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「ナインストーリーズ」かとうさおりさんインタビュー!

こんにちは!映画チア部大阪支部です。

今回は、大阪の江坂にアトリエを構えておられる「ナインストーリーズ」のかとうさおりさんへのインタビュー記事をお届けします!

インタビューは実際にアトリエで行いました。
さおりさんが作られた可愛いグッズや好きな本などに囲まれた素敵な空間の中でインタビューをすることができて、とても嬉しかったです!

ありがとうございました!!

(聞き手:なつめ、かんな)


チア部:「ナインストーリーズ」という名前の由来を教えてください。

さおりさん:「ナインストーリーズ」というのは私の活動名なんです。
由来と言われると、ちょっとドリーミーな話になるんですが…。
自分でいろんなことをしようと決めた当時はひとつひとつプロジェクトごとにコンセプトを細かく決めていました。今は時間もないのでぱっと思いついたものを作っているんですが。始めた頃はファッション業界の春夏、秋冬みたいにコレクションのテーマを決めて展示とかもしていました。毎回空想の世界みたいにストーリーを作っていて、「いろんな物語を作っていきたい」という気持ちがありました。
それで「○○ストーリーズ」と数字をつけようと思って1から色々はめていったけど、サリンジャーの『ナインストーリーズ』という有名な作品があるのでどの数字でも違和感があったし、元々サリンジャーも好きなので「ナインストーリーズ」で良いか!と思ってつけました。二桁でも変だし語呂も悪いし、アルファベットにしたときのバランスも良かったし。あと奇数が好きなので絶対奇数にしようと思ってました。
だから、「サリンジャーですよね?」って必ず言われるんですけど、必ずしもそうではなくて、「実はちょっと違うんです」って。面倒くさいときは「ああそうです」って言うんですけど(笑)


チア部:今の活動やお仕事を始めようと思ったきっかけとなる出来事や過去の経験を教えてください。

さおりさん:逆に私すごい素人で、何の経験もないんですよ!
私の周りにはもちろんものづくりをしている人は沢山いるけど、大体みんな芸大とか服飾専門学校出身だったりアパレル会社や雑貨の会社で実際にプロダクトを作っていたりしてたんです。
だから勝手にやってる人ってほぼいなくて。私自身経験値はあまりなくて全部自分で勉強したり人に聞いたりして今こうしてやってます。

チア部:元々ものづくりは趣味だったんですか?

さおりさん:趣味…だったのかな…(笑)
高校生、中学生くらいからかな、「自分の好きなものを表現するべき」という考えがあって、友達と一緒に売る売らないにかかわらず何か常にものづくりをしてました。

チア部:どんなものを作っておられたんですか?

さおりさん:何作ってたんだろう…。高校生の頃は勝手に服とか作ってたかな。友達は勝手にカセットを作って音楽レーベルみたいなのを1人でやってて。割と周りの友達もそんな感じだったので、そういうことをするべきっていうか、するものだと思ってました。何なんでしょうね(笑)
今の活動は、私自身そもそも何もできないので、作りたいと最初は思ってなかったんです。あるとき急にちょっとオンラインストアでも始めようかなと思い立って。当時インテリアが好きだったし今みたいに北欧の雑貨とかがそこまで浸透してなかったので、おしゃれなものをオンラインで売ろうと思いました。でもお金もなかったので仕入れることができなくて、それなら自分で作ろう~と思って、それが始まりでした。まず商品を作るよりも前にホームページを作って、形から入りました。

チア部:ものづくりをするべき!と思ったというのはどういうことなのでしょうか?

さおりさん:ものづくりをすることが普通のことだと思ってました。別にやらなくてもいいし、どこかに発表するためにしているわけでもないけど。もう生活の一部としてやってる感じ。
ファッションも映画も音楽も好きで、知りたいこともたくさんある中で、いったんどこかに出さないと容量がいっぱいになってしまうので、ものづくりをするとすっきりするんです。インプット・アウトプットみたいな感じ。
それから、年齢的に大人だったので販売することもできたということもあります。

チア部:さおりさんが作っておられる可愛いグッズや、そもそもものづくりのアイデアはどのようにして生まれるのですか?

さおりさん:非常に難しいんですが…。
「ナインストーリーズ」の由来の時にも話したように、元々テーマを作ってからものづくりをしていたので、コンセプトにあった写真(物の写真ではなく、例えば空)を検索したり絵画が好きな昔の女優さんから想像したりしてアイデアを生み出していました。
今はもう本当に思いついたまま作ってます。
それから、私は結構色彩にこだわりがあって、色から作ることもあります。街を歩いている時に「この色とこの色の取り合わせいいな~」って思ったらその色からこれで作れそうなものを作ろうみたいな、そういう作り方をしてます。
依頼された時はテーマをもらうことも多いので、そういうときはテーマから作ってます。
それから今は本に関するものを作っていることが多いので、そういう時はとにかく本を読み込んでます。
例えばブルーのギンガムチェック地に蛍光ピンクの文字がプリントしてあるトートバッグは、P・D・ジェイムズの『女には向かない職業』というミステリー小説を売りたいからトートバッグを作ってほしいという依頼を受けて作りました。この小説は新卒の女の子が初めて仕事をすることになった探偵事務所で奮闘しているミステリーなので、新卒の女の子の元気な感じを出してみました!


チア部:学生の頃に観て/読んで影響を受けた映画/本はなんですか?

さおりさん:めっちゃあるね~(笑)
中学生の時にすごい音楽とか映画とかカルチャーにハマって、「こういうものに時間を使いたい」って決めたんですよ。だから高校受験の時に無駄な時間を使いたくないと思って、敢えて大学付きの高校を受験して、映画とか音楽とかそういうものに時間を使えるようにしたんです。
高校生から大学生の間は、今と変わらない生活してましたね。大学も早く単位を取り終えて、3回生くらいからは卒論だけだったし、当時レコード屋さんでバイトしてたんですけどそれ以外はひたすら一日中映画を観たり本を読んだりしてました。本が好きだったし大学では英文科だったんですけど、あんまり授業は聞いてなかったですね(笑) いかに早く学校から出て自分の好きなことをするかっていう感じでした。あの頃真面目な時代だったのでそんなに遊んでないよ(笑)
特に影響を受けたものっていうと…大学の時授業はサボってたけどその時初めてアメリカ文学を系統立ててちゃんと読むようになりましたね。小さい頃から読書は好きだったし、大学の頃からの読書好きが今も続いていて、最近の本に関する活動に影響を与えてるなって思います。

チア部:中学校の時音楽や映画などのカルチャーにハマったのはなぜですか?

さおりさん:当時西宮に住んでいたんですけど、その頃の西宮には外国の方、フランスの方とかが近所に結構住んでいたし幼稚園とかにも結構いたし、クリスチャンの子がいたりもしたので、幼稚園の頃からアメリカンカルチャーに日常的に触れていました。
中学校の時仲良かった女の子がフランスと日本のハーフで、その子がすごいファッションオタクで、全身コムデギャルソンみたいな(笑)
普通の公立中学校だったんですけどアートスクールみたいで、いろんなことをしている子が多かったです。だから私も自然と好きなことをするようになりました。それは友達の影響が大きかったし、そのハーフの子には音楽も教えてもらったり、影響をすごく受けましたね。
中学1年生くらいはB‘zとかも聴いてたんですけど、その頃からはおしゃれな、自分が本当にめちゃくちゃいいなと思える音楽を見つけたいなって思って色々な音楽を聴いてましたね。

チア部:今の学生に観てほしい映画や読んでほしい本を教えてください。

さおりさん:普通の学生さんに接することがあんまりないからなぁ…(笑)
あ、『パロアルト・ストーリー』良いよねぇ…。ソフィア・コッポラとか。
逆に好きな映画とかあります?

チア部:アジア映画とかよく観ます!

さおりさん:アジア映画か…エドワード・ヤンとかすごい好きなんですが!
あとはそうですね、90年代の映画とか、今観たら面白いと思うので是非!!

チア部:小説の中に映画のタイトルが出てきた場合、その映画にも興味を持たれますか?

さおりさん:それはもちろんあります!

チア部:それは例えば何の映画でしょうか?

さおりさん:本の中に出てくる映画か…。
私は映画の中に出てくる本をいつも追っていて、何年か前にそういうzineを作っていて、どれが印象的だったかな…。でも、やっぱり自分が好きな本が出てくると嬉しくなるかな。
結構古典とかも好きだから、すごく古くなっちゃうんだけど、最近の映画でも新しい文学というのが映画の中ではなかなか出てこなくて…。というのも、アメリカの学生さんは学校で物凄く古典を読まされるので、多分それでだと思うのですけど。
若い人向けに言うと、私すごく面白いなと思ったのが、『スパイダーマン:ホームカミング』で、ゼンデイヤという子がイギリスのサマセット・モームという作家さんの「月と六ペンス」という本を、体育館で読んでいるのが面白くて…。この子がこの本を読んでいるということにとても意味があると思うので、そういうのを見つけるのが趣味なんですけど…(笑) 
逆に、本の中に出てくる映画はたくさんあるんだけどすぐには思い出せないなあ…。音楽が出てくると結構チェックとかはしているんですけど、その本に出てきたのと同じ音楽を流すとか…。でも、例えば小説を読んでいて、映画が出てきたらきっとキャラクター設定に意味があって、作者の方がその映画を出してきているのだろうし、その小説にはまったらきっとその映画を遡って観ると思います。



チア部:今年公開された、またはこれから公開される映画で楽しみにしている、注目している映画はありますか?

さおりさん:私、ハリーポッターが大好きで、『ファンタスティック・ビースト』の新作がすごく楽しみ!もう公開された映画だと『フレンチ・ディスパッチ』かな。
あとは、『ハム・オン・ライ』!私、アメリカの10代で、郊外というテーマをすごく追っているのでこれはほんと楽しみにしています。チア部さんがいないと日本で観れてませんから…!
あとは、日本ではいつ公開になるのかはまだ決まっていないのですが、ポール・トーマス・アンダーソンの新作『リコリス・ピザ』を待っています!ハイム(アメリカのポップ・ロックバンド)の子が出ています!ハイムはぜひ若い人は勿論、あらゆる世代の方に聴いてほしいですね。
それで、ウェス・アンダーソンの話に戻りますと、もう彼は次の映画も撮り終えているらしくて、それも楽しみですね。最新の映画情報は、普通に予告編を見てから、次はこんなのやるんだなぁ、となるので少し情報は遅いです(笑)


チア部:さおりさんは映画に詳しい印象があるのですが、そういった映画をどのようにして知っていくのでしょうか?


さおりさん:さっき言っていたみたいに映画館で予告編だとか、雑誌とか、でもSNSが多いかも。Instagramって結構閉じているので、あまり情報が広がらないじゃないですか。でもTwitterってすごく拡散力があるから、映画の配給をしている方やライターさん、海外の映画情報を発信している方もフォローしていると、何かと新しい情報が入ってきます!


チア部:思い出や印象に残るミニシアターでの映画体験などはありますか?

さおりさん:それまでは大きい劇場にしか行ったことがなかったのですが、高校生の頃、強烈に浅野忠信のファンだったときがあって…(笑)
その当時に浅野忠信が主演を務めた映画があって、今はもうないんですけど扇町ミュージアムスクエアという映画館がありまして…。欲しいけど東京にしか売っていないようなちょっとマニアックな映画関係のグッズとかがめちゃくちゃ売っているようなところです。
そこに初めて1人で行って、その場所自体にすごく圧倒されたのがとても思い出に残っています。いつも梅田から歩いて行っていて、もう今はどこにあったのか全然覚えていないんだけどね(笑)
あの場所は、当時皆さんおすすめの場所だったと思います。


チア部:最後に、さおりさんのオールタイム・ベスト(映画と本)を教えてください!

さおりさん:うわー!1番ってことだよねぇ…。
私、映画はわりと決まっていて、レオス・カラックスの『汚れた血』ですね!あれは高校生ぐらいの時からナンバーワンで、いつ観ても面白いし…。ヴィム・ヴェンダースの『パリ、テキサス』とかもすごい好きだったなぁ。
それらを超えることはあまり無いかな、滅多に(笑)

チア部:『汚れた血』で好きなシーンはありますか?

さおりさん:勿論デヴィッド・ボウイで走るシーンですよね!でもね、結構はじまりから、映画の撮り方やセリフとかもすごく衝撃的でした。

本だと、『ライ麦畑でつかまえて』は毎日読んでいる時期があって…。私、家にいるときはずっと本を読んでいるんですよ。本を持ちながら歩いていて、ご飯を作る時も本を立てておいて作りながら読むだとか、トイレとかでもずっと読んでいて…(笑) 
『ライ麦畑でつかまえて』はいつ読んでも、心が落ち着くというか、ストーリーを読むというよりルーティンで読んでいて。最近は読んでいないので、今読んでも感動するかどうかはちょっと分からないですが…(笑) 
海外の文学ってちょっとはじめの方で辛くなって読むのをやめてしまう人って割とたくさんいると思うんですけど、あの本は割とスッと入れるからおすすめかなぁと。



ナインストーリーズ
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(3月に移転準備中)/ LOST GIRLS BOOKS

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