制限が緩和されている中で、従来の形に少しずつ戻していってる途中です。劇場としては、やっぱりお客さんと直接交流できる舞台挨拶は売りなので、戻していきたいです。毎日のように舞台挨拶をやることもあります。他の劇場でも土日にやることは結構あると思うんですけど、毎日はあまりないですよね。でも土日だと他の劇場さんでのイベントがあったりして、結構かぶっちゃうんですよ。お客さんからも、どっちに行ったらいいかわからんって言われることもあって。もちろん、劇場側から監督や役者さんに無理強いをしているわけではなくて、やりたいと言ってもらえたら、一緒にやりましょう!と。

チア部:お客さんも嬉しいですよね。

菅野さん:もちろん、そう思ってくださる方もいると思います。ただ純粋に映画だけを観たい人もいらっしゃるので、そこが本当に難しいですね。こちらも強要はしたくないなと思ってはいます。ただ、映画館で映画を観る体験の1つとして、監督とか演者さんのトークや舞台挨拶も楽しんでいただけるっていう選択肢があれば良いと思っているので。お客さんにも取捨選択してもらえたら嬉しいです。

チア部:コロナで特に配信など他の選択肢も増えた中で、「映画館での映画体験」についてどうお考えですか?

菅野さん:正直コロナに関係なく、以前からお客さんは少なかったです。ミニシアターという業界自体もそうでしたし、こういう小さい劇場は特にそうです。コロナ禍でそういった状況が浮き彫りになって、ミニシアターエイドで3億円集まったり、関西のミニシアターで出したTシャツが売れたりして、それをきっかけに知ってもらえたということはありました。

映画館だけが提供できる映画体験には、ただ単に映画を観るだけじゃなくて、さっきも話したようなその後のイベントに参加してもらうみたいなことはあると思っています。

それから、ショッピングモールの中にあるシネコンとかだったら、買い物のついでとかご飯食べたあととかに映画を観たりできるんですけど、こういうちょっと離れたところってわざわざそこに行くことが面倒くさかったりすると思います。
だけど、映画を観るだけじゃなくて、その町に行く他の目的もあれば、映画館に行くこと自体が小旅行とか非日常体験になると思います。シアターセブンのある十三だったら、「ねぎ焼やまもと」やみたらし団子の「喜八洲」をはじめ商店街にも沢山のお店がありますし、最近では街中に「淀壁」という巨大な壁面アートも完成しました。映画館だけで完結するんじゃなくて、その街のいろんな側面に触れて欲しいです。

チア部:シアターセブンではホールレンタルをされていたり、映画関連ではないイベントを開催されていたりして、映画に関わらず広く文化的な場を提供しておられる施設なのかなと思いました。
映画館にとどまらず、どういう場所でありたいと思っておられるのかお聞きしたいです。

菅野さん:シアターセブンはもちろんミニシアターではあるんですけど、複合施設の側面が結構強いかなと思います。貸館も、お笑いライブや落語、浪曲など幅広くご利用いただいています。ジャンルを問わず色々やってますよっていうスタンスはオープン当初からそうだと思います。

それには、どこかしら、何かしら引っかかってほしいなという気持ちがあって。そもそも存在も知らなかったという人が初めてここに来てくれて、チラシとか予告編とか見てもらって、実はここは映画館でこういう映画がやってて、上の階にはもっと古い映画館があるんだと思ってもらえるような。そういう、間口を広げておきたいという思いがあります。でも今、映画目的以外のお客さんは、1回来てくれて終わりというのがすごく多いんですよね。

例えば、お笑いを観に来たお客さんが映画のお客さんになるかと言われると、それがとても難しい。そこをつなげていくことが劇場の役割だと思っています。なんか面白そうなことをやっているなと思ってもらえるようにしていきたいです。

チア部:今後の展望を教えてください。

菅野さん:特にインディーズ作品の監督にはシアターセブンをステップアップの場にしてほしいという思いがあります。この劇場である程度集客という結果を出したり、舞台挨拶で満席になったり、そういう成功体験を積んで、例えば東京に映画を持って行くとか次の製作費に回してもらうとか、本当に良きように劇場を使って欲しいと思っているんですね。そうすることで僕らも、新しい若手の監督さんとのつながりができたり、有名になってまた戻ってきてもらったりしたらすごく嬉しいので。

ミニシアター系の映画って、東京ですごいヒットしてSNSでも盛り上がって、いざ大阪に持ってきて蓋を開けてみたらあれ?みたいなことって結構あるように、地方興行ってやっぱり難しいんですよね。そんな中でも映画館で上映したいという監督の作品は応援したいですし、そういう作品を大阪から東京に持って行けるくらいまでいけたらいいなと思います。あとは、どうしてもお客さんが増えないっていう根本的な悩みはつきないです。最近配信が主流になってきていますが、配信と映画館は相反するものではなくて共存できるものだと思っています。だからやっぱり、映画館としての価値をもっとアピールしていかないといけないなと思っています。

●シアターセブン支配人菅野さんについて

シアターセブン支配人の菅野さん

チア部:シアターセブンの支配人のお仕事はどのようなことをするのか教えていただきたいです。

菅野さん:なんでも屋さんじゃないですけど、やっていることが幅広いです。一応映画上映に関しては、番組編成のスタッフがいて、ナナゲイ(第七芸術劇場)と同じ小坂というスタッフが全体の枠組みをつくっています。僕は、その中でもインディーズ作品を担当することが多く、接客、映写、SNSなどの宣伝…、当館のレンタル問い合わせも担当しています。

チア部:他のミニシアターと連絡を取り合うこともあるのでしょうか?作品の上映時期が被らないようにするとか…。

菅野さん:そうですね…。配給会社がついている作品ですと、京阪神でこの時期にやりましょうねという連絡をとることとか…、そのほうが宣伝もしやすいですし。
あと、個人的に映画を観に行ったりとかもします。(笑)

チア部:そうなんですね!皆さん仲がいいのですか?


菅野さん:関西の支配人の方は結構長く仕事をされている方も多いので、そこの関係性はできているのかなと思います。

チア部:なるほど。今の仕事に就くまでの経緯はどのようなものだったのでしょうか?

菅野さん:大学を卒業して、一般企業に就職したんですよ。でも、2年で辞めてシアターセブンに入って、今で6年目ですね。最初は映画とは全然関係のない仕事をしていました。

チア部:ちなみに、私自身が現在大学3回生でそろそろ就職について考え始める時期なのですが、私たちぐらいのときから映画に関する仕事をしたいなという思いはあったのでしょうか?

菅野さん:大学生の時…、そうですね。僕自身、映画を昔からよく観ていたというわけではなかったんです。それこそ、大学生のときに神戸のほうの大学へ行っていたんですけど、元町映画館を知り、また、阪急神戸線なので十三を通ったときにナナゲイを知り、この時期にミニシアターという存在を初めて知りました。行ってみたら、魅力にはまって、通い始めたという感じです。だから、映画が好きというよりは、映画館が好きな、一ファンとして通っていました。

映画を仕事にするってなったとき、勿論そういう選択肢もあったんですけど、そもそも募集しているのが大手の会社しかなくて、そのあたりも応募はしていたんですけど、そこに行っても必ずしも映画や映画館の仕事に携われるのかな、という疑問があって…。そうこう考えているうちに就職浪人するのも嫌だったので、採用をいただいた大阪の企業に就職することになりました。そのときは、とりあえず働こうという気持ちで(笑) 

特に、めちゃくちゃ映画の仕事がしたいというわけではなかったですね。ただ、以前の会社で働いている中で、なかなかやりがいを感じられず…。でも、普通の一般企業で働いているほうが給料はいいわけですよ(笑) いざ働き始めてから、そういう物質的な豊かさよりも精神的な豊かさのほうが合っているなと思って、という感じですね。

チア部:学生時代にミニシアターを知ったとのことですが、どういった部分に魅力を感じましたか?

菅野さん:ミニシアターは、最初の入る一歩ってとても緊張するんですよ。特に、ナナゲイ!エレベーターを上がると、まず鉄の扉があるんですよ。これ開けないといけないのか、って思って(笑)
あまりないじゃないですか、普段鉄の扉を開けることなんて。恐る恐る扉を開けたら、まずロビーに絨毯が敷いてあって、映画に詳しそうなスタッフさんがいて。
僕は元々誰かと一緒に騒ぐことよりも、一人で色んな所に行くことが好きでした。いざ、劇場へ行ってみると、自分と同じような人たちが居たんですよね。映画が始まったら、スマホを切って、暗闇の中に沈んでいく感じがすごく心地よくて…。
本当に、映画のことだけを考えられる場所だと思います。そういう所がやっぱりシネコンとは違うなって思いました。

最近は、あまり大阪ではやっていないのですが、当時はオールナイト上映がナナゲイなんかでも結構やっていて。オールナイト上映はめちゃくちゃ眠くなるときもあるんですけど、合間の休憩時間にロビーやトイレにいる他のお客さんたちに妙な一体感を感じて…。明け方の6時ぐらいに終わって、劇場の外で朝日を浴びて…みたいな。そういう体験を共有しているのって良いなって思って。その空気感がとても心地よかったです。

チア部:ちなみに、今後オールナイト上映をやられる予定はないですか?

菅野さん:シアターセブンでもかつてやっていたんですよ。でも、オールナイト上映って結構スタッフ側が大変で…(笑) もちろん企画としてはとても楽しいんですけど、それで収益を作っていくってなると結構大変なんです。なので、コロナが落ち着いたら、ナナゲイでできればいいなという感じです。
ちなみに、どういうオールナイト企画だったらいいなとかってありますか?

チア部:個人的な要望になっちゃうのですが…、音楽映画3本立てとか。深夜にガンガン音楽を聴きたいです。あと、ファンタジー映画3本立てとかも良いです…。非日常な空間を体験したいです(笑)

菅野さん:音楽映画はナナゲイでも結構やっているので、それも1つアリかもしれない。ファンタジー映画は、どういうのがありますかね~

チア部:この前に、シネ・ヌーヴォでやっていたカレル・ゼマンっていうチェコの映画監督の作品特集がやっていて、それはとてもファンタジックで観ていて楽しめました!なので、機会があったら是非また劇場で観てみたいですね…。

⬇️今年の夏に、シネ・ヌーヴォで上映していたカレル・ゼマン特集


では、続いて…菅野さんが学生時代に影響を受けた映画はありますか?


菅野さん:学生時代かは分からないのですが、僕が1番観ている映画はブルース・ウィリス主演の『ダイ・ハード』ですね。小さい頃から家にDVDがあって、そのときから何故かずっと観ていましたね。ミニシアター系の映画に触れてきたわけではなく、アクション大作な映画が好きでした。

あとは、それこそ大学時代に初めて行った頃って、MOOSIC LABが始まった頃なので、MOOSIC LABで観た作品だとか…、あとはドキュメンタリーだと森達也監督の『FAKE』とか。ドキュメンタリーはあまり慣れ親しんだ感じではなかったのですが、いざ観てみるとめちゃくちゃ面白くて。
影響を受けたというよりは、ミニシアターで初めてその映画を観たという体験として記憶に残っています。

チア部:私たちぐらいの世代におすすめの映画ってありますか?

菅野さん:ジム・ジャームッシュ監督の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』は、日本でも当時大ヒットを記録し、80年代のミニシアターブームを牽引した作品としても知られている有名作です。モノクロの映像にオフビートな作風で特に大きな事件も起こらないのですが、シーンごとに間を黒味で繋ぐ演出も独特で、どこを切り取っても絵になるようなカッコよさがあって、そういう映画って最近は少ない気がします。今の時代に若い人が初めてこの映画を見ても、新鮮な気持ちで見れるのではと思いました。僕もこの映画は何度か見ていますが、やはり初めて見たときの感覚は強烈な体験として今でも残っています。
 
もちろん皆さんそれぞれに好みの下地があると思うので、その世界を広げてくれるものは、映画に限らず沢山あるはずです。
 
チア部 : 菅野さんのオールタイムベスト映画がございましたら、教えていただきたいです。

菅野さん : 山下敦弘監督の『天然コケッコー』が大好きです。田舎の小さな学校に東京から岡田将生さん演じる男子高校生がやってきて、ヒロインの夏帆さんと恋に落ちていく作品なのですが、ふたりの瑞々しさや甘酸っぱい恋模様にキュンキュンしてしまって(笑)。田畑や自然の広がる田舎の風景もとても魅力的で、何気ない日常のあたたかさを感じる作品です。今でも疲れた時や心が荒んだと感じた時は見返して、心を落ち着かせています(笑)

チア部:学生時代から映画を観られてきて、今映画に関する仕事に就かれていて、好きなことを仕事にするっていうのは、楽しさもあり、大変なこともあると思うのですが、そのバランスの取り方はどのような感じなのか気になります。

菅野さん:楽しいことは、勿論毎日大好きな映画に触れているのでその通りです。でも、辛いこともやっぱりあって(笑)

やっぱり、こういう業界なので、人手不足だったり、若い人が集まらなかったり。今は様々な理由でミニシアターが休館に追い込まれたり、この先うちもどうなるのかっていうのは毎日考えています。
あとは、やっぱり僕も映画ファンなので、映画を純粋に映画を楽しみたいのですが、本当に純粋に楽しめているのかなって思うところはあって…。
映画業界に入って初めて知った魅力もあるし、逆に距離を置いたほうが純粋に楽しめるなと思う部分も勿論あります。だけど、やっぱり前の会社の経験があり、それを経てこちらを選択したのでそれについては後悔はしてないです。だから、自分のことよりは、この劇場や、ひいてはミニシアター業界がどうなっていくべきか、日々頭を巡らせています。

チア部:最後に、シアターセブンから宣伝があればお願いします。


菅野さん:12月10日より公開の『俺を早く死刑にしろ!』は、ある死刑囚のもとに、受刑者や死刑囚に教えを説く教誨誌がやってくることから始まる物語。
怒りや悲しみ、苦悩など様々な感情が渦巻く中、徐々に「人の心」を取り戻していく主人公ですが…一筋縄ではいかない展開にグッと引き込まれ、これぞインディーズという魅力の詰まった作品です。

あとは、クリスマスに毎年にデートプランをやっていて、BOX2というシアターを貸し切って、好きなDVDやBDを持ち込んでくださればそれを上映しますっていう企画なんですけど、結構好評で毎年続けています。

12月25日にはサイレント映画をピアノ伴奏とともに楽しむ上映会もあります。普通の映画鑑賞とはまた違った体験を楽しんでもらえると思います。他にも様々な映画やイベントなど行っていますので、是非興味があれば一度足を運んでみて下さいね。

チア部 : ありがとうございました!

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